マスクの下で楽してるあなたへ
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか？賞を取れるのか？プロも通うのか？〜
記事名：ごろ子（ライティング・ゼミ超通信コース）
5週間前、鏡の中の自分の顔に一つの答えを見つけた。最近何となく急に老けたような気がして、鏡を見るたび何がそうさせているのか気にしていたのだ。勿論45歳なんだから、自然と経年変化は進んでいる。ただそれにしても、急にぐっと老化が加速したように見える。その答えに気づいたのだ……。これだ、ほうれい線が深くなっている。
ほうれい線とはご存じの通り、口の両端にできる二本のしわであるが、もともとは骨格が作り出した溝であり、正確にはしわとは区別されるらしい……。だが、そんな分類はともかく、ここの溝が深くなるととにかく老けて見える。ではなぜ溝が深くなるのか。ほうれい線のできる場所は頬と口元の境界線であるが、頬や口前回りの筋力が落ち、その上の脂肪や皮膚がたるんでくると、この境界線上にせき止められるよう乗っかり、そして境界線の溝が深くなるのである。つまり、ほうれい線の原因は表情筋の衰えにある。
それにしても私はなぜ急に表情筋が衰えたのか。思い当たるのはただ１つ、マスクである。マスク生活が始まって一年数か月、私が顔の下半身をかなり怠慢な状態にしていたことには自覚がある。マスクがずれない程度の最小限の口の開閉で話す癖ができ、息苦しいので口呼吸をするために、口元はだらしなく開いたままのことが増えた。調べると、このどちらもが表情筋を衰えさせる要因である。そしてもう一つ、ここ最近私は、ほぼ眼だけで表情を作るようになっていた。驚いて見せたい場合も、笑って見せたい場合も、眼だけそのように見えればコミュニケーションが成り立っていたのだ。
一年数か月かけて顔の下半身を怠けさせた結果、気づかぬうちにじわじわとほうれい線を育ててしまったのだ。女性としては一大事であり、かなりのショックである。ただ、短期間で深くなったのなら、今なら短期間で改善できるのではないか、そう思い立ち、ほうれい線改善の記事を読み漁った。そしてその日からすぐ、改善プランを実行することにしたのだ。
リンパマッサージやツボ押し。口にくわえるだけ、頬を転がすだけというらくちん美顔器。ネット上にはありとあらゆる提案があった。「～するだけ」という謡い文句は魅力的だったが、私の選択した改善プランは地道に顔の筋肉を動かす表情筋トレーニングだった。動かさずに弱った筋力は実際に使って動かし、鍛えるしかない。もともと体育会系だった私は、経験的にそう判断したのだ。表情筋トレーニングだけでも数々あるが、口を閉じて顎の内側に沿って舌を回したり、タコのように思い切り口を突き出したり、とにかく口を中心に顔を色々な形に変形させるのがおおよその内容である。
実を言うと前にも小顔効果を狙い、同じようなトレーニングをやった経験があるのだが、続かなかった。というのも、やってる時の顔がすごく変なのである。会社の休憩時間にも、通勤時間にもできず、やる時と場所を選ぶので、ついついやらない日を作ってしまいサボりがちになるのだ。ところが！今回はあれから５週間、きっちり毎日このトレーニングを継続することとなった。そして、その成功のカギは、ほうれい線の元凶となったマスクだった。そう、どこででもできるのだ。歩いていても、通勤電車の中でも、会議中でさえも……。考えてみてほしい、上司の話に真面目に相槌を打っているが、その口はタコだ。実際はかなりインパクトのある図だがマスクをしているから全然ばれない！ということで、この五週間、暇さえあればトレーニングし、今まで痛くなったことのない部位が筋肉痛になり、顔がだるくなったほどである。そして、顔の下半身を油断させないようにトレーニングをしていない時も、きちんと顔全体で表情を作り、常に人に顔全体が見えている状況と同じ状態を努めた。
そして、５週間後、明らかな変化が現れたではないか！ まず頬が引き締まり、笑うと頬骨の下に少しへこみができた。そして、頬全体が持ち上がり口の端にあったたるみが解消されたために、ほうれい線が薄くなったのだ。勿論、完全に無くなったのではないが、今回突然進行した、肌のたるみによる深い溝はみごと解消された。事の発端はマスクだったが、マスクに助けられ、ほうれい線の改善を達成できたのである。
そして、もう一つ。たとえマスクの下だろうが、しっかり口角を上げて笑顔を作ることは、本当に自分の気分を上げるということを実感したのである。楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しい気持ちになるという話を聞いたことがないだろうか。脳は体の状態をセンシングして信号を出すため、笑顔であるだけで「楽しい」と錯覚して幸福感を感じるホルモンを出すのだという。目だけの笑顔は知らず知らずのうちに自分が楽しく過ごすチャンスを逃がしていたかもしれない。そして、顔全体を使ってしっかり笑顔を作ることは、それを受けた相手の気持ちもリラックスさせているように感じる。口は見えなくとも、笑った口から発せられる声はやはり笑った声質になっているのだ。
マスクの下の笑顔は美容に良いことは勿論、自分の気持ちや相手とのコミュニケーションを向上させる。あなたはどうだろうか、見えないマスクの下で顔の下半身を怠けさせていないだろうか。
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