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丹精込めて私が作りました!


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:光村 六希(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
私は今、海女修行の真っ最中である。週に一度、海に潜って練習している。
 
潜ることに最初はなかなか慣れなかった。元々Mっ気があるので、息が苦しくても粘って潜り続けることはできなくはないのだが、泳ぎが苦手なのだ。さらにこの海女の仕事、潜って獲物を取るだけでは終わらない。取ってきたものを陸に戻って自分なりに調理して盛りつけ、一皿として完成させるまでが海女としてやるべきことなのだ。
まだとてもお金を貰えるレベルではないが、いつかは一人前の海女になりたくて、修行を続けている。
 
まずは沖に出した船から、海にざんぶと漂う。しばらく水面で波と戯れたり、海水の温度に慣れたりして潜るための気持ちの準備をする。周囲を見回すと、遠くに他の海女さん達もいることがわかる。
今日はどんな獲物が取れるだろうか。先輩の海女さん達のように、立派な獲物を取って最高の一皿を作れるようになれるだろうか。いや、なれるように頑張ろう、と思う。覚悟を決めてざんぶと海に潜る。
 
この海底漁場は、年がら年中サザエ、アワビ、ワカメ、アラメ、タコ、ナマコなどいろいろな素材がいる。いや、いるはずだ。
 
私達は自分の文章を書くために、自分達の海で文章にする素材を採り、自分なりの一品に仕上げて「天狼院」という海鮮レストランに提出する。提出期限は毎週月曜日23時59分。
そのレストランで高く評価されるということは、先輩のプロフェッショナルな海女さん達から評価を受けることはもちろん、多岐に渡るレストランのファンや海鮮料理ファンから注目されることになる。
 
評価されるポイントは、採ってきた素材の良さだけではない。アワビや伊勢海老といった上等の素材がいいはもちろんなのだが、もしそのような上等な素材が採れなくても、自分なりのセンスとテイストで盛りつけて魅力的なタイトルをつけた一皿にまとめれば、その一皿の描くストーリーは高く評価されるのだ。
 
素材だけでなく、採り手の一品としてまとめる力量が問われるこの作業。私はまだまだ慣れない。
 
まずは海の底で文章の素材となる獲物を見つけるのが苦手だ。
私はこれまでにたくさんの経験をしてきたし、いろんなことを心の中で育ててきたはずなのだが、それらは少し潜っても簡単に見つからない。
 
あっちに何かがありそうだ。もう少しよく見ようと、海の中でくるりと体を回転させる。私の漁場であるネタ帳はまだそれほど溜まってはいないはずなのに、なかなか今日の獲物が見つからない。大きな岩の割れ目に隠れるようにアワビやタコなどの上物がいたり、昔放ったウニ種苗がどこかにいるはずなのだが、探すのがまだまだ下手だったり忘れてしまったりしている。
 
海の底に潜ってモタモタしていると、なんだか昔のつらいことを思い出して息が苦しくなったり、子どもに「お母さん」と呼ばれて水面に上がらざるを得なくなったりして、あまり長いこと潜っていられない。
 
その時、「あ、ここに小ぶりだけど活きのいいナマコがいる」とハッと気づく。なかなか万人受けしない素材かもしれない。でもいいか、私らしいや。慎重に手を伸ばしてそっと採る。
 
何とかナマコをひっつかんで陸に戻り、まだ濡れた状態で調理して、あたふたと一皿にまとめに取りかかる。盛りつけにもっと慣れるといいんだけど……。
 
飾り方、盛りつけ方はある意味素材以上に重要だ。その一皿の完成度が上がるも下がるも自分の腕次第。もっと一皿の中に変化がついてストーリーが活き活きするように、ネタを数個入れてそれぞれに合わせて包丁の入れ方、飾りつけ方などもバリエーションを持たせて、変化に富んだ一皿にできればいいんだけど。
それができれば、きっと5,000字の大皿料理にもチャレンジできるはずなんだけどな……。
 
ああ、もうちょっと見直しできる時間を取れたらいいんだろうなあ。だからなかなか完成度が上がらないのかなあ。もっと早めに作って、生け花みたいにいろんな角度から見て推敲したら、完成度が上がるのかな。
本当に一皿の完成までは大変だ。元々好きでやろうとしたはずなのに、苦手意識が生まれる。でも、苦手ながらも何度もやっていると、だんだん慣れてくる。
そして潜るたびに、一皿かんせいさせるたびに、新たな発見がある。
私の海の中には意外にいろんなものがありそうだった。そして包丁裁きなども少しずつ慣れてきたような気もせんでもない。飾りつけ、変化をつけた一皿の盛りつけ方が少しわかってきたような気もする。
 
昔、人と話すのが苦手で本ばかり読んでいて、いろんなことを一人海の底で考えていた。
いや、人と一緒にいると「自分は変わっている」と思えて恥ずかしくなり、自分の海に潜った。自分の海の中は安心できた。ただ漂うだけでほっとした。その頃は将来どうするかなんて考えられなかった。いずれは人に何かを提供できるようにならなければならないと思っていたが、それができると思えないことが多かった。絶望して、人に会わないところまで深く深く潜っていったものだ。
その時に自然に海底に溜めていたものが、実は私の海に案外いろんな魅力的なものとして落っこちていることがわかった。ひょっとしたら、ウニ種苗どころか真珠貝とか見つかるかもしれない。私の探し方次第、そして盛りつけ方次第ではあるのだ。
 
人に提供できる、さらに喜ばせる一皿を作るために、私は毎週苦しい思いをすることがあっても潜っている。
そうやって潜ることが、自分のお宝を掘り起こせるかもしれない、と充実感につながっている。そしていつか「丹精込めて私が作りました!」と独自ブランドを確立した一品を提供できるようになりたい。
 
 
 
 
***
 
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2021-09-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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