メディアグランプリ

「ときめかないモノ」を捨てれば、それで本当にいいのか?


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:nasuica(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
家の中が荒れていた。
 
足の踏み場がかろうじてあるが、あらゆるものがそこら中に散らばっていた。原因は明らかだ。妻も私も、心の余裕がないからだった。
 
私は会社内で、部署異動をすることになった。それに伴い、引っ越しをすることになった。住み慣れたマンションを離れて、少しだけ都会へ引っ越すことになった。普通なら都会の方がいいのかもしれないが、我々は異なる。二人ともド田舎出身であるため、緑のある光景がないと、心がどんどんすさんでいってしまう。次の居住地は勤務地に近いものの、緑は少ない。引っ越しの準備と共に、新天地に行く不安が、心の余裕を失わせていた。
 
そんな汚部屋から、全ての荷物を搬出しなければならない。心がすさんでいる我々にとっては、とても困難なことだった。
 
荷物を搬出する以前に、まず必要なもの、必要ではないものを分けて、身軽にならなければならない。4年間降り積もってきた不要品がたくさんあるはずなのだ。
 
そこでふと思い出した。「人生がときめく片付けの魔法」という本を。多くの国で翻訳もされている、大ベストセラー本である。さっそく読み直してみた。
 
ご存じの方も多いと思うが、本の中心となる考え方はこうである。片づける時に「ときめくか、ときめかないか」でものを分ける。「ときめかない」ものは捨ててしまう。そうすれば、「ときめく」もので囲まれた生活をすることができる。
 
なるほどおおおおお!!! と納得して、実際に片付けを始めてみた。しかし、私は今まで「ときめく、ときめかない」の基準でものごとを考えたことがない。ほとんどがときめかないものだし、すべて捨てることになるのだろうか……。
 
ときめかないが、
 
「これは取っておくべきだろう」
 
そう思うものもあった。
 
自分が、本の真髄を理解できていないのだと思った。
 
本に込められた、著者の思いを汲む必要があると思った。「ときめく」の自分なりの定義を見つける必要があると思った。捨てるもの、捨てないものを仕分けしてみた。捨てるか迷ったものは何かを分析してみた。どういう基準で捨てないと決めたか、自分の心に聞いてみた。
 
散らかった部屋を片づけるということは、チアリーダーを見出すことだと思った。
 
私が明確に
 
「これは絶対に捨てない」
 
と決めたものには共通点があった。
 
・高校生の時、不安いっぱいの中、一人で海外へ行った時の期限切れのパスポート
・ホームステイでお世話になったお母さんにもらった、お守りのアクセサリ
・大学で苦労しつつも勝ち取った、そこそこの結果の成績表
・仕事で初めて講師をやった時の、苦労して作ったセミナー資料
 
他にもたくさんあるが、すべて、自分にとっては難しく不安なことにチャレンジして、成功した証のようなものだった。
 
なぜかこれらを見ていると、疲れていても、もう一歩頑張れる。臆病な自分に、勇気がわいてくる。腰が重い自分に、発破をかけてくれる。
 
普通の思い出が詰まったものとは異なる。そして「ときめく」とも、少しニュアンスが違う。チアリーダーのように、自分をふるい立たせてくれるものだった。
 
そもそも、「人生がときめく片付けの魔法」は、ときめくものを残すことで、それに囲まれて明るく楽しく生活ができる。そういうことを目指した本だと思う。
逆に言えば、どんな生活をしたいかで、何を残す残さないかを決める。それが、片付けというものだと思った。
 
そして片付ける過程は、彫刻に似ているとも思った。
 
最初は、大切に持っている価値観は、おぼろげな状態で見えにくい。それが、石を彫るように、部屋の輪郭を明確にしていくことで見出されていった。今の私は、「明るく楽しく」生活することよりも、少し不安はあるけれど、冒険的な生活を送りたい。
 
つまり、私にとっての大切な価値観は、一言で言うと「チャレンジ」だった。それに必要なものを、片付けの過程で無意識に残していっていた。結果的に、たくさんチアリーダーが部屋にいる状態を作れるようになった。
 
私にとっては、「ときめく」という言葉は「チャレンジ」という言葉に言い換えることができた。しかし、大切な価値観は同じ人でも時期によって違うだろう。ましてや、人によって違うのは当たり前だ。
 
・その時点でのその人の「ときめく」って、何と言い換えられる?
・「ときめく」状態を維持するために、必要なチアリーダーはどれ?
 
これらの問いに答えを見つけられるのが片付け、かもしれないと思った。
 
引っ越しは、強制的に価値観を浮き彫りにしてくれる。片づけざるを得ないからだ。もしかすると、引っ越しの頻度をもっと増やした方がいいのかもしれない。
 
新しく入居した部屋の荷ほどきを終えて、達成感とともに、
 
「頑張ってこう!」
 
なんだか、そういう気持ちになった。そして心なしか、
 
「GO! FIGHT! WIN!」
 
ちっちゃな声で。しかし、たくさんの声で応援されている気がした。
 
参考:「人生がときめく片づけの魔法」近藤 麻理恵 (サンマーク出版)
 
 
 
 
***
 
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2021-09-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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