メディアグランプリ

身に付けたいスキルを「ダウンロード」する時代がやってきた


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:徳丸あす香(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
雨が止み、雲の隙間から日が差し込む。
濡れた髪から、雨が、額、まつ毛、瞳へとツーっとつたって落ちていく。
でも、彼女の瞳はピクリとも動かない。
なぜならば彼女は脳以外、全身機械のアンロイドだから。
無表情に彼女は銃を構えている。
彼女の視線の先には柱があり、その裏で男が息を殺して考えている。
 
“なぜ撃ってこない?”
 
彼女が真っ先に破壊したのは衛星との通信装置。
 
“そうか! 彼女は今、狙撃ソフトを衛星からダウンロードしているんだ!”
 
気づいた男は、彼女をライフルで撃つため柱から飛び出た……。
 
というのは、私の大好きなSFアニメ『攻殻機動隊 SAC 2ndGIG』のワンシーンです。
 
見た当時、何が一番驚いたって「スキルがダウンロードできる」ということでした。これが出来るようになったらすごくいい。
 
例えば、ちょっと旅行でスペインに行くからスペイン語をインストール。旅行先で気軽にこだわりのものを探して買えるし、聞けるし、学べる。とか、スキーはやったことないけど、今度遊びに行くからスキーのスキルをインストールして、ちょっと難易度高いコースを滑ってみよう、とか練習なしで出来てしまうのではないか。いきなり無敵になれるような気がする。
 
なにより、これが出来るようになったら学校のテストとかも楽勝だ。このアニメが放送していた時に学生だった私は、テスト勉強をしながらこの能力が欲しい! と本気で思っていました。
 
それから、どれくらい経っただろう。
 
2021年9月4日。
 
XR クリエイティブアワード2021の表彰式が行われました。
 
XRとは、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)と呼ばれる、新しい映像表現、技術の総称でコロナ禍の今、とても注目されている技術です。360度見渡せる世界をデジタルの中に作ってその中で人とコミュニケーションをとったり、様々なことをシュミレーションをしたり、スマホのデバイスを通して情報や映像をまさにそこにある様に見られるようにしたりといろんなことができます。
 
XR クリエイティブアワードはそういった技術の特徴を活かした、これまでにない新しい表現に贈られる賞です。
 
デジタルハリウッド大学の教授 藤井直敬さんや、メディアアーティストの落合陽一さんなど、日本におけるデジタルの最新技術を牽引する方々が審査員をされています。
 
賞に応募した作品を動画で見ていると、いくつかVRを使っているコンテンツで「これ、インストールに近いんじゃない?」と思うコンテンツがあり、夢見た未来が近づいていることに気付かされました。
 
最優秀賞のコンテンツは、日本一の溶接工の職人の技を360度のCGで出来たVRの世界で再現、シュミレーションして学ぶコンテンツでした。
 
まずはCGの映像で、職人の動きを模倣するそうです。職人と同じ動きができたらOK。溶接の用具がなくても、教えてくれる講師や師匠がいなくてもVRゴーグルをかけてガイドに合わせて動けば身に着けられるのです。
 
しかも、電流も10段階で調節可能で、VRの世界で下向きでも、横向きでも、いろんなタイプを練習できます。映像の中だけで溶接しているから、何度も失敗し放題! 練習を繰り返して、現実で初めて溶接にトライしてもすごく上手くできる、かもしれない。実際、これを使って学んだ人の方が習得が早かったそうです。
 
今回は溶接の職人の技ですが、失われそうな伝統の技もこういった技術で記録されれば、何十年、何百年経って興味を持った人が引き継いで復活させてくれるかもしれないという希望の光も見えました。
 
最優秀賞はCGの世界での練習でしたが、実写のリアリティーで学ぶものもありました。
 
救急救命士を育成するためのコンテンツで、360度の映像で実際の症例を記録して、何度でも見ることができる。だから、実習に出たような学習ができるものです。どこでも、誰でもその症例を見られるようになったら、数年に一度起きるかの珍しい症例でなかなか学ぶ機会がなかったとしても、そのコンテンツによって全国でその経験をシェアできるようになるかもしれません。それによって救われる命もあるはず。
 
インストールのいいところは、同じ情報を全く別々のデバイスで再現ができること。それを人に置き換えると全国どこでも同じスキルを身につけることが出来ると言うことだと思います。
 
今、新型コロナウイルスの影響で、やりたいことを体験できない、経験をつめず、学校や職場で不安を覚えている人が多くいると言います。そういった人たちがVRを利用できるようになれば、大きな助けになるはず!
 
VRの市場は今後7年で成長して、7兆6000億円を超えるとも予測されています。エンターテイメントでも発展してほしいですが、こういった教育の場で誰もが暮らしを豊かにするスキルを自分にインストールする未来がすぐそこまで来ているのかもしれません。
 
 
 
 
***
 
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2021-09-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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