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入浴はマインドフルネスだ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:前田理香(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「それでは、目を閉じて呼吸に意識を向けましょう」
 
私の声に、研修参加者が一斉に目を閉じ、会議室に静寂が訪れる。
誰かが体を動かしたのか、椅子が小さくきしむ。
マスクをしているため、呼吸の音もほとんど聞こえない。
 
続けて静かな口調で声をかける。
「鼻から入ってくる空気が、のどを通り、胸に入っていきます。胸が膨らむ感じや、お腹が膨らむ感じを味わってください」
「息を吐くときは、反対にお腹や胸が凹んでいく感じ、のどから口に抜けていく感じを味わってください」
「それでは、しばらくそのまま、自分のペースで続けてください」
 
伝え終わると、私は物音を立てないように気を付けながら、参加者の様子を見つめる。
 
5分経ったところで、終了を伝え、少し背伸びをしてもらう。
「マインドフルネス瞑想」を体験し、軽い自己催眠状態になった体に刺激を与えるためだ。
 
心理カウンセラー兼研修講師の私は、メンタルヘルスに関する研修の依頼を受けることが多い。その中でも「マインドフルネス瞑想」は、人気のプログラムのひとつだ。
 
道具が何もいらなくて、ただ椅子に座っているだけ。お手軽だ。もともと仏教の座禅(瞑想)をベースにしていることも馴染みやすい。そして、世界的IT企業や各国軍隊が取り入れているというのも、「なんかかよさそう!」というイメージを持たせる。
 
そして「今この瞬間の体に意識を向ける」ことで、不安やストレスを軽減し、集中力を高める……という効果も、人気の理由だ。
 
その上、定期的に実施し続けることで、効果が上がっていくというのだから、良いことづくめだ。
 
ところが、「マインドフルネス瞑想」を日常生活に取り入れるのは、なかなか難しい。
「良いものだ」と分かっていても、忙しい人たちにとって、瞑想する時間を作るのは至難の業だ。そして多くの場合、後回しにしているうちに忘れてしまう。
 
恥ずかしながら、私もその一人だ。
 
研修で教えているくらいなので、ちゃんとトレーニングも受けているし、その効果も人一倍実感している。
それでも、「瞑想」という時間を作ることを、忙しさにかまけて後回しにしてしまう。
 
「どうにか継続できる方法はないかなぁ……」
月に1回、定期的に通っているエステティックサロンで、マッサージを受けながら考えていた。
 
そのサロンは、レリーフィングという手技で全身のコリをほぐしてくれる。
調子の悪い部分はコリが溜まっているので、めちゃくちゃ痛い。逆に、調子のいい部分は、かなり力を入れてグリグリされても、痛みは感じない。「痛い」か「痛くない」かで、自分の体調が分かるのだ。
 
その日も、仕事のことを考えながら、マッサージを受け始めた。うつ伏せになり、足の裏から始まりふくらはぎへ。少し痛みはあるが、イタ気持ちいいくらいでまだ余裕がある。膝裏から腿へ進むと結構痛い。「あぁ、疲れてるんだなぁ」と思いながらも、まだ我慢できるレベルだ。
 
そしてお尻へ。……痛い! とにかく痛い!!
左に比べ、右のお尻(大殿筋)がガッチガチに凝っている。デスクワークが続き、腰痛が出ているのは自覚していたが、お尻もメチャクチャ痛い。
お尻を押されているのに、痛みはお尻だけでなく、首まで突き抜ける。
担当エステティシャンの方も、分かっているのだろう、お尻のコリを集中してほぐしてくる。
 
しばらく痛みに耐えていると、突然フッと楽になった。コリがほぐれ、痛みが消えたのだ。
お尻のコリが消えると、腰の痛みも和らいでいた。
……気がつくと、マッサージを受けながらぐっすりと眠っていた。
 
身支度をしながら、体がほぐれたのと同時に、頭がすっきりとしていることに気付いた。
 
「そっか。マッサージってマインドフルネスなんだ」
 
痛みに意識が向くので、考え事などどこかに消えてしまう。エステティシャンの指や手、肘まで使った感触を体で感じ、いつの間にかその体の感覚に集中しているからだ。
 
マインドフルネスは、私の日常にすでに入っていた。
 
このことに気づいて以来、月に1度、自分の体に意識を向け、感覚に集中する時間が、今まで以上にとても贅沢な時間に感じられるようになった。
 
そして、欲が出てきた。
もっと毎日の生活の中に取り入れる方法はないか?
 
見つけた! 入浴だ。
自分の手で自分の体に触れる時間。
今まで無意識にやっていたことを、少しだけ意識してみた。
 
シャンプーをするときには、髪の毛を洗う手や指の感覚、頭皮の感覚を。
体を洗うときには、ボディタオルを泡立てるときの手の感覚や、ボディタオルでこすっていく体の感覚、流すときのお湯が流れる感覚を意識した。
 
続けていくうちに、お風呂上がりには体だけでなく、心もさっぱりするようになった。
忙しくてもできる「マインドフルネス」、それが入浴だ。
 
みなさんも、毎日の入浴で「マインドフルネス」を取り入れてみてはいかがだろうか?
 
 
 
 
***
 
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2021-03-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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