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ビールは、ロジカルでマジカル


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:mihana(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ビールは苦いからね……」
 
20歳になったばかりの頃、飲み会では甘いお酒ばかり注文していた。
ビールのような苦い飲み物は、絶対に飲めないと思っていた。
 
大学時代、オーストリアに留学すると、少し困った。
飲みに行くと、現地の友人はほぼ全員、ビールを頼んでいたからだ。
 
「さすがオーストリア、ビール大国ドイツの隣の国……」
そう感心しながらも、なかなかビールに馴染めない私に、
ラドラーを飲むと良いと、友人が勧めてくれた。
 
ラドラーは、ビールをレモネードで割ったビアカクテルだ。
ビールの苦みを、レモネードの甘さが中和してくれて、とても飲みやすい。
 
私はラドラーの魅力に取り憑かれ、度々注文するようになった。
そして、いつの間にかレモネードがなくても、
ビールそのものを、楽しめるようになってしまった。
 
それから、私の好きなお酒ランキングは、
10年経っても変わらず、ビールが不動の1位だ。
 
好きが高じて、ビール工場の見学に足を運んだことも多々ある。
作りたてのビールの試飲がメインイベントではあるものの、
意外と知らない製造方法も学べる良い機会だった。
 
ビールは、麦芽・ホップ・水・酵母、
主に4つの原料で出来ているが、
原料の種類や扱い方で、色も味も香りも全く変わってしまう、
不思議な飲み物だ。
 
例えば、エールビールとラガービール。
ビールの2大分類は、発酵方法の違いに由来している。
 
発酵は、麦芽・ホップ・水で作った麦汁中に含まれている糖を、
酵母が分解し、アルコールと炭酸ガスを作り出す工程だ。
 
タンクの中で麦汁の発酵が進むと、
酵母が上に浮かぶものと、下に沈むものに分かれる。
 
「それぞれ上面発酵と下面発酵といいます。
上面発酵では、香り豊かで味わい深いエールビールが、
下面発酵では、すっきりと爽やかな味わいのラガービールが出来ます」
ツアーガイドのお姉さんが、教えてくれた。
 
このほかにも、麦芽の乾燥・焙煎方法や、ホップを使用するタイミング、
軟水を使うか、硬水を使うかなど、様々な要素がビールの性質を左右する。
 
作り手は、「こんなビールを作りたい!」という理想を実現するため、
原料や製法をロジカルに考えて、何度も試行錯誤をするのだ。
 
こうして考え抜かれて出来上がったビールは、
世に送り出され、私たちの日常に溶け込んでいる。
スーパーやコンビニ、酒屋で買うことも出来るし、
レストランやバーで飲むことも出来る。
 
日常で楽しめるビールもあれば、非日常でしか味わえないビールもある。
例えば、オクトーバーフェストのフェストビア。
 
オクトーバーフェストは、ドイツのミュンヘンで、
9月中旬から10月初旬にかけて開催される、世界最大のビールの祭典だ。
 
隣国オーストリアに留学していた私も、もちろん参加した。
列車で向かい、ミュンヘンに到着すると、会場まで大行列が出来ていた。
 
16日間しかない開催期間中に、世界中から600万人以上来場するそうだ。
ドイツの民族衣装に身を包んだ観光客も多く、期待が高まった。
 
会場には、ビールや食べ物を出すテントだけでなく、
移動式遊園地などのアトラクションもある。
東京ドーム9個分ほどの広さがあり、1日では回りきれないほどだ。
 
ミュンヘン市内にビール醸造所を持つ6社だけが、
この日のためだけに作ったビール、フェストビアを、会場で販売することが出来る。
 
私はレーベンブロイという醸造所のフェストビアを飲んでみることにした。
列に並び、やっとの思いでビールを買って、驚いた。
 
見たことのない大きさだった。
オクトーバーフェストでは、マスとよばれる1リットルのジョッキに入れて、
ビールが提供されるのだ。
 
顔と同じくらいの大きさのジョッキに、少しひるんだが、
晴れた空の下、一緒に頼んだ白いソーセージともに、
透き通った明るい黄金色の液体と、その上に乗っているふわふわの白い泡を味わった。
すぐに、幸せな気持ちに包まれた。
 
会場では、陽気な民族音楽が、常に生演奏されている。
演奏の切れ目に、乾杯の音楽が流れると、
皆立ち上がり、肩を組みながら歌い出し、
最後にはビールを片手に、「Prost!(プロスト! 乾杯!)」と叫ぶ。
会場が一つになる瞬間だ。
 
ふと、隣に座っていた外国人が、笑顔で話しかけてきた。
今日のために、スペインからはるばるやって来たとのことだった。
 
「ビールが飲みたい!」
その思いで世界中から集まった大勢の人々が、ビールを通じて一つになる。
笑顔になり、時には、隣にいる見ず知らずの人との会話も生まれる。
 
ビールにはきっと、人と人を繋いでくれる魔法がある。
ビールを売っている人、運んでいる人、作っている人、原料を栽培している人、
誰一人欠けても成立しない、まさに奇跡のような魔法だ。
 
ビールは、作り手によってロジカルに作られた、
飲み手を笑顔にして、人と人を繋ぐ、マジカルな飲み物なのである。
 
さて、今日の仕事終わりは、どのビールを飲もうかな?
 
 
~参考文献~
『日本ビール検定公式テキスト2020年4月改訂版』(マイナビ出版)
監修:一般社団法人日本ビール文化研究会
『新版 ビールの図鑑』(マイナビ出版)
監修:一般社団法人日本ビール文化研究会
一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会
『まんがでわかる ビールが10倍美味しくなる知識』(小学館)
原案:藤原ヒロユキ 作画:いっさ
監修:一般社団法人日本ビアジャーナリスト協会
 
 
 
 
***
 
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2021-09-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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