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物理的距離と心理的距離は比例するのか?


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:岡田ゆかこ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「遠くの親戚より近くの他人」ということわざを知っているだろうか。
辞書で調べると“いざという時に頼りになるのは、遠くで暮らす親類ではなくて
近くに住んでいる他人のほうだ“と書いてある。
 
つまり、物理的に距離が近いほうが
心理的距離も近くなるということだ。
 
果たして、そうなのだろうか。
物理的に距離が遠ければ、心理的にも距離ができてしまうのだろうか。
 
私は、そうは思えない。
私と祖母の関係は、このことわざ通りではなかったと思っている。
 
祖母は私が小さい頃から地元で獲れたじゃがいも、かぼちゃ、メロン、スイカなどを
段ボールいっぱいに送ってくれた。
 
祖母は北海道に住んでいて、私の家族は転勤族だった。
父の仕事の関係で2~3年毎の転勤があることと、
北海道までの飛行機代が高いという理由で祖母と会う機会は少なかった。
(祖父は私の物心つく頃には病気で亡くなったのでほとんど覚えていない)
 
他の孫は近くに住んでいて、私だけは遠方だった。
でも、祖母からの電話や送られてくる野菜や果物のおかげで、
遠くにいても存在は近くに感じていた。
 
小学生時代は、祖母に会ったのは2~3回だ。
2~3回と言っても、会うときは泊りがけで何日も一緒に過ごすので1回が長い。
祖母が自宅に泊まりに来たこともあったし、私が夏休みの間に一週間ほど祖母の家に
泊まりに行ったこともあった。
 
ところが、中学高校になると祖母を会う機会はなくなった。
私が受験勉強など自分の事で忙しくなってしまったし、
祖母も歳をとり飛行機で移動する体力がなくなってきたからだ。
それでも、祖母とは電話で話していたし、相変わらず野菜や果物は送ってくれた。
 
数年が経ち、私が大学生になったとき祖母は脳梗塞で倒れて入院した。
体調を持ち直し退院はできたが、私の母を含めた親族の話し合いにより、
祖母は老人ホームで暮らすことになった。
大学時代は時間があったので夏休みに飛行機で祖母に会いに行った。
 
社会人になってからは、祖母のことを気にかけてはいたが、
仕事が忙しくて会うことは出来なくなっていた。
 
社会人3年目になり、別の職種を仕事にしてみたいと思い、
私は会社を退職してから転職活動をした。そして、内定が決まった。
新しい職場で働き始めるまでの間、一カ月は時間があったので
一人で国内旅行に行こうかと考えていた。
 
でも、そこで祖母の顔を思い出した。
祖母の様子は母から聞いていた。もう寝たきりで動けないらしい。
転職先の会社で働き始めて忙しくなったら、またしばらく北海道には行けないかもしれない。
もしそうなら、会いに行く最後のチャンスかもしれない。
 
そう思い、北海道で一カ月マンスリーマンションを借りて住むことにした。
マンションから毎日祖母がいる老人ホームに通った。
久しぶりに会う祖母は、以前とは違って笑顔もなく、やせ細っていた。
残念なことに既に祖母には私が孫であるという記憶がなくなっていた。
 
主に老人ホームを訪問した時に私がしたことは、
ただ祖母と一緒にいること、そしてお昼ご飯の食事の補助だった。
祖母は寝たきりでほとんど話もしないし、
食事の補助でやり方が気に入らない時は私に唾を吐くこともあった。
 
私が誰なのか分からないことはとてもショックだったし、
祖母が本来なら絶対しない、私に唾を吐くこともとてもショックだったけれど、
それでも構わなかった。
 
本人が意図してやっているのではなく、脳梗塞の後遺症だろうと思ったからだ。
 
そして1カ月が過ぎ、私は実家に戻り、新しい会社で働き始めた。
 
それから2年が過ぎたある夏の日、祖母が亡くなったと連絡があった。
私は涙を流しながら、あの時に短期間でも祖母のそばにいて良かったと思った。
私が思っていた通り、あの時が最後になったのだ。
 
祖母のお葬式で、私はむせび泣いた。
自分が思った以上に祖母が亡くなったことはショックだった。
祖母が亡くなってからも、精神的に立ち直るのに1年はかかった。
 
幼少期から祖母が亡くなるまで、
お互いが住んでいる場所の距離はずっと遠くて会うことは少なかった。
私の息子のようにGW、お盆、年末など大型連休ごとに
祖父母の家に遊びに行くことはしてこなかった。
 
会う機会が少なかったのに、
なぜ私は北海道に行き1カ月マンスリーマンションを
借りてまで祖母のそばにいたい気持ちになったか。
なぜ立ち直るのにあんなに時間がかかったのか。
 
それは、遠く離れていても祖母は私にずっと関心を持ってくれている
と私が感じていたからだ。
 
会えばいつもニコニコしていた祖母。
私に「めんこいねぇ(北海道弁で可愛いという意味)」とたくさん言ってくれた祖母。
女の子と言えば“赤”という理由で赤いポシェットや洋服をくれた祖母。
 
祖母との思い出はたくさんの愛情がつまっている。
今度は私が祖母に「今までありがとう」という気持ちで恩返しがしたかった。
北海道までは遠かったが、私の気持ちは祖母のそばにあったのだ。
 
物理的距離と心理的距離は必ずしも比例するとは限らない。
物理的距離があっても、心理的距離は近いこともあるのだ。
 
祖母とは会おうと思っても遠くてなかなか会えない環境だったが、
コロナが流行する今の時代、同じように相手が遠方で
「会いたくても会えない」状況に直面している方も多いのではないだろうか。
 
もし、そんな状況に不安な方がいたらこう言いたい。
お互いに想い合っていれば、物理的距離があっても心はつながっているよ、と。
 
 
 
 
***
 
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