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人が捨てたゴミは巡り巡って自分に繋がっている 


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:早藤武(ライティングゼミ・超通信コース)
 
 
「なんで人が散らかしたゴミを片付けないといけないのだろうか」
 
私が東京に住んでいた高校生時代に美化委員会に所属していました。
 
放課後に教室を掃除することは小学校から続けてきていることなので、特に嫌な思いはありませんでした。
しかし、美化委員会に入ってからは自分の教室だけではなく、学校中を他の委員会メンバーと一緒に掃除していました。
 
学生たちが活動した後はもちろん後片付けをしてくれています。
それでも行き届かない場所や滅多に掃除されないで汚れてしまったところを清潔に保つために定期的に掃除をする活動をしていました。
 
委員会活動で美化活動をしていると普段の掃除では目に触れない部分や人通りのない校舎内へ足を踏み入れます。
そうすると人の目に触れていないところでは、結構な割合で散らかしたゴミをそのままにして立ち去ってしまった後が見られるのです。
 
恐らく、放課後にジュースを飲みながらおしゃべりをして盛り上がった雰囲気のままカラオケにでも行ったのでしょうか。
 
中身が残ったペットボトルのジュースが6つサークル状に並んで残されていました。
 
飲み終わっているならば、軽くペットボトルの中を水でゆすげば簡単です。
 
しかし、中身があると洗うための精神的なハードルが上がります。
炭酸であれば放置されて中身が温かくなるため、場合によってはフタを開けた途端に吹き出してしまう大惨事が起こります。
以前、油断して顔や服にかかってしまったりでとてもひどい目に合いました。
 
昔の良い経験からか対処法はもう取得済みです。
掃除用具として持ち歩いていたバケツにペットボトルを入れて水洗い場に直行します。
流れ作業でペットボトルの中身を水で流しながら洗浄して、フタとカバーを外していきます。
 
「よし、これでゴミに出しても大丈夫かな」
 
後は他の委員会メンバーが残ってやっているところを終わらせたら活動は区切りがつきそうです。
私の担当エリアの片付けが終わって手伝いに行ってみると学校の外の道路周りに落ちているところをやっているところでした。
 
「こっちは終わったので、お手伝いしますよ」
 
「ありがとうございます。流石に範囲が広いので人数がいると助かります」
 
先に終わった美化委員メンバーが続々と合流して片付けを次々に片付けていきます。
通学路として生徒全員が毎日利用しているので、周辺住民の方に迷惑にならないように綺麗にしていきます。
 
明らかに生徒が捨てたものじゃないであろうタバコの吸い殻やお酒の缶なども目についたので片付けていきます。
 
「なんで人が散らかしたゴミを片付けないといけないのだろうか」
 
自分通う学校の生徒が汚してしまったものは片付けていて役割だからと納得できていたのですが、どこの誰ともわからないものを片付けていて疑問が湧いてきてしまいました。
 
「同じ地球に住む人間同士なのだから、お互い様ですよ」
 
私の行き場のない憤りの独り言を美化委員を担当する英語の先生が、労いの気持ちを込めて言葉をかけてくれました。
 
「私たちもゴミを捨てた後の事を知らないで毎日を過ごしてますから、実は人のことを言えないかも知れませんよ。だからこそ、気がついたところはお互い様でやれる範囲のことをしていきましょうね」
 
いつもニコニコおっとりしている先生ですが、生徒と一緒になってテキパキとゴミを片付けてくれています。
 
委員会メンバー総出での活動が終わって、みんな晴れやかな顔をして帰宅する流れになりました。
担当の先生がそうだと何かを思いついた声を出して、私たちにある提案をしてきました。
夏休みシーズンで日程の合う生徒たちで、文化祭の展示ができるように夢の島を見学しにいきましょうと言うのです。
夢の島は東京のゴミが集められる最終処分場ですが、それ以外にも燃えるゴミを焼却する施設やペットボトルなどの資源ごみを再利用できるようにする施設もあるので一緒に見学できるようにすれば、今の美化活動の勉強になるというのです。
 
貴重な夏休みの時間を削ってしまうのは少し迷いましたが、往復でも日帰りで行けることや文化祭の出し物のネタに困らないので行ってみましょうという流れになりました。
何よりも、自分たちが片付けたゴミがどうなっているのか関心が向きました。
 
夏休みに入って、美化委員会メンバーで東京都のゴミ最終処分場である夢の島に向かいました。
小学生の頃に社会科見学でバスに乗せられて、ブルドーザーやトラックが行き交う中をぐるっとまわってなんとなく見学した記憶は残っています。
小学生で連れてきてもらった時には後10年で埋立地は満杯になってしまうから、みんなでリサイクルなどしっかりしましょうと言われていた気がします。
 
あれから夢の島はどうなったのでしょうか。
 
今回はバスで回る人数ではないので、先生が見学ツアーを手配してくれていて、船に乗って東京湾を一周しながら埋立地を外から見学して、他の資源ゴミを再利用する施設に連れて行ってくれる流れになっていたようです。
 
文化祭の展示用に、カメラの趣味をもつ同級生が自宅からマイカメラを持ってきてあちこち撮影しています。
撮影した写真の現像代は、委員会活動としてきちんと出すので、同級生は趣味のカメラの腕を磨きながら委員会の活動にも貢献できる素敵な関係で成り立っています。
 
