メディアグランプリ

私をリモート疲れから救ってくれたのは、森と〇〇の惑星でした


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:篠田 龍太朗(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「はああ、終わったぁぁ……。」
かつては「華金」とも言われた金曜、時刻は夜10時。
 
ようやく私は、何とか今週締め切りの資料を提出し終えた。やっと終わった。怒涛の一週間だった。自然と、深い深いため息が出た。
 
この夏押し寄せたコロナ第5波は、私の生活スタイルを大きく変えた。ほぼ完全に在宅勤務へ移行するよう、勤め先から通達が出されたのである。これまでは何やかんや出社する機会が多かった私も、ついに完全リモートとなった。
 
在宅勤務が始まって2週間ほどは、比較的仕事に余裕もあり良かった。ところが3週目から急激に忙しくなってきた。勤務時間の半分以上が打ち合わせになった。その合間を縫って行わねばならない、調整ごとや雑務の数々。気がつけば、資料作成とかデータ分析みたいな頭を使う仕事は業務時間外にしかこなせなくなった。朝起きて、朝食を取ったら夜の9時や10時まで自宅のデスクに座りっぱし、という毎日になった。
 
これが続くと、とてもしんどくなってきた。
目も疲れるが、それ以上に疲れるのは神経だ。まさに「気を遣っている」感じがする。
これまでは誰かにちょっと頼み事をしたいときは、その人の席に行って「〇〇さん、ちょっと時間いいすか?」なんて話しかけつつ気軽に相談すればよかった。
 
ところがテレワークの場合は違う。この軽いお願いが全部、チャットかメールに置き換わる。向こうの顔が見えないので、確実に要件が伝えられるよう、いちいち理論武装が必要だ。「本当に伝わる文章か? 機嫌を損ねる内容じゃないか?」という細かい配慮が必要になった。キーボードを叩く量が、出社時より明らかに増えた。
 
こうして、日中はほぼweb会議かテキストベースの調整、早朝や業後はひたすら資料作成という究極カンヅメスタイルが完成した。
そんな日々が続くと、次第に私の身体には、異変が起こり始めた。
 
目のかすみ、痛み。首の凝り。
神経の疲れからくるピリピリとした頭痛。
全身が気だるい。何だか眠りも浅い。
完璧な「リモート疲れ」そのものである。
 
思い返せば月曜に歯医者に行ってからというもの、私は今週一度も外に出ていなかった。くたびれて散歩に出ようという元気も起こらない。デスクの前だけで過ぎゆく時間と日々。歩数も一日平均7千歩から、250歩にまで減った。こりゃあ、身体の具合がおかしくなるのも無理はない。
 
そんなコロナ疲れのさなか、『虫とゴリラ』という本に出会った。
 
解剖学者で虫採集が趣味の養老孟司と、ゴリラ研究の第一人者である山極壽一の対談本だ。二人とも、自然をこよなく愛しながら研究を続けてきた方である。虫もゴリラもたいてい、群れや仲間と一緒に野山を走り回って暮らしている。ヒトも元来同じはずなのに、ことごとく野山を破壊してしまった。その上にコンクリートのビル群を造り上げ、人同士の繋がりまで希薄にしてしまった。そんな都会で寂しく暮らしているなかで、ヒトは生き物としての本能を失いつつある。迷走しつつある。そういう二人の警告が胸にひびく本であった。
 
そんな自分はといえば、都会の真ん中近くでマンション住まいだ。もう4日もデスクに座りっぱなしだ。人とのつながりだって、今や全部画面越しである。
 
……もう、疲れた。
 
私は先生方から、「早く自然に戻れ」と言われている気がしてならなかった。そうだ、週末はとにかく森へ行こう。金曜の仕事が終わると、ひとりそんな決断をした。
 
翌日(土曜)は、車を走らせ、山奥の温泉へ出掛けた。空気が美味しくて、みるみる身体がご機嫌になっていくのがわかる。露天風呂に浸かって森林浴をしているうちに、頭のすみずみまで酸素が行きわたっていく感じがした。ピリピリとした頭痛が、かなり和らいだ。この日の夜は、お土産に買った美味しい地酒をあおって、泥のように眠った。
 
