人を動かすメールとは
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事: 星永俊太郎(ライティング・ゼミ超通信講座)
オンライン化、リモートワーク化の流れに乗って、会社でチャットツールを利用することが増えてきた。とはいえ、まだまだメールもなくならないのが現状だ。
私は、メールというものがとにかく苦手で、常に数千件の未読が溜まってしまい、メールの海に今にも溺れそうになりながら、なんとか自分に関係するメールだけは見つけたり、見つけられなかったりしながら仕事を進めている。
何日か前のメールを漁っていたときに、たまたま後輩がプロジェクト全体に送ったメールが目に留まった。ここでは仮にこの後輩をKさんとしておこう。
「みなさまへ。
Kです。お疲れ様です。
資料作成しました。ご確認をお願いします」
と書かれていた。それとともに、共有ファイルのリンクが送られてきた。試しに開いてみると、
「○○さんが編集中です。読み込み専用で開きますか?」
パネルが表示されたので、そのままそっとファイルを閉じた。
うーん、このメールじゃちょっとダメだな。先輩として一言アドバイスしてあげるべきか? どうしようかな? と悩んでいると、ちょうどKさんがやってきた。
「Kさん。あの件、全体発信してくれてありがとう。ただ、あの書き方だと、ほぼ読んでもらえてないんじゃないかって思うんだ」
「マジですか? なんでですか?」
「大きく言うと3つあるかな……」
さて、私はというと20年以上ソフト開発をやってきて、人から作業を依頼されることも、人に作業を依頼することも多く、どんな依頼だと自分も周りも動くのか? ってことをずっと考えながら実践してきた。
そもそも私自身が面倒くさがりやなので、生半可な依頼メールだと動かない。
いや仕事なので動こうとはするものの、ぱっと読んで理解できなければ、後で読もうと思って忘れてしまうことも多い。それでもちゃんと目に留まり、きちんと対応できるメールはあるため、要は書き方の問題だと思っている。
依頼してきた人が気に入らないから対応しないってことはないはずだ。たぶん。
そういったメールは何が違うのか? って話をこれからしようと思う。
「まずさ、『みなさまへ』って書いてあるけど、本当にメンバー全員に読んでほしいの? 違うよね? 特定の何人かだよね? その人たちは自分宛だって気が付くかな?」
「自分が関係するって思えば、読むでしょう?」
「ちなみに、私の今の未読メールの数は4~5000件ほどある。自慢じゃないけど。自分に関係ないメールも多いからね。だから、メール本文に自分の名前が書かれているメールだけは表示色を変えてなんとか読むようにしてる。でも、それ以外はほぼ読んでない」
Kさんのメールに気が付いたのは、たまたま偶然だ。試しに隣の席の人にも聞いてみた。
「届いたメール全部読んでる?」
「私も、自分宛てのメールだけ違うフォルダに移動して、そっちから優先して読んでます」
だよねえ。なんでもかんでもメール送ってくるから全部読んでたらそれだけで一日終わっちゃうもんねえ。
「じゃあ、何日か前に送られてきたKさんからのメールに気づいた?」
「ちょっと待ってくださいね……開封した形跡はありますが、自分に関係するとは思わなかったですね」
Kさんにどや顔で向き直った。
「ほらね」
「えーー、そんなもんですか? みんな責任感とかないんですか?」
「自分宛かどうかわからないものに、責任感もなにもないよね」
「うーん……」
ちょっとまだ納得できてないみたいだな。まあ、次に行こう。
「で、2つ目が、この資料みて誰に何して欲しいの?」
「え? 確認しておかしなところがあれば指摘して欲しいです」
まあ、そう書いてあるよね。
「みんななんとなくこの資料を眺めたらいいの? なんか見て欲しい観点があるんじゃないの?」
「いえ、大きく3パターンあると思ってて、、
・Aグループには縦方向の項目に過不足がないこと、
・Bグループには横方向の項目が正しいかどうか、
・Cグループには全体的な方向性を確認して欲しいです」
なるほど、ね。ちゃんと考えてはいるんだ。
「そんなこと、どこに書いてある?」
「いや、書いてないですけど。そんなの、それぞれの人が考えてやってくれたらいいじゃないですか?」
あくまでも読んだ側が責任もって、考えて、実行してくれたらいいと主張するKさん。
「私なら、パッと見て何をするかわからなかったら、あとでまた読もうと思って閉じて、そのまま忘れちゃうかな」
不満そうな顔のKさんに向けて、続けて言った。
「他人からの依頼って基本面倒くさいし、やりたくないじゃん? だから、やりたくないことをやってもらうためには『できるだけ相手のハードルを低くすること』が大事だと思うんだ」
「そこまで私がしないといけないんですか?」
「人に動いてもらおうと思ったらそこまでしないとダメだと思ってる。実際、このメール送ってから2,3日経ってるけど誰か返事くれた?」
「……まだ誰からも返事はありません」
Kさんは、これまであまり全体に働きかける依頼をする機会がなかったから、ちょうどいい勉強になってると思う。
「大きく3つあるっておっしゃってましたよね? もう一つはなんです?」
ちょっとKさんの顔つきが変わった。
「最後の一つは、エクセルファイル共有になってないよね? なんで?」
「同じ場所を修正するようなことがあったら困るかな、と思ったので……」
これも一応考えてはいたんだ。なるほど。
「それも確かにあるよね。でも、せっかく面倒くさいのに重い腰を上げてファイルを編集しようとした人が『読み込み専用です。編集はできません』って言われたらどう思う? 私ならそっとファイルを閉じて忘れてしまうかな。行動する力は有限だからさ、せっかく行動してくれた人のエネルギーを無駄にするのは避けた方がいいと思うわけ」
なるほど、とつぶやいたKさんが、少し考え込んだ後に言った。
「もう一度メールを出しなおしてみます」
まとめると、Kさんのメールの改善点は3つ。
・誰宛かを明確にする
・何をするかを明確にする
・相手の行動するエネルギーを無駄にしない
ただこれ、ひとつひとつを覚える必要はなくて、「できるだけ相手のハードルを低くするにはどうしたらいいか?」ってことだけを考えたらいいと思う。
昔から多くのことは覚えたくなくて、数学の公式もたくさんは覚えたくないから、必要最小限の公式を必要に応じて展開したり、組み合わせたりしてきた。根本的にはそれと同じ考え方かな。
面倒くさがりの自分は、どう依頼されたら動くのか? ってことを考え続けた結果、たどり着いた考え方だ。
しばらくたってからKさんが出しなおしたメールを見ると、指摘した内容は見事に修正されていた。その結果、その日のうちに何人かから返信が返って来た。
やった! ちゃんと人を動かすことができたね。
私が一つだけ後悔したことは……、宛先に私の名前も入っていたことだった。
「しまった、私もこの資料確認しないといけないのか……」
そう思いながら、そっとメールを閉じた。閉じるんかい、と閉じた自分が可笑しくて笑ってしまった。
人を動かすってそんな簡単じゃない。いくら相手のハードルを低くしても、相手のタイミングや、それでもなお面倒くさいって思う人もいるわけだから。
さっきは言わなかったけど、人を動かすためにはもう一つコツがあると思っていて、それは
「相手が動いてくれるまで何度でも繰り返すこと」
かな。
まあ、おいおい学んでくれたらいいけどね。
***
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