メディアグランプリ

「クイズ・ミリオネア」から受けた小さなトラウマ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:村人F(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
「子どものころ、どんな番組を見ていましたか?」
 
世代間のギャップを考えるのに、この質問はトップクラスの効果を発揮すると思う。
30歳の僕の場合は、小学校のときウッチャン・ナンチャン全盛期で、笑う犬シリーズなど、彼らの番組をずっと見ていたように思う。
もう少し前だとダウンタウンのごっつええ感じや、ドリフの大爆笑みたいな答えも出るのかもしれない。
今の子どもが大人になったら、HIKAKINみたいなYouTuberの名前が増えてきてカオスな感じになるんだろう。
 
しかし、この番組もいろいろなコンテンツがあるから、ずっと印象に残る嫌な場面を見ることもある。
大体の人はホラー番組から、そういうのを受け取るんだろう。
だけど僕の場合は、そこで「クイズ・ミリオネア」の名前が上がる。
 
これはみのもんたが司会を務めた、4択クイズを15問解ければ1000万円という番組だ。
「ファイナル・アンサー」と言ったあと、結果が出るまでの尋常じゃないタメの長さは、時代を象徴するシーンに思える。今だったらあの間にググれてしまうから使えない演出だ。
 
さて、このトラウマ要素が生まれるとは思えない番組のどこに、嫌な場面があったのか。
それは、「テレフォン」にまつわる話だ。
 
この番組には回答者に3つのヒントが与えられていた。
4択のうち2つを消してくれる「50:50」、
観客にアンケートを取る「オーディエンス」、
そして、知り合いに電話で聞く「テレフォン」。
 
この「テレフォン」で起こったあるシーンが強烈に印象に残ってしまったのだ。
 
その回答者は多くの借金を抱えていた。
そして、1000万円を取ったら全額返済してやるぞ!
こんな意気込みで参加した人だった。
 
彼は7問目くらいのところで「テレフォン」を使用した。
問題は「地デジ放送が始まるのは何年から?」というもの。
当然、電話の先にいる親しい人たちは自信を持ちながら正解を言っていた。
 
しかし、彼はそれを疑った。
そして、間違った選択肢を選びそのまま退場してしまった。
それを見た父親の「だから借金するんだな」という言葉と共に、このシーンが強烈に残っている。
 
なぜこれが今になっても脳裏に浮かぶのか。
それは回答者のその後を、子どもながらに想像してしまったからだ。
 
クイズ・ミリオネアのテレフォンに呼ぶ人である。
全国に放送される番組だし、ヒントを与えてくれることを考えても、そこにいる人は最も信頼できる人に違いないのだ。
なにかあったとき、本気で頼りたいと思った人たちのハズなのだ。
 
その彼らの出した正解を裏切って、間違ってしまったのだ。
収録後、どんな状況が待っているのか考えただけでもゾッとしてしまう。
そういったこともあって、定期的にあの場面がフラッシュバックすることがある。
 
最近また思い出したのだが、そのときふと考えたことがあった。
「テレフォンに呼びたいと思える人が、どれくらいいるだろうか?」
 
現代はSNSがあるから、大学時代の友達の近況なんかも流れてくるし、広い範囲の付き合いはあると考えている。
その代わり、ガッツリと拳を交わせるような深い繋がりは少なくなっているように思う。
そして、この質問で出てくる人は、後者の中から選ばれるものなのだ。
しかも、彼らが言ったことなら自信を持って選べる。そういった信用ができる人になるのだ。
 
そんな人たちを5人も集められるのか。
不安になることがある。
会社の中に何でも話せるような人もいないし、実家の両親とも月に1回LINEがあるかどうかみたいな状況だ。
ひょっとしたら本気で信頼する方法を忘れてしまったかもしれない。そんなことさえ思ってしまう。
 
こうなると、「テレフォン」に呼べる人を探す。
これは人生の中で重要なテーマではないかと思えてくる。
 
困ったときに相談できるだけでなく、「賞金の一部でちょっとした宴会を開いてくれよ!」なんて軽口も言える関係。
このような人がいるだけでも、幸せなことではないだろうか。
 
それを作るためには、まず自分の心を開く必要がある。
SNSの中でボソボソとつぶやいてしまうようなことを、面と向かって話してみる。
そこからいろんな話をしていくことで、親友と自信を持って言えるようになる。
こういう過程を得て「テレフォン」に呼べる人は生まれるんだと思う。
 
「クイズ・ミリオネア」で受けた小さなトラウマは、人を信頼することを考える上で多くの影響を与えてくれた。
これからも定期的に思い出し、「テレフォン」に呼べる人が僕に何人いるか自問したい。
 
そして、前回よりスムーズに選ぶことができたら、きっと僕は幸せになっている。
 
この問いは、あなたにも効果のあるものだろう。
そこに浮かぶ人こそ、人生で最もいい影響を与えてくれた人に違いないのだから。
 
 
 
 
***

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2021-05-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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