メディアグランプリ

読書感想文の邪道?応用?テクニック


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:宮崎亜子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
今年も夏休みの季節がやってきた。
社会人になった今となっては、1か月もの休みなんて遥か昔のことだが、夏休みといえば宿題、宿題と言えば、計算ドリルや自由研究、そして読書感想文を思い出す。
 
多くの子どもたちと同じように(と信じたいが)、宿題をスケジュール通りに進めることが苦手で、夏休みが終わる1週間前から慌てて追い込むタイプだった。しかし、本を読むことも作文も好きだった私は、読書感想文だけは楽しんで取り組んでいた。何の本を読もうか選ぶのも楽しかったし、どんな風に書こうかと頭をひねるのも、創作意欲が湧いてくる時間だった。
 
しかし、周りの人たちを観察すると「読書感想文は苦手だった」という人が多い。どう書けばいいのか分からない、「面白かった」以外の感想が浮かばないし書けない、そもそも本を読むのが嫌い、というのが大半の理由だ。
読書が嫌いなのは仕方ないとして、感想文の書き方については、確かにきちんと習ったことはない気がする。
一般的には、
①あらすじ
②心に残ったポイント
③なぜ心に残ったか
④本を通じて、自分の考えがどう変わったか
といった構成で書くことが多いだろう。
これはこれで良いと思うが、いかにもなザ・テンプレだ。読書感想文に謎の熱意を持っていた私は、もっと自分なりの構成で、面白く、クリエイティブに書きたかった。本を読んでいるうちに、自分も作家になった気分だったのだろう。
 
今回は、読書感想文の上級者にも、書き方に悩んでいる初心者にも使える(かもしれない)、私が実際に書いた読書感想文のテクニックを紹介したい。
 
テクニック1:数年前に書いた本について再度書く。
予め断っておくが、読書時間を短縮しようというズルではない。読書感想文の題材に選ぶ本の基準として、「初見であること」というルールはおそらく無いはずだ。
同じ本であっても、読む時の年齢や環境によって捉え方も変わるだろう。また、成長に伴い文章力が向上すれば、以前とは違う書き方もできるだろう。そのような自分自身の変化を、感想文にしたためるのだ。
 
私は高校生の時に「アンネの日記」の感想文を書いた。言わずと知れた、第二次世界大戦中にユダヤ人迫害を避けて隠れ家生活を送ったアンネ・フランクという少女の日記である。この本については、中学生時代にも「自分と同い年位の女の子なのにかわいそう」「差別はよくない」といった、ありきたりな感想文を書いた。
しかし、本当に私が興味を持ったのは、思春期の少女ならではの感性と好奇心で綴られた、性や恋愛に関する描写だった。中学生の自分には、読書感想文にそういった要素を書くことに照れと抵抗があり、無難な感想に留めてしまった。それが高校生ともなれば恥じらいも薄れ、感想文であると割り切れば潔く堂々と書くことができた。
性について書くことができなかった中学生の自分と、書けるようになった高校生の自分、そして13歳にして赤裸々に書いていたアンネ・フランクを重ね合わせることで、感想文は自分自身の成長物語にもなった。タイトルは「私とアンネ・フランク」だったと記憶している。
 
テクニック2:二次創作に振り切る。
同じく高校生の頃。読書感想文として与えられた課題は「源氏物語に登場する女性を1人選び、その人物について書け」だった。平安時代のプレイボーイ、光源氏と彼にまつわる数多の女性たち。
私が選んだのは「空蝉(うつせみ)」だった。光源氏との一夜の関係を持ったものの、身分違いの恋だと自身を戒め、源氏の元から姿を消す。源氏は、拒否されたことによって却って空蝉への想いが強くなる……という切ないラブストーリー。
空蝉の芯の強さ、凛とした美しさ、そして男に後を引かせるテクニック? と思わせるようなしたたかさをどうしても書きたいと思った。空蝉にのめり込んだ私は、空蝉になりきって、源氏にラブレターを書くことにした。そして、それを読書感想文として提出した。タイトルは「空蝉の恋文」。もはや感想文ではなく、完全に二次創作である。奇抜さが功を成したのか、国語の先生から「小説のようで面白かったです」と高評価を頂いた。
 
テクニック3:「ifもしも」の世界線を想像する。
基本的に読書感想文は、読んだ本の内容を「正」として、感想を書く。しかし、それではみんな同じような感想になりがちだ。あえて、この結末が違っていたらどうなったか、自分が考える結末になるにはどうすればよかったか、を考えることで、物語に独自の解釈を入れることができる。
例えば、夏目漱石の「こころ」。同じ下宿先に住む「先生(=私)」と友人の「K」、下宿先の「お嬢さん」を巡る日常生活の中で三角関係になり、最終的に「K」は自殺をしてしまう。
Kの自殺の理由は明確に語られていないため、国語の授業としては、「なぜKは自殺したのか、あなたの意見を述べなさい」と暗黙の課題設定をされているようだった。しかしそれでは面白くない。
私は「Kが自殺しなかった『こころ』の世界」を想像して書いた。恋するお嬢さんを親友に奪われ、死にたくなるほど辛いが耐えた、という設定にする。自殺を踏みとどまった彼の気持ちを想像して書く。物語の結末の逆を想像することで、本来の結末とのギャップは何だったのか、が浮き彫りになる。また、Kが生きていることで先生(私)はその後どのような人生を歩むのか、を想像する。その世界線でも、本来の物語の通りにKが自殺した世界の先生(私)も、きっとどちらも苦しんでいる。その苦しみの違いは何か。どうすれば苦しまない人生になったのか。架空の分岐をいくつも検証することで、物語の神髄が見えてくることもある。しかし妄想しすぎて戻ってこられないこともあるので注意が必要だ。
 
これらのテクニックは一般的な読書感想文としてはNGかもしれない。先生に注意された場合の責任は負いかねます。
しかし、どう書けばよいのか分からない、普通に書くのはつまらないと思っている方にとって、ほんの少しでもヒントになれば幸いである。
 
私も、久しぶりに読書感想文を書いてみたくなってきた。
この夏、自分で自分に「夏休みの宿題」を課してみようか。
 
 
 
 
***
 
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2021-07-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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