子育て世代は核家族に向いてない!
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記事:吉田けい(ライティング・ゼミ超通信コース)
子育て世代は核家族化するべきではない。
親の一人が働き、もう一人が専業で家事育児をするのがかつて大多数の核家族の在り方だった。当時は家事育児を担当するのはほとんど女性、男性は働きに外に出るという完全なる分業制だ。女性の社会進出や家庭を重要視する風潮から、二人とも仕事、家事育児も二人で分担という形が現代では多いのではないか。まだまだ旧時代の価値観や先入観も根強く、男性が育休を取る取らないなど、社会の仕組みが変わらなければいけない部分もある。当の夫と妻が自分が育った旧時代の記憶が根強く、そのせいで相手と衝突したり自分自身を追い詰めてしまったりしている。核家族が核家族であろうとするだけで、たくさんの気苦労と葛藤と試行錯誤と創意工夫が要求されてしまうのだ。
では、親世代と同居すればいいのだろうか?
これも全くもってオススメできない。親世代とはすなわち旧時代の価値観ど真ん中で生きてきたのだから、新しい価値観を作ろうとしている現役世代とウマが合わなくて当然なのだ。親世代と同居して上手く行っているご家庭は、どちらの世代も先進的で思いやりのある幸運なケースなのだろう。そうでもない限り、ただでさえ日々旧時代の価値観と戦っているのだから、わざわざ戦いのタネを増やすことはないのだ。
そう、親たちは皆戦っている。社会と戦い、時に子供やパートナーとも戦い、毎日必死に生きている。とても家族だけでは抱えきれないほどの困難があちこちから放り込まれて、必死に打ち返し、切り刻み、ゴミ袋に入れて処理しているのだ。稼いだお金を便利家電あたりにつぎ込んで、自分がもう一人いたらなあなどと妄想して、日々を必死に戦っているのだ。そんな必死に戦っている子育て世代は、断じて核家族でいるべきではない。かといって親世代と同居すればいいわけでもない。
私たち子育て世代に必要なのは、戦友なのだ。
保育園までの送迎で子供が大泣きしてしまった時の苦労を、我が事のように共感してくれるような。時短で働き、子供の発熱で早退しなければならないもどかしさを労い合えるような。急な会議でどうしても早く帰れずパートナーに怒られてしまった時のやるせなさを、酒でも飲みながら発散し合えるような。子育て世代は、同じ子育て世代とこそ同居するべきなのだ。
前から薄々そんなことを考えていたが、友人家族と合同で旅行に行った時に、子育て世代同居の実現可能性を見出した。親は二組、子供は六歳、四歳と0歳が二人。駅に集合して電車で移動、海辺のホテルに滞在して海水浴、そんなファミリー向けののんびりとした旅だった。海水浴の準備一つとっても、0歳児を見る母親たち、テントを組み立てる父親たち、待ちきれずに走り回る上の子たちと、うまいこと分担することができる。ひと家族なら父親と母親はプロジェクト遂行のために互いに緊張感をもって連携することだろう。それはそれで尊いのだが、なかなか気が休まらない。二家族で行けば、父親たちはテントを組み立てながら、母親たちは子供をあやしながら雑談できるし、トイレなどのちょっとした用事もお互いに助け合って気軽に行くことができる。ほんの少しのことなのだが、手が多くて気軽に行動できるというだけで、旅の荷物まで軽くなったような気持ちになれるのだ。
子供にとっても、同世代の遊び相手がいると、永久機関のようにずっと遊んでいることができる。時に大人と遊びたくなっても、大人四人が順番に子供係をすれば、遊び通しで疲弊することもないし、テント設営や昼食調達が滞ることもない。同世代なので親同士の話も弾む。参加した全員が楽しくて、幸せで、のびのびできた最高に素晴らしい旅行だったのだ。そのせいで、帰り道は大人も子供も帰りたくないの連呼となった。
このまま、子育て同世代と一緒に暮らしていたら、どんなにか楽しいことだろう。
食事、学校や保育園の支度、自分の支度、家事掃除。人数が多いということは、分担できる人数が多いということだ。主担当を決めるもよし、掃除当番のようにローテーションするのもよし。タスクの総量こそ増えてはいるが、一人当たりが受け持つタスクの種類が減るだけで随分気が楽になるだろう。洗濯係は洗濯を頑張れば良くて、食事係は食事、送迎係は送迎など、自分のやるべきことに集中さえすれば家庭が回っていくのだ。なんと素晴らしいことだろうか。
「…………一緒に住めたらなあ」
もちろんいいことばかりではないだろう。金銭面では厳密なルールがないと後々いざこざになってしまうかもしれない。早く帰れる人にお迎えの負担が集中してしまうかもしれない。それでも、夫と妻、同じ立場で同じ暮らしをしている人がそれぞれもう一人いれば、自分の今の状況の苦しさを共有して解決していくのもよりやりやすくなるのではないかと思うのだ。
旧時代よりもはるか昔、江戸時代の頃には長屋で人々は助け合って暮らしていた。それは子育ての大変さを互いに分かち合うという意味合いもあったのかもしれないのではないか。
子育て世代の同居、いいと思うんだけどなあ。
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