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日本が世界に誇る内視鏡!


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:鈴木亮介(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
日本の医療技術は欧米に遅れを取っている、としばしば言われる。
現在は海外に比較して大きな差はなくなってきた印象だが、歴史を振り返るとそうした傾向があったのは確かだ。
しかし医学の中には、日本がぶっちぎりのトップを走り続けて、今もなお世界をリードしている分野がある。
それが……消化器内視鏡だ!
 
内視鏡とは、先端に小型カメラを内蔵した細長い管を口や肛門から挿入し、食道、胃、大腸を観察し、時には治療も行える医療機器のことだ。一般的には、「胃カメラ」「大腸カメラ」と呼ばれているものである。
 
1、 日本の医師がつくってきた世界標準の診断法
内視鏡診断は、カメラを病変の近くまで挿入して病変の色や形、模様を観察することで、腫瘍かどうか、良いか悪いか、どこまで深く浸潤しているか(深達度という)を判断する方法だ。これだけ聞くと「ただ視る」という古めかしい医療に聞こえるかもしれないが、実は先人の知識とデータに裏打ちされた、極めて奥の深い診断学である。
 
とりわけ、内視鏡診断の強みが発揮されるのが、早期癌の診断だ。
進行癌が平和を脅かす凶悪なマフィアだとすれば、早期癌はマフィアになる前のチンピラだ。チンピラのアジトが小さい(腫瘍が小さい)うちに発見し、殲滅する(手術する)ことができれば、未来の平和は守られる。
その意味で、癌を初期の段階で発見することの意義は大きい。
 
ただ一般的に、早期癌の発見は進行癌の発見と比べて難しい。
マフィアの一員なら、その人相で「そっちのタイプ人だ」と簡単にわかるが、単なるチンピラならぱっと見、チャラつき始めた若者と区別がつきにくい。早期癌もそれと同じで、腫瘍のサイズもまだ小さく、滑らかな粘膜が少しくぼんだり、少し盛り上がったりする程度で、良性/悪性の見分けがつきにくい。
 
しかし日本は、これまで早期癌の診断で大きく貢献してきた。
内視鏡にはただカメラで見るだけでなく、特殊な光や染色をもちいて消化管粘膜の表面を見やすくする技術がある。その表面の「乱れ」で良性腫瘍か早期癌か、病変の深達度を評価することができる。たとえるなら、ミカンの外側の皮だけを見て、中身がどんな状態になっているのかを判断するようなものだ。外側の皮をめちゃくちゃ拡大して、中身が腐っているかどうか、腐っている範囲は一部なのか全体なのかが分かったら、なかなかに革命的である。
 
その粘膜表面の「乱れ」の評価法を確立してきたのは日本の医師たちだ。
特に早期大腸癌の診断に有用な「Pit-Pattern分類(下記)」という診断法があるのだが、これは腫瘍/非腫瘍, 良性/悪性, 癌の深達度に至るまで、かなり正確に評価することができる。このPit-Pattern分類をはじめて提唱したのは、日本人医師の工藤進英先生であり、『プロフェッショナル 仕事の流儀』にも出演された世界的な内視鏡医である。
 
 
 
2、 内視鏡技術は日本メーカーの独壇場
 
日本の内視鏡を語る上で、もう1人欠かせない登場人物がいる。
それは内視鏡を製造するメーカーの存在だ。
 
内視鏡の製造技術はもはや日本の「お家芸」であり、日本のメーカーは圧倒的な世界シェアを誇っている。下の表は、医療機器の国内企業・国外企業の市場占有率を示したものである。多くの医療機器は欧米の企業が中心になって開発している一方で、内視鏡に関しては日本企業のメーカーが99%のシャアを有しており、日本の独壇場なのだ。
 
 
中でも最大王手のオリンパスの存在は圧巻で、世界シェア7割とぶっちぎりのトップを走っている。世界中の人がネット検索でGoogleを使うように、世界中の内視鏡医はオリンパスの内視鏡を使っている。実際、イギリスの大学病院で行ったとき、その病院の内視鏡はオリンパス社のものだった。
 
シャアだけでなく、技術もオリンパスはすごい。
内視鏡の仕組み自体は、よく考えるととてもシンプルだ。
先端にカメラのついたチューブを口や肛門から入れて、病変をカメラで映す。ただそれだけ。
でも、その仕組を支える技術はものすごく繊細だ。
 
挿入しやすい絶妙な柔らかさと硬さも持った内視鏡の素材。
先端カメラから得られた画像を見やすく補正するための画像処理技術。
病変を見やすくするための光の波長。
医師のニーズに合わせた操作性。
内視鏡の中身は、いわば特許やノウハウの塊だ。
 
 
実際、内視鏡関連の特許件数を見ると、オリンパス社の特許件数は文字通り桁違いだ。
 
Appleが新しいiPhoneを発表して携帯電話の概念が変わってきたように、オリンパスが新しい技術を発表するとき、内視鏡の歴史が変わってきたのだ。
 
3、 医師とメーカーの二人三脚で発展してきた内視鏡
 
オリンパスは世界で初めて内視鏡の実用化した企業だ。
1949年に東大病院のある医師から「日本人に多い胃がんをなんとか治したい。患者の胃のなかを写してみるカメラをつくってほしい」という依頼がオリンパスにもちこまれ、オリンパスの技術陣が開発し始めたのが、すべての始まりだった。度重なる試行錯誤の末にようやく試作機がつくられ、その後医師との協力で機器改良が進み、同時に診断技術も発達してきた。
このようにメーカーのエンジニアと創生期の内視鏡医たちがタッグを組み、ときには研究会で議論しながら新規の技術開発を進めてきたのが、日本の内視鏡開発の歴史だ。
メーカーが新たな技術を開発すると、その技術を医師が使って診断技術を研究し、さらにその過程で出た改善点をメーカーにフィードバックする。
こうした好循環が日本の内視鏡技術全体を進化させてきた。
 
最近では、オリンパスが500倍の倍率をもった超拡大内視鏡を開発した。500倍では細胞レベルまで観察でき、診断精度がさらに上がることが期待できる。また超拡大内視鏡を使った新たな診断法も確立していくかもしれない。
 
このように内視鏡は間違いなく世界に誇れる日本の技術の結晶だ。
医療者の一人として、誇りに思うところである。
 
 
 
 
・参考文献
上部消化管内視鏡診断マル秘ノート
上部・下部消化管内視鏡診断マル秘ノート2
Pit pattern診断. 胃と腸 47(5):863-864, 2012
オリンパス株式会社 オリンパスの医療事業
***
 
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2021-09-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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