メディアグランプリ

不妊検査を受けて、「これは投資だ」と思った。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:日下秀之(ライティング・ライブ大阪会場)
 
 
赤裸々な話から始まるが、2か月前から子作りを始めている。そして、「子供はまだいいかな」と考えている夫婦に伝えたいことがある。
 
「不妊検査は、人生への投資かもしれない」だ。
 
最近、ありがたいことに結婚した。自分は30歳、妻は25歳だ。結婚前から子どもの話はしていた。妻の子どもに対する希望は特に強く「最終的には3人欲しい。年齢を考えると2年以内には一人目が欲しい」という。自然と子作りを始める方向で話は進み、初月は残念ながら恵まれなかった。「まあ、そんな簡単にはいかないよね」と笑い飛ばす一方、胸の底からふつふつと「ある不安」が湧いてきた。
 
「そもそも、我々に生殖能力はあるのか?」
 
不妊検査は早めに、できれば妊活前にした方が良いと思う。世の大多数の認識は逆だろう。数か月励んでも授からない等、困ってから検査するという認識だと思う。男性は「そもそも必要なの?」と思っている人も多いかもしれない。
 
一方、我々は思った。「この超重要ライフイベントに、そんなスタンスでよいのか?」と。子育てに費やす時間やお金は莫大で、自己の実現に割ける時間はどうしても減る。もちろん、かけがえのないものも得られるだろう。どんな選択をするにせよ「子ども」が人生に与える影響は、あまりにも大きい。
 
にもかかわらず、問題が起きてから調べるのは遅すぎる気がした。自分達の身体に不具合があるのならば、1秒でも早く知っておきたいと思った。日本では6組に1組の夫婦が不妊に悩んでいる。そして、不妊の原因の約半数は、男性側だ。
 
夫婦でレディースクリニックを受診し、自分は精液検査、妻は子宮の状態と残りの卵子数を調べる検査を受けた。
 
ここで、残りの卵子数? と思った人もいるかもしれない。自分も恥ずかしながら今回初めて知ったのだが、女性は生まれた時点で卵子の数が決まっていて、そこからは減る一方だ。もちろん、女性が妊娠・出産できる年齢には限りがあるのは知っている。しかし「減る一方」は衝撃だった。放出しても身体がせっせと精子を作る男性とは全く違う。女性にとって生理が来ることは、妊娠が不可能になるタイムリミットまで、ひと月近づいたことを意味する。妊娠を望む人にとっては、それすらも小さな絶望になり得る。こんな違いからも、妊娠に対する男女の埋められない差を感じる。
 
さて、そんな出しては増える精液を検査用カップに出し、提出する。数日後、結果を聞きにクリニックを訪れた。受付でそれぞれ別の番号札を渡され、まず妻だけが呼ばれた。結果はそれぞれ聞くのかと思ったら、数分後自分も妻の診察室に呼ばれた。なんとなく、嫌な予感がした。
 
物腰柔らかなおじいちゃん先生が結果を教えてくれた。精液検査では①精液量②精子濃度③精子運動率④精子奇形率を調べ、それぞれが基準以下の値となっていないかを判断すること。
 
そして、自分の場合は、精液量と運動率が望ましい基準を下回っていること。
 
とはいえ、希望が無いというレベルではない。特に精子運動率は40%を下回ると自然妊娠が難しくなってくるが、自分の場合はボーダーの50%を若干割り込んだ48%だった。
 
ただ、改善にあたっての伸びしろが少ない。精子運動率を上げるには確立された治療法はなく、生活習慣の改善が基本となる。自分は持病もないし、タバコも吸わないし酒もほぼ飲まない。栄養面もそれなりに気を使っている。おじいちゃん先生曰く「高血圧や糖尿病、飲酒や喫煙習慣があれば改善が期待できるんだけど、理想的な生活してるねぇ」と褒められた。いつもなら嬉しいがこの日ばかりは嬉しくない。
 
妻の子宮から採取したサンプルの拡大写真を見せてもらった。元気な精子が多ければ、少なくとも10匹以上の精子が映っているらしい。写真を見ると、何とかたどり着いた2匹の精子が息絶えていた。南無南無。
 
唯一改善できそうなのが運動不足だった。運動は通勤時間の駅までの数分間のみ。仕事もデスクワークで、妻からは最近ムニムニしてきたお腹をつままれていた。ランニングを始めようとして「お気に入りのシューズが見つからない」を言い訳に1年間先延ばしにしていた男が、診察1時間後にはAmazonの購入ボタンを押していた。選定理由はデザインでもカラーでもなく、価格と納期。危機を感じると、人はびっくりするくらい早く動く。ちなみに今日も朝走った。
 
「お前の精子は半分以上死んでいる」と言われたことはそれなりにショックだったが、早めに知れて良かったと思うし、気づいたこともある。実をいうと「本当に子どもが欲しいのか?」と自問自答したときに、素直に”はい”を言えない自分がいた。どうしても子育ての負の側面を想像してしまっていた。今回の結果がショックだったからこそ「やっぱり子どもが欲しいんだな」とわかった。
 
少なくとも今回の人生では、妻と一緒にお爺ちゃんお婆ちゃんになって、手をつないで桜並木をお散歩する予定だ。やはりその時には孫にお小遣いをあげたい。そうなると、孫を連れてきてくれる我が子が必要だ。
 
今後は、一旦通常通りの妊活をしながら、状況によって体外受精等も考えることになる。実は、妻も思った以上に卵子数が少ないことがわかった。もし、子作りのタイミングが数年後ろ倒しになっていたら、状況はもっと悪かったかもしれない。
 
結婚直後で妊活初期の今だったから、大きな焦りも無く、人生の選択肢を減らさずに過ごせている。生活習慣の維持もできるし、高額な不妊治療への備えもできる。もう少し稼ぐ必要があるなら仕事へのやる気も出る。何なら運動不足も解消してますます健康になる。福利効果が凄い。
 
女性は結婚前後に不妊検査を受ける人も多いが、男性で早いうちに精液検査をする人は稀どころか、自分の周りでは見たことが無い。「子供はもう少し先……」と思っているあなた。今のうちに、精液検査くらいはしてもいいのではないか。せいぜい数千円から一万円。早く行っておけばその分選択肢が広がる。先々へのちょっとした投資みたいなものだ。
 
どうか、全ての夫婦が望んだ形で幸せな家庭を築けますように。
 
P.S. 病院によっては「妊活初期に不妊検査を行う必要は無い」と考えている病院もある。妊活前の不妊検査(「ブライダルチェック」等の名称で実施している)を行っている病院か、事前に確認して相談することをお勧めする。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



関連記事