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メディアグランプリ

高い授業料を払って学んだこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:もちだみお(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
「ハ、ア〜ン」
「フ、ウ〜ン」
小さく区切られた個室から、女性の声が漏れる。
「ううう」
そこに、男性の苦しげな声も混ざる。
小さく区切られた部屋の中で一体どんなことが行われているのだろう。ちょっと怖い。
 
「結構声が漏れますね。大丈夫ですからね。一緒に頑張りましょう!」
私の前を歩くTシャツ姿の男性は、そう言ってはちきれんばかりの上腕二頭筋でガッツポーズを作った。あ、シャツの袖が破れそう。
 
ここは、とあるパーソナルトレーニングジム。
数年前の夏、どうしても下っ腹を引っ込めたかった私は、「結果にコミットする」パーソナルジムの隣駅にある、もう少しだけ安価なパーソナルジムの体験にやってきたのだ。
 
私には、どうしても下腹をへこませないとならない理由があった。
手術である。
 
その年の秋に腹腔鏡手術の予定を控えた私は、とっても心配だった。この分厚い下腹の脂肪を、ちゃんとカテーテルが貫通できるかが……。
 
そんな話をしたら、みんな笑った。「当たり前やん。できへんわけ、ないやん」
だが、私は本当に本当に、ただただ心配だったのだ。
「腹腔鏡の予定でしたが、脂肪が邪魔でカテーテルが貫通しなかったので、開腹手術に切り替えました」とか言われたら、どうしよう。恥ずかしいにも程がある。
 
ネットでも調べてみた。そしたら「肥満の場合は、特別なメスを使う場合も……」なんて感じのことが書いてあった。肥満の程度はわからないが、私はその「特別なメス」が怖かった。
 
そんな得体の知れないものを使われてなるものか! と、私は下腹を引っ込めることにしたのだ。
 
さて、どうやって引っ込めようか。私は考えた。
どうせ痩せるなら、辛くなくて綺麗に痩せるのがいい。そういえば、最近は某パーソナルジムが流行りらしい。そこに入会すると、二ヶ月で痩せるらしい。それに「糖質制限」と言って、炭水化物であるご飯やパンは食べてはいけないが、タンパク質である肉や脂質であるチーズや油は、ガンガン摂取していいらしい。タレントさんや経済学者さんなんかもコマーシャルに出て、素敵なビフォーアフターを見せてくれている。
ただ、お高い……。
それに、そこに行ってきた、って言うのも、なんとなく恥ずかしいし、それで痩せなかったら、もっと恥ずかしい。
 
そこで、同じコンセプトで少し安くて当時あまり知名度が高くなかった、別のパーソナルジムを見つけて、とりあえず体験することにしたのだ。
 
「ぐああああ!」という、人間の喉からでる声とは思えないような音がする部屋の隣の部屋に案内されて、「そこにかけて、少しお待ちくださいね。」と、上腕二頭筋は爽やかな笑顔で出て行った。部屋には、見た事のない筋トレ器具とエアロバイク、それから簡素な机と椅子がある。落ち着かない気持ちで椅子に腰掛けて待っていると、先程の上腕二頭筋とは別の、銀縁メガネがとっても知的なマッチョマンがやってきた。店長さんである。
「さて、それでは早速カウンセリングに入りましょう」
そして、なぜ痩せたいのか、いつまでに痩せたいのか、目標体重はどれくらいか、など、軽く聞かれた。
「では、普段の食生活を教えてください」
「えーっと、朝はトーストを一枚とコーヒーと、目玉焼きと野菜ジュース。昼はカップ麺とかパンとか。夜はちゃんと一汁三菜を目指しています」
「なるほど、なるほど」
そして、店長さんは紙に、私が言ったメニューを書いていった。
 
「食パンのタンパク質が約6g、目玉焼きが6.5g、カップ麺が10g、そして、晩ごはんにとんかつを食べたとしたら26gくらい。合計すると、50g弱ですね」
すごい。食品のタンパク質量が頭に入ってるんだ。
「ところで、今あなたが必要なタンパク質量がどれくらいかわかりますか?」
「いいえ、わかりません。見当もつきません」と、私は答えた。
「体重を1000で割って、その1.5倍〜2倍です」
え、全然足りない。
「ですから、毎食20gずつくらいのタンパク質が必要なんです」
へ〜、そうなのか。
「そして、炭水化物をなるべく減らさないといけません」
「この食事法と筋トレを組み合わせれば、体重を落とすのなんてカンタンです!」
銀縁メガネを光らせて、店長さんは請け合ってくれた。
私は契約のハンコを押した。
 
そして、私のダイエット生活が始まった。
朝、プロテインを飲む。昼、サラダチキンを食べる。夜、サバ缶を食べる。寝る前にプロテインを飲む。そして、野菜を食べる。
ご飯は食べない。パンは「低糖質パン」と書かれているものしか食べない。麺類は食べない。これだけで、スルスルと2キロくらいの体重が落ちた。糖質制限って、本当に効果があるんだと実感した。
 
週に2回ジムに通い、「うああああああ!」と叫びながらバーベルを持ち上げ、「あー。もう辛い!」と言いながらスクワットをした。
 
トレーナーさんとは、「B’z好き」という共通の趣味があったので、会話はとても楽しかったのだが、ニコニコしながら「はい、では腕立て30回」とか言ってきて、鬼だと思った。
 
体型に少し変化が出てきたのは1ヶ月を過ぎた頃だった。気を良くした私は、しかし、禁を破って少しずつ炭水化物に手を伸ばしてしまうようになった。
大好きな塩豆大福を半分食べ、「あと半分食べたってそう変わらんよね」と言い訳しながら、全部食べた。
白いご飯にも手を出してしまった。
試食しないわけにはいかない、と言い訳しつつ、パン教室で作るパンも食べた。
 
体重の変化は緩くなってしまったが、それでも少しずつは減っていった。だから、多少は食べたって大丈夫! と解釈した。自分に甘い。
 
そして2ヶ月が経った。
最終日、体重は約4キロ減って、腹は少し凹んだ。きっとカテーテルも通るに違いないと思われた。目標は達成である。
 
私は、この腹を維持して手術に臨んだ。手術は無事に成功して、入院している間に、3キロくらい体重が減った。なんだ、入院したら体重減るんじゃん。ダイエットって簡単じゃん。
 
だが、入院中に体重が減ったのは、使わない筋肉が落ちたからであって、普段の生活になったら、注意しているつもりでも、すぐに入院前の体重に戻った。そしてその頃は、もう好きなものを好きなように食べる、ジムに行く前の生活が普通になっていたので、これまたすぐに、ジムへ通い始める前の体重以上に戻ってしまった。あ〜あ。
 
結局、ダイエットって継続しないとダメなのだ。炭水化物抜きをやめて、筋トレをやめて、自分に甘い生活に戻ったら、元の木阿弥なんだな、と痛感した。
 
今、私は軽い筋トレと栄養バランスを考えた食事でゆるゆるとダイエットをしている。3ヶ月で約5キロくらい体重が落ちた。あれ?ジムに通ってた時より確実に落ちてるじゃん。
 
少し考えながら普段の生活を継続すれば、きっと健康でいられるんだな、と高い授業料を払って、私は学んだのである。
 
 
 
 
***
 
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2021-10-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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