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先が見えないこの時代に安定を求めた先にあった「安定」


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記事:肩書のないオッちゃん(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
正直、「安定」って言葉も選択した理由の一つ
だったことは否定できない。
3回目の転職。
40歳の節目で選んだ会社。
前職が定年まで働くってことを
描くのが難しい会社だった。
退職理由に関係なく
「卒業」という言葉で
会社から出るのを
お祝いするような会社だった。
 
30代前半で
「やったらやった分だけ評価される会社」
といった意気込みで入社した。
酸いも甘いも経験させてもらった。
 
ただ、傍から見れば
その8年弱の経験は中退と言っても
いいくらいのキャリアだっただろう。
最後は4年10か月の単身赴任の果てに
「卒業」した自分にとっては、
次のキャリアは
定年まで絵が描きたいと
思っていたし、そんな安定感を
どこかで求めていたんだと思う。
 
例えるならば、
ルックスのいいイケイケでツンデレの
パートナーに振り回され、疲れ果て、
今度のパートナーには
優しさと
一緒にいて安心できる居心地の良さを
最優先して探す、みたいな。
 
海外開拓が弱いという背景で、
1社目の10年間の海外営業経験を
買われて内定。
2社目は当時ドメスティックな会社
だったこともあり、
海外ビジネスという点では、
そこで過ごした8年弱は
ブランクだった。
それでも前任者の海外担当が
辞めてしまったことで
補充が急務だったらしい。
 
国内大手化粧品S社との
安定的な取引を背景に
「ゆっくりと海外を伸ばしていけばいいよ」
と言われ余裕も感じた。
 
東証一部上場企業の傘下。
規模のわりに年金制度や退職金制度も
充実しているように見えた。
 
ライフワークとして、
コーチングやら就活支援などにも
力を入れたかったため、
残業が少ないのも魅力だった。
 
よし、ワークライフバランスが
とれた安定が手に入るぞ!
 
居心地のいい優しいパートナーに
巡り会ったぞ!
 
そう思った。
 
だが、
 
人生には上り坂、下り坂、
そして「まさか」があると言うが、
「まさか」は起きた。
 
それも入社した当月。
 
新年のあいさつ周りだったはずの
営業部長が
青ざめた顔で戻ってきた。
そして、役員に深刻そうに報告した後、
営業部員を集めた。
 
「S社との取引がなくなることになった」
 
利益の柱の一つを占めていた
大黒柱の取引だった。
 
(おいおい、話が違うじゃん)
 
今度のパートナーは
優しくて懐が広いと思っていたら
気づかないところで
借金こさえてたのにビックリ、みたいな。
 
そして、それを補うためといって
降ってきたのが
【海外市場開拓・販売比率のアップ】
だった。
 
国内75%、海外25%を1:1に
するというものだった。
 
ゆっくりと開拓すればいいなんて言葉は
どっかに吹っ飛んだ。急務になった。
 
そこからはその戦略を親会社に見せるために
風呂敷を広げた実現性が薄いとしか思えない
辻褄だけ合わせたデカい数字が降ってきた。
 
とたんにプレッシャーのかかる
ポジションとなった。
会社も安定どころか、
危機を孕んだ状況に陥った。
 
パートナーに借金があるばかりか、
その保証人にされ、
なんとかお前が引っ張って
資金を工面して支払いしろって迫られる、みたいな。
 
自らまっさらな状態で
市場開拓なんてした経験はない。
 
商材は「抗菌材」と呼ばれる化学品。
品質にクセがあって、価格も高く、
これまで経験してきた中で
一番売りにくい厄介なシロモノ。
 
化学式なんてさっぱりピーマンだ。
 
冷蔵庫にあるありあわせの残り物で
料理するように過去キャリアでの
材料を駆使して世界中を営業して
駆け回った。
 
気づけば3年で地球を11周するマイルが
貯まるほどだった。
 
それでも恵まれていたこともあった。
当時の会社もコレといった
目玉戦略もない中だったこともあり、
私が攻略したいと思ったマーケットに、
費用を惜しまず行かせてくれたことだ。
 
ただ、数字になる前に、外部環境の
変化がどんどん起きたし、問題はどんどん出てきた。
 
欧州で始まった化学品の規制厳格化。
慕っていた社長と幹部の交代。
社内での紙面に書けない重大インシデント。
打率の低い未経験の開拓。
 
ぜーんぜん安定しない。優しいパートナーなんていない(笑)
 
それでもがむしゃらに向き合うしかなかった。
 
ただ、
切迫して危機感から始まった
このキャリアだが
自分がコレと思って進めてきたことが
実を結び始めることに手応えがあった。
そして、
やりがいも感じられるようになった。
 
部署を超えて技術的なフォローも得られ
経営層とも腹を割って話せるようになり
自らのペースで進められるようになっていった。
 
気づけば業界で海外情勢を一番知る者として
競合からも主要顧客からも情報が集まるように
なった。
 
事務的ではなく、志を共にビジネスを展開できる
商社や海外顧客も複数できた。
 
数字は楽観できる状況ではなかったが
あと一押しで未来が拓けると思いながら
自分の足で進んでいる実感が出てきた。
 
8年経過した現在
 
「まさか」には「まさか」がやってきた。
 
それがCovid19だ。
 
火が消えるかもしれないと言われていた業界は
コロナ禍で、稀有にも追い風に。抗菌・抗ウィルスは
スポットライトを浴びるようになった。
 
私が担っていた海外ビジネスも好影響を受けた。
加えて次の柱として育てていた事業も
大きな手ごたえを得るフェーズに来た。
 
そして、ライフワークも副業として認められて
コーチングやワークショップも堂々とできている。
 
人生ってわからないもんだ。
 
風前の灯だったのに、
充実したキャリアは歩めている。
 
「安定」ってなんだろうって思う。
 
結局のところ、自分の外に安定を求めても
自分の及ばないところでインパクトを受けて
変化してしまう。自分の外側に安定を求めることには
限界があるのだろうと思う。
 
それよりも、どんな環境においても
自分事として前向きに取り組んでいける
レジリエンスと呼ばれる柔軟な適応能力こそが
「安定」なのではないかと思う。
 
さまざまな「まさか」が繰り返す人生。
 
それを外部環境のせいにせず、自分に向き合って
進んでいくことで、環境に適応できる柔軟性が身に付き
何事にも動じない「安定」が手に入るんだと思う。
 
「安定」って、自分事なんだ。
そう思う。
 
その「安定」は安定していますか?
 
 
 
 
***
 
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2021-08-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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