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ボクたちの最終進化形


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記事:久米 靖(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
先日、ニュースで「Windows 11」が発表されたと報じられていた。
それを見た瞬間に思った。
「え? もう? やっとWindows10に慣れてきたのに、まだこのままでいいよ……」
 
ボクたちの日常は常に、ITの進化にさらされている。そう、“さらされている”のだ。
 
ITという言葉が生まれるずっと以前から進化は続いていた。
ビデオデッキが普及し、レンタルビデオを家で簡単に観られるようになった時、「ああ、便利になった」と思った。その頃は、その“一定の便利さ”がずっと続くと思っていた。
 
音楽CDが出てきた時は驚いたが、その波に乗ることに抵抗はなかったし、実際すぐに乗れた。
 
そしてDVDの登場。それより前にレーザーディスクが出ていたので、単にそれがコンパクトになったのだと思い、すんなり受け入れてDVDライフを楽しんだ。
その時思ったのだ。「このDVDは、映像を観るという行為の“最終進化形”だ!」と。
まさかその後、“配信”などという手段が登場するとは夢にも思っていなかった。
 
同じパターンは他にもある。カメラだ。
デジタルカメラに初めて触れた時は、かなりどぎまぎしたものだった。フィルムカメラと違い、大量に撮れる・失敗したら消せる・加工できる、などの機能はまさに革命的だった。
そしてやはり思った。「これは、カメラの“最終進化形”だ!」と。
 
1979年に放映された『機動戦士ガンダム』に、こんなシーンがある。
美人のマチルダ中尉と一緒に記念写真を撮ろうとしたところ、大勢の若い士官が我も我もと集まって来て、撮影係のカイが愚痴る。
「いい加減にしてくれよ! 12枚しかコピー撮れねえんだぞ!」
 
使っているのは即席で写真が出てくるポラロイドカメラのようなものだ。その当時、ポラロイドカメラ内で写真のコピーなどできなかったから、これは1979年から見ればかなり進化したものと言える。
しかし、ガンダムの時代設定は「宇宙世紀0079年」。諸説あるが、西暦に直すと2123年頃になるらしい。
 
つまり、140年先の未来にすらデジタルカメラはないのだ。ついでに言うと、この時はセルフタイマーを使って撮影したのだが、カイ本人はシャッターが切られるのに間に合わず、写真に入りそこねる。リモコンすらないのだ。
 
当時番組を観ていたボクたち受け手も、そして送り手も、それがおかしいなどとは考えていなかった。
まさか“電話機で写真を撮る時代”がすぐに来るなんて、想像だにしていなかった。ボクたち一般人の発想力は、所詮その程度のものなのだ。
 
一般人とは違う発想力を持った人たち、ビル・ゲイツ氏やスティーブ・ジョブズ氏のような天才が世界をどんどん変えていく。
 
1990年代になってインターネットが登場し、ボクたちの生活や仕事に革新をもたらした。
仕事でE-メールを使うようになった時、そのあまりの便利さに恐れさえ抱いた。何しろ文章
の本文だけでなく、写真や複数ページの資料まで添付して送ることができるのだ。
 
そしてまたまた思った。「文章の通信手段の“最終進化形”がこれだ!」と。
しかしその考えは甘く、ツイッター・LINEと、さらに進化したものが次々と登場する。
 
ある時ふと気づいた。
「新しいものに接しても昔ほどわくわくしないし、飛びつこうという気にもならない。なぜだろう……?」
 
LINEが登場したばかりで、まだごく一部の人しかそれを使っていなかった頃、会社の同僚の女性が言った。
「みなさんどうしてLINE使わないんですかね? あんな便利なものないのに……」
 
その後LINEは瞬く間に普及し、仕事でもプライベートでもLINEなしではいられなくなり、使い方を覚えた。
そして同僚の女性が言った通り、“あんな便利なものはない”ことを実感した。おそらく他にもいっぱいあるだろう。“使ってみれば便利なもの”が。
 
自分から積極的に新しいものに触れることを、いつの間にか止めてしまっている。それどころか、「Windows 11」のニュースを聞いた時のように、これ以上の進化を疎ましくさえ思ったことにショックを覚えた。
 
「これは、ボク自身の進化が止まり始めているのではないだろうか?……」
 
数年前、スマホの普及率がまだ20~30%だったころ、母から相談された。
「やっぱりスマホに変えたほうがええんやろか?」
その時の母はもう70代半ば。ボクは無理だと勝手に決めつけてしまった。
「ガラケーのままでええんちゃう? スマホに慣れるの大変やで」
「そうやねえ~」
 
今では、あの時スマホに変えるように勧めなかったことを後悔している。まさかガラケーが使えなくなる日が来るなど、思いもよらなかったのだ。
最近になってようやく母はスマホに変えた。しかし、電話・メール・LINE以外の機能はほとんど使っていない。母自身の進化は止まっているように感じる。
 
母がため息をつく。「年寄りだけが置いてけぼりにされる世の中や……」
本当にそうだと思う。
コロナのワクチン大規模接種の予約は、電話では受け付けていない。ネット予約だけだ。
ニュースでは、お年寄りの“ぼやき”が報道されていた。
「うちら、ネット予約なんかできないから…… 子供にやってもらったんです」
 
ITには「最終進化形」などないのだ。これからもどんどん進化し続けるだろう。
それに対応するボクたちは、どこまで進化できるのだろう?
加齢とともに、記憶力が鈍くなる……。様々な物事に対して、昔のような俊敏な反応ができなくなる……。それは仕方のないことだ。
 
しかし、自分の「最終進化形」ははるか先に設定したい。いや、死ぬまで進化し続けたい。
確実にくる衰えの中で、どうすればそうなれるのだろう?
一つの答えが、LINEを使うようになったいきさつの中にあるような気がする。
 
“それを使わざるを得ない”状況の中で生きるのだ。
 
先日、“自分で映像を編集しなければならない”という事態に直面した。これまで映像編集など全くやったことがない。マニュアル本だけ購入してもできる気がしない。
そこで、マンツーマンで映像編集を教えてくれる講座に申し込んだ。2時間の講義のあと、実際に自分で映像編集に取りかかった。
一口に映像編集といっても簡単ではない。BGMをつけたり、スローモーションにしたり、画面を分割したり……。わずか3分の映像を作るのに、まる一日かかった。
それでも、何とかできたのだ!
 
このように、仕事や生活の中でITのツールを使いこなさなければならない状態を設定し続けるのだ。今の生活の延長線上にあることで、難しいことではないはずだ。どこかで“途切らせる”から、そこで終わってしまうのだと思う。
自分より若い人たちが集うコミュニティに参加する、旅行にパソコンを持って行ってブログで発信し続けるなど、方法はいろいろあると思う。
 
自分が「最終進化形」に到達するのと、「Windows 20」が出るのとどちらが“遅いか”競争
だ。いや、「Windows」以外の何かに進化しても、負けたくないと思う。
 
 
 
 
***
 
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2021-07-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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