そして日曜日。名古屋在住の私は、近隣のお出かけスポットを探していると、ふと「日本モンキーセンター」という施設を見つけた。しかもよくよく調べてみると、モンキーセンターは先ほどの山極先生も深く関わっている猿専門の動物園だった。私は色んな偶然や縁をビビッと感じ、日本モンキーセンターに行くことを即決した!
 
モンキーセンターに着いた。コロナの影響か、「密」が全く気にならないほど空いている。園内はかなり広い。世界中の約60種・800頭ものサル類がこの園内にいるという。世界最大のサル専門動物園らしい。他の動物もいない。文字通り、ここは「猿の惑星」であった。
 
入園ゲートをくぐると、いきなりすぐ左に「リスザルの島」が出現する。
 
これが……、もう半端ない。
 
島状につくられた森の中で、ちっちゃくてかわいいリスザルくんたちが何十匹も放し飼いにされているのである!
 
彼らは4本足でそこら中をちょこちょこと動き回っている。尻尾も手足も自在に操り、周りの木々をどんどん飛び移っていく。エサの虫を探して土を一生懸命掘っている。何だ、これは楽園かよ! そんな姿に夢中になるうちに、もう心がめちゃくちゃに癒され始めていた。私は何十分もその場でぼーっとして、リスザルくんたちの虜になっていた。
 
リスザル以外にも、モンキーセンターには色んな奴らがいた。
のんびりくつろいでいるニホンザル、ながーい手を自在に操って木々を飛び回るテナガザル、かっこいいゴリラの親分。やたらいい声でずっと歌っている奴もいた。
 
気が付けば、木々に囲まれた広い園内を回り、彼らの姿に見入っているうちに、すっかりテレワーク疲れからの抜け出せたことを実感していた。園内を散策しているうちに、森林浴ができたのは大きい。久しぶりに外に出て、気持ちがリフレッシュされたのもある。
 
でも、それ以上に。
サルたちの自由奔放な姿が、心のモヤモヤを吹き飛ばしてくれたのである。
 
園内の檻の中で暮らしているサルたちには、ジャングルほどの自由はないのかもしれない。
でも、彼らは得意な方法で木々を飛び回っている。くつろいで寝転がって、気持ちよさそうに毛づくろいをしあっている。食事の時間だけは全力で自己主張して、エサを奪い合っている。歌いたい者は、休むことなく歌っている。
 
そうか。
 
彼らには、遠慮も忖度もないのだ。
 
彼らは総じて知能も高いくせに、右脳をつかって、本能だけで生きているのである。
 
幼いころから、動物園の檻の中の生き物たちを可哀想だと思っていた。
 
けれども。
 
遠慮に忖度に果ては在宅勤務に、本当に檻の中にいたのは自分だったのだ。
 
最近はとくに、暗いニュースと自粛つづきで、みんな病んでしまっている。多分いまの我々は、左脳がつくりだす「理性」というせまい檻の中だけで何とか必死に生きているのではないか。
 
でも、もう大丈夫だ。
 
都会の生活で疲れたあなたには、きっと「森と動物」がよく効くはずだ。
森のいい香りを吸って散歩してみよう。本能だけに従って生きる動物たちに触れてみよう。これこそ、「左脳の檻」から解き放たれる唯一の方法なのだと思う。
 
特に東海三県にお住まいの皆さまには、ぜひ一度犬山の「猿の惑星」を訪ねてみていただきたい。その惑星の少し変わった住人たちは、傷ついた皆さんの心をとっても自然に癒してくれるはずだから。
 
 
 
 
***
 
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2021-09-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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