船で夢の島の外周まで来ると案内人から説明を受けながら進んでいきます。
 
「以前、夢の島はすぐに満杯になるだろうと言われていました。しかし、環境ホルモンで問題になったダイオキシンを発生させないように非常に高い温度でゴミを焼却する必要になって、東京都のゴミ処分場の焼却炉は性能の良いものに変わりました」
 
環境ホルモンが広がってしまうと生態系に大きな影響があって、たくさんの生物が生きていけなくなってしまうので、早急に解決されたようです。
ゴミを燃やす温度が非常に高くなったおかげもあって、燃やせるゴミがとても少ない灰になるまで処理できるようになったのが大きいようです。
 
案内人の方の説明に先生が説明を加えてくれます。
「ゴミで再利用できるものは、きちんとリサイクルしましょうという考えが広まったおかげでゴミ自体が多く出ても、本当に処分するしかないゴミの量が減らせたおかげで、まだ夢の島は満杯にならずに利用できているのだそうですよ。だから、みんなでいつも拾ってくれるゴミが分別されているのは役になっているのです」
 
船に揺られて、今度はリサイクル施設へ足を運びます。
アルミ缶が大きなブロックになって、フォークリフトでどんどん運ばれる光景は壮観です。
 
施設の奥に案内されるとベルトコンベアに乗せられたペットボトルがゆっくりと運ばれていきます。
進んだ先には10人くらいの女性たちが、ペットボトルに何かしているようでした。
案内人が女性たちに声をかけて、学生が見学に来たことを伝えてくれたようです。
1人が案内人と一緒にこちらに来て、何か知りたいことがあれば聞いてくださいねと笑顔で声をかけて来れました。
 
同級生は許可を取って、作業風景を写真にどんどんカメラに収めています。
私はせっかくの機会なので、話を聞いてみました。
 
ここではどんな作業をしているのか。
私たちも美化活動でペットボトルを拾うのですが、中身があると洗うのが大変ですよね。
文化祭で生徒たちに発表するのですが、伝えたいことはありますか。
 
最初は緊張して、何を聞こうと思っていたのですが同じような活動をしている共通点があるからなのか話が弾みます。
 
ここでは、ペットボトルが再利用できるようにキャップとラベルを外して綺麗にしています。
中身がある状態で捨ててあると大変ですね。
中には灰皿の代わりにしてタバコと水が一緒に入って捨てられてくるので、再利用できないものもあります。
皆さんがご自分の学校に戻ったら、ぜひペットボトルのキャップは外して捨ててくれるように呼びかけて来れたらとっても助かります!
キャップを外すのがとても大変なんですよ。
 
私たちはたくさんメモを取って、勉強になったことは記事にしてみんなに伝えていくことを約束していきました。
 
「私たちが集めたゴミたちがどうなっているかを改めて自分の目でどうなっているかを確認できて、とても勉強になりました。ありがとうございました!」
 
案内人、各施設でお世話になった人たちと引率をしてくれた先生にお礼を言って、見学会は終わって帰路につきました。
 
夏休みが明けるまでに、見学ツアーで学んでわかったことをノートにまとめて文化祭の展示資料にまとめました。
文化祭当日に足を運んでくれた生徒たちに自分たちが出したゴミがどうなっているのか話をしました。
 
足を運んでくれた生徒や一般の見学者の方からは、自分たちが出したゴミがどうなっているのか全く知らなかったのでタメになったという声をもらいました。
そして、ゴミの行く末を知ることができたからこそ、これからのゴミの出し方にはもっと気をつけようと思えましたと素敵な感想をもらいました。
 
私はゴミを片付けて送り出した向こうの世界を知ったことで、自分たち以外の人が散らばしてしまったゴミを片付けても、巡り巡って自分たちに繋がることを今では理解できるようになりました。
 
「同じ地球に住む人間同士なのだから、お互い様ですよ」
 
誰かが散らばしたゴミに行き場のない憤りでいっぱいだった私にかけてくれた先生の言葉が、ようやくしっくり来るようになったのです。
 
そして時は経って、社会人となって東京を離れて北海道に移り住んで毎日を送る中でも、自分が出すゴミに思いを馳せることがあります。
 
日曜日の朝に車でドライブをしていると町内会の集まりで、老若男女の人たちが道端のゴミ拾いをしていると高校生の時の社会科見学ツアーを時々思い出して初心に帰ります。
 
自分だけが汚れているところを片付けているわけでは決してなくて、多くの人が見えないところでもできる範囲でゴミを片付けたり、もったいない精神で再利用できるものをきちんと次に使いまわしていくことで世界は巡り巡っていることを思い出します。
 
同じ地球に住むもの同士なのだから、できることをして助け合っていくのだからお互い様である。
独りで抱え込まないで、みんなで少しだけできることをすると地球は綺麗になって、いつまでも住みやすい世界でいてくれるのかも知れません。
 
自宅に帰宅して車を降りるとゴミステーションの脇に、中身の入ったペットボトルを見つけて、私は拾い上げて持ち帰ります。
きちんと洗って送り出してあげたら、次に巡って来るときに誰かの役に立ってくれる何かになっていることを思いペットボトルを洗って、今日も分別するのでした。
 
 
 
 
***
 
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2021-09-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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