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*この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:井口皓介(チーム天狼院)
 
 
小さな頃から、じっとすることが苦手だった。
一つの作業に集中していても、どこかのタイミングで集中力が切れてしまう。そのタイミングが僕は、人よりも早く訪れてしまうらしい。
 
「人よりもいろんなところに目を向けれるじゃん? それもそれでいいじゃん!」
そうポジティブに捉えてくれる人もいたが、僕にはできなかった。
この体質がいかに不便なものか、ということに気づいてしまったのだから。
 
僕は現在、ごく平凡な大学生として生活している。
たった20年くらいの人生だけど、それでも不便なことはたくさんあった。
 
 
例えば、大学受験。
受験生の大半は、それまでの自分が生きてきた中で最も多くの時間を勉強に捧げる。
当時の僕はE判定、つまり、合格する可能性は限りなく低いと模擬試験で判定された大学を志望校にしていたため、周りの受験生よりもさらに勉強しなければならなかった。
しかし、長時間同じ場所に座っていなければならない受験勉強は、同じ姿勢や場所を維持することが得意ではない僕にとって、苦行だった。
 
「勉強しなければ」という義務感と「動きたい」という欲求を両立できる方法はないのか……。
そこで思いついた方法が、勉強場所をこまめに変えることだった。
学校での授業が終わると1時間ほど学校の自習室で勉強する。この後、自転車で10分ほどの図書館の自習室に移動し、勉強を再開する。夕方になって塾で授業を受け、そのまま塾の自習室で勉強し、23時頃に帰宅する。高校3年生の後半はこのルーティーンがほぼ毎日続いた。
 
この方法を友人に伝えると、必ず言われる言葉がある。
 
「それ、効率悪くない? 移動している時間もその場にいたら勉強できるじゃん」
確かにその通りだ。その通りなのだが……。
それでも、場所を変えながら勉強する方が自分には合っているのだから仕方がない。
「自分の欠点は克服しきれなくても、受け入れて、次につなげればいい」
受験勉強で学んだものは、知識だけでなく決心だったのだ。
 
 
なんとか大学に合格し、実家を出て、一人暮らしをすることになった。
見知らぬ土地での新生活。もともと出かけることが好きだったこともあり、行動範囲はますます広がった。
と、同時に大学の課題などで、文章を書くことが劇的に増えた。
しかし、ここでもあの体質が邪魔となる。
 
場所を変えながら、文章を書く時間を作り出すには……?
僕は試しに、電車の中で課題をすることにした。
当時のアルバイト先に電車で通っていたこともあり、電車での移動時間が長かったからだ。
これが想像以上にはかどった。
今まで「同じ場所や姿勢を保つこと」が苦手だと思っていたが、それは違った。
正確には「同じ場所から同じ物事を見続けること」が苦手だったのだ。
電車に乗っていると、自分自身は同じ座席に座って文章を書いていても外の景色が変わるから、長時間集中できることがわかったのだ。
 
このことに気づいて約2年。
僕の勉強部屋は電車の中となった。
集中したい日や課題が溜まっている日には、あえて帰り道に遠回りになる経路を選び、より長い時間、電車の中で文章を書くようにしてきた。
遠回りをすることで、今まで行ったことのない街に行くことができる。見たことのない景色を見ることができる。知らない人とめぐりあうことができる。
都会を走る電車はいつも座席が埋まるほど混み合っていて、高層ビルが立ち並び、乗客もどこか殺伐としているような気がする。
しかし、電車が郊外に向かっていくにつれて乗客の数は減り、車窓から見える風景も乗客の雰囲気ものどかになっていく。
そんな変化を味わいながら、自分の世界に浸ることができるのだ。
 
 
 
「新しい働き方」や「働き方改革」という言葉を頻繁に耳にするようになった。
リモートワークなどが普及した現在では、働く場所にとらわれない柔軟な働き方ができるようになってきた。
学生も同じで、オンライン授業の導入によって、ネット環境があればどこからでも授業を受けることができるようになった。
 
だからこそ思う。
「勉強=自習室で集中してやらないといけないもの」なんて嘘だと。
「仕事=オフィスでやらなければならないもの」ではなくなったように。
一人ひとりが好きな時間に好きな環境でやればいい。
部屋にこもって集中したい人も電車に乗って作業する人、どちらもいていいではないか。
短期間で集中したい人もいるだろうし、長い期間をかけてコツコツと物事に取り組みたい人もいるだろう。
どちらが優れているとか、劣っているとかではないと思う。
その人に合った方法を見つけて、実践できているなら、それでいいじゃないか。
 
 
これが世に言う「多様性」ってやつなのかな……。
そんなことを考えながら、この文章を電車で書いている。
 
 
 
 
***

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2021-07-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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