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国際線に乗るときは2時間前までに空港へ、の意味が身にしみてわかったこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせ

記事:松浦純子(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 

「まさか出国できないかもしれないなんて」

人もまばらな夜の羽田空港国際線出国ロビーで、わたしは膝の後ろがスーッと冷たくなっていくのを感じた。

行き先はかつてカナダ留学していたときのホームステイ先ということもあり、海外ではあるけれど、ちょっと遠い親戚のおうちに遊びにいく感覚でいた。加えて羽田空港から出国ということもあり、「羽田から海外に行かれるなんていい時代になったなあ。国内線とほとんど同じじゃない」と今まで行った海外旅行のどこよりも、気楽に構えていた。

カナダには2011年に遊びに行ったのが最後だった。

その後も、ホームステイ先からは何度も「いつ遊びに来る? 君の部屋はいつでも準備できているよ」と声をかけてもらっていたが、自分の気持ちとタイミングが合わず、気づくと7年が経過していた。

会社の同僚には「いつも次の休みこそはカナダに行くって言うのに、全然行かないんだもん! 次のゴールデンウイークに絶対に行ってね? いいね?」と背中をぐいぐい押してもらって、2018年4月末から10日間、カナダに行くことを決めた。

航空券はネットで予約したが、パスポートのコピーの提出も求められず、昔のような紙の航空券もなく、プリントアウトした紙1枚、こんな簡単でいいのかと拍子抜けするほどだった。

ただ、もう一人の後輩は、「ほんとうに大丈夫ですか? まさか空港に行って飛行機に乗れないなんて事ありませんよね?」と心配してくれていたが、「大丈夫、大丈夫。パスポートとクレジットカードと自分の体さえあれば何とかなるよ!」と笑いながら一蹴した。

夜遅い出発便だったため空港に人はまばらで、内心「2時間前までに空港へって言うけど、羽田空港ならもうちょっと短くてもいいんじゃない?」と思っていた。

航空会社のカウンターで手続きをし、大きなスーツケースをベルトコンベアの上に載せ、手続き完了かと思われたが、後輩が言った「まさか」の事態に陥ることになろうとは夢にも思っていなかった。

「あの、お客さま。イータはお取りになっていますでしょうか?」と航空会社のスタッフがやや緊張を含んだ声で言った。

「え? イータ? それはなんですか?」と聞き返した。

まったく聞き馴染みのない言葉だった。

二人いたスタッフの顔には絶望感がありありと漂っているのが伝わってきた。

置かれているシチュエーションから、事前に取得しておかなければならない何かであり、それを持っていないとカナダには行けないのだろうと察した。

eTA(イータ)とは、ビザを必要としない国の旅行者が、飛行機でカナダへ入国する際に、パスポート情報等を事前に登録し、オンラインで認証を受けることを義務付ける電子渡航認証(Electronic Travel Authorization)のことで、2016年3月に始まった制度だった。

以前は、6ケ月以内の滞在なら日本国のパスポートさえあれば入国できたので安心しきっていたが、この7年の間に大きく制度が変わっており、自分が浦島太郎だったことに気づいた。かつてのホームステイ先へ遊びにいくだけだったので、ガイドブックも買う必要がなかったし、カナダ大使館のHPを確認することなど考えてもみなかった。

自分の詰めの甘さを悔いたが後の祭りだ。

「出国の40分前迄に取得できれば大丈夫なのですが……画面は全て英語となっております。バーコードリーダーでこちらを読み込んだ上、お客様ご自身でお手続きをお願いいたします」と、スーツケースはベルトコンベアからカートに再び戻された。

「まさか出国できないかもしれないなんて」

eTA の申請はオンライン手続きで、多くは申請して数分以内にEメールを受信し、取得できるらしいが、時に関係書類を求められた場合は、取得に数日かかることもあるため、カナダへのフライトを予約する前にeTAを取得することが望ましいと、カナダ政府のHPに記載があった。

がらんとした空港ロビーの片隅で、祈るような気持ちで申請を進めた。

「大丈夫、大丈夫、時間はまだ十分にある」と自分に言い聞かせながらも、年に2、3回受験するTOEICの試験の比にならないくらい、集中して英語を読んだ。

自分の名前とパスポートの番号、手数料の支払いでクレジットカードのナンバーを震える手で入力した。

送信ボタンを押したあと、ドキドキしながら待っていると、メールを受信した。

eTAは承認されました、と書いてある。無事に取得できたようだ。

その場にへなへなと座り込みたい気分だった。

こうして私はなんとか無事に日本を出国したのだった。

今回、私に幸運の女神が微笑んでいたとしたら、出発の約3時間前に羽田空港に着いていたことだっただろう。早く準備ができてしまい、空港でのんびり晩御飯でも食べようと思っていたのだ。もし2時間前到着だったら、航空会社のカウンターでのやりとりの分も含め、相当ギリギリのところだったかもしれない。

久しぶりにカナダに行く人はもちろんのこと、その他の国でも制度が変わっていることがあるので注意が必要だ。

乗客ならびに受託手荷物のチェックイン、保安検査場の通過、出国審査に加え、このようなアクシデントがあった際も、なんとかなるかもしれないギリギリの時間設定が2時間なのだと今回あらためて身にしみた。空港に向かう電車が急に事故で止まってしまう可能性や、高速道路が事故で渋滞する可能性もあるのだから、2時間前に空港に着くのは、決して早すぎる時間設定ではないのだ。

わたしは旅のチェックリストに下記の文言を加えた。

  • 大使館や外務省のHPを必ず確認すること
  • 何があるかわからないので、2時間前と言わず早く出発しておいて損はない

 
 
 
 

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2021-03-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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