メディアグランプリ

母親たちの情報網


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記事:ロケットえんぴつ(スピード・ライティング特講)
 
 
少女漫画を読むと、学生の時にこんな恋愛してみたかったなぁ。もっとたくさん恋愛しとけばよかったなぁと後悔する。
じゃぁ仮に、「過去にタイムスリップできますよ。学生生活に戻って恋愛をやり直しますか?」と言われても、私はやり直さないだろう。
 
やり直せない理由があるのだ。
 
私は高校生まで小さな島で育った。
学生時代は、漫画やゲームが大好きで、学校帰りは道端に座りこんで、友達と最新の少年ジャンプを読んで帰るような、恋愛とは程遠い生活をしていた。
好きな人はいたが、だからといって付き合いたいとは思わず、授業中に話をしたり、隣の席になったりするだけで満足だった。
私が恋愛に対して、後れをとっていると、周りの友達の間で少しずつカップルが誕生していき、休み時間にはみんなの恋愛話に花が咲く。
「〇〇ちゃんと、〇〇くん、つきあいはじめたらしいよ」
「〇〇ちゃんって、〇〇先輩に告白したんだって」
みんなの会話に入っているだけで、誰と誰が付き合っている、誰が誰を好きという情報が、私の中に蓄積されていった。
恋愛に疎かった私は、みんなその情報をどこから仕入れてきたんだろうと疑問に思っていた。
 
しかし、お付き合い情報は意外なところからも入ってくる。
「〇〇ちゃんって、彼氏ができたやろ?」
ニヤニヤしながら、話題を振ってくるのは、私の母親だ。
しかもその情報は、私が持っている情報より最新で早い。
「なんで、お母さんが私の知らん情報、知ってるんよ」
反抗期だった私は、母親と恋愛話をするなんて、考えられなかった。そのため母親から聞く同級生の恋愛事情に、嫌悪感を抱くとともに、自分の恋愛だけはこの人に知られてはいけないと悟った。
 
島に限らないのかもしれないが、田舎というのは噂の広まりが異常に早い。
この人(母親)に知られると、結果的に島のみんなに知られてしまうのではないかという恐怖があった。
 
母親たちがもっている最新情報のカラクリが解き明かされるエピソードがある。
先日、島に住んでいる従妹と子供の成長について話をしていた。
従妹には中学2年生の娘、メイちゃんがいる。
ある日、従妹が車で帰宅しているとき、メイちゃんが男の子と、指を絡めた恋人つなぎをしているのを発見する。
「自分の娘が男の子と手をつないでいるだけじゃなくて、まさか恋人つなぎって……目玉飛び出たよ!」
という従妹のことばに、思わず笑ってしまった。そのくらいの衝撃だったのだろう。
そして従妹のLINEには、何人もの知り合いから
「娘ちゃん、彼氏いるの? 今日見たよ!」
「今日、メイちゃんが恋人つなぎしてたよ!」
とたくさんの目撃情報が入ってきたそうだ。
このように田舎では、学校からの帰り道を男の子と歩こうもんなら、必ず誰かのお母さんに目撃されている。そうすると、それがお母さんからお母さんに、ものすごい勢いで伝わっていくのだ。
昔はスマホがなく、自宅の固定電話か、たまたま遭遇したスーパーの駐車場などで、情報交換が行われてきたが、今はLINEという最強の連絡手段がある。グループLINEなどでやりとりされようものなら、一斉に広がってしまうから何とも恐ろしい。
 
このように母親たちの情報網は、限りなく広がっていて、なおかつ早い。
たとえ学生時代にタイムスリップできたとしても、そんな母親たちの網の中で暮らしている限り、恋愛をするなんて無謀な真似は絶対にしたくない。
 
いつしか私も母親になった。
今まさに思春期の入り口に差し掛かろうとしている娘がいる。
今になってみれば、あのときの母親のことがわからなくもない。
娘を含め、娘の友達も小さいころから見てきた。
彼女たちが成長する姿に、うれしさを感じる反面、心配も増えていく。
いつカップ付きの下着をつけさせればいいか、最近の子はいつ頃生理がくるのか、スマホはいつから持たせるべきなのか……
いくら自分が経験してきたこととはいえ、娘となると話は別だ。娘が困らないようにできるだけ支えてあげたい。
そういうときに相談する相手は、ママ友だ。
気になることがあれば、すぐに先輩ママや同級生のママにLINEで聞いてみる。
子供たちの恋愛が始まってきたら、子供たちの恋愛事情もきっとLINEのやりとりのなかに入ってくるだろう。
 
子供の情報だけではない。
母親たちの情報網は、Siriよりも頼りになる。
子供の情報だけでなく、学校行事のHOWTO、地元の名医、建物が壊された跡地に何ができるのかなど、Siriが教えてくれない、ありとあらゆる情報が詰め込まれている。
こうして母親たちは助け合っているのだ。
 
とはいえ、子供たちからすると、自分の知らぬところで、自分のことがあれもこれも筒抜けなのは、気分が悪いだろう。私たち母親は、子供のプライバシーをきちんと守ったうえで、助け合っていかなければならない。
 
最後に、ここまで記事を読んでくださった中に、もし既婚の男性がいるなら伝えたい。
ここまでの話を、子供のことと思って安心していないだろうか?
妻たちは、子供のことと同じくらい、夫のことも話しているのだということを。
 
 
 
 
***
 
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2021-09-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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