メディアグランプリ

ある漫画を読んで「自分きれい」と思うのがおかしいことじゃないと安心した話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:井上 春花(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
私は結構、電子書籍を愛用している。
 
理由その1。
夫が本をどんどん買ってくるので、狭い我が家の物理的スペースは私が我慢するほかない。
 
理由その2。
防水の端末なら、お風呂で読書ができる。
これはなかなか紙の本にないメリットだと思う。読書がはかどるシーン「電車通勤」がない方には、ぜひお勧めしたい。
 
理由その3。
ワンクリックで買えてしまう。
ここが便利さと浪費の諸刃の剣なのだが……。ネットサーフィン中にちょっと興味がわいた本など、つい流れで買ってしまう。サンプルも大体読めるので、読んでしまったが最後、「ポチリ」とやってしまう。
 
そんな理由で、特に巻数がかさんで続きが気になってしまう漫画は、最近ほとんどKindleで済ませていた。
でも、悩んだ末……。ついに紙の本を買い求めてしまったエッセイ漫画がある。
しかも、連載中は無料配信サービスで読めていたのに。今でも読めるのに。
 
竹内佐千子さんの「沼の中で不惑を迎えます。 輝くな! アラフォーおっかけレズビアン!」に出会ったのは、Twitterのタイムライン。フォローしているライターさんが「おもしろいから絶対読んで!」とリツイートしていた。
そうかそうかとクリックすると……
 
絶妙におもしろいシュールな絵柄。
繊細かつオフビートな笑い。
重箱の隅をつつくような共感。
一話に一個は登場する爆笑のパワーワード。
一話に一個は登場する胸をえぐるパワーワード。
 
もう、離れられなくなった。
集英社のウェブメディア「よみタイ」の人気連載は、その時いくつかのエピソードが配信済み。
真夏の喉を潤すスポーツドリンクのように、既出の7話分を一気に読み切り、細胞レベルで吸収した。その後も、更新されるたびにすぐに読んだ。
 
同年代とはいえ、竹内さんと私では、境遇が全く違う。
アラフォー、独身、実家暮らし、オタク、漫画家、元バンギャ。
並べてみると、「アラフォー」しか一緒じゃないかも。
 
(あっ、今気が付きましたが、「レズビアン」を入れるのを忘れた。それくらい、竹内さんを語る上で、それが大きな特徴ではないのです。)
 
竹内さんの対話相手役として登場する編集者「エイチ」さんに、境遇はむしろ近い。
アラフォー、既婚、子持ち、地方出身、オタクへの理解はあるが自分は恐れ多くてオタクと名乗れない、会社員。
並べると、近い。
 
だが、私は竹内さんに感情移入していく。エイチさんは、なんというか、変わっていて面白い、お話のスパイスのような人なのだ。
 
何にそこまで共感できるのか。
 
竹内さんは惑う。
竹内さんは中年。
竹内さんは小心者。
竹内さんはマイペース。
竹内さんは生きてるから考えが変わる。
竹内さんの生活は規則正しい。
竹内さんの家族は面白いけど普通。
竹内さんの自己肯定感は鬼高い。
 
うん。色々あるけど、私が竹内さんを決定的に好きになったのは、最後の自己肯定感の高さだ。竹内さんは堂々と「自分はきれいだ」と言う。
 
実は私も人には言えないけど……。
少なくとも日本では言えないと思っているけど……。
(外国だと言えるのか、それは外国に住んだことがないから分かりません。)
 
自分のことを、今が一番きれいだと思っている。
この際なので言うけど、マジで思っている。
 
今が今までで一番年を取っているのに。
家にいて化粧もしないのに。
白髪もあるのに。
ほうれい線も出てきているのに。
体重なんて若い時から10キロも増えているのに!!
 
でも、毎朝、洗面台の鏡に映る自分はきれいだと思う。
 
この本の中の竹内さんもボソッと言うのだが、客観的に見てそうじゃないことは分かっている。だから、顔の小さな人の隣で写真に写りたくないし、そもそも写真に写りたくないし、水着を着て海に行きたくもない。
 
不思議なのは、「うちの洗面台の鏡」に映る自分だけがきれいなこと。
 
ひとたび、外に出て雑踏の中でお店のガラスなんかに映る自分を見ると、
「あーいやだ。おーいやだ。」
と独り言ちる。
 
つまり。
美醜についての悩みは、比較が原因なのだ。
本当は、そんな客観的評価よりも主観的評価が必要なのではないか。むしろ、それだけが圧倒的に必要なのではないか。
 
客観的評価は強力で、負けないためには、相応の鍛錬が必要だ。私もそれには負けている。完敗である。「美人に生まれればなあ……」と思うことも数知れず。
でも、「自分きれい」と思う気持ちも本当なのだ。
この二つの思いは両立する。相反するものではない。
「写真写り悪~い」と感じる人、それでいいじゃありませんか。あなたはあなたが思うように美しいのです。
 
「な~んだ。自分がきれいに見える鏡を、一つ持っていれば十分じゃないか。」
 
このエピソードを読んで、涙が出るほどの笑いと共に、なんだか清々しく爽やかな気持ちになった。
 
これは、この漫画の素晴らしさのほんの一部だ。いつでも好きなエピソードをパッと取り出したくて、私は本を買った。
いつも笑えるし、どこを読んでも元気になる。
電子書籍を選択できる今、「常備薬」みたいな作品を、私は選んで手元に置いている。
 
帯には「全アラフォー必読の書」と書かれているが、年齢問わず、性別問わず、趣味嗜好問わず、読んでみてほしいなと思う。
ちなみに、夫に警鐘を鳴らす意味も込めて、あるエピソードのURLを送ったら……
「こわい」
とだけ、感想が返ってきた。妻の心がどんなふうに離れていくか、覗いてみたい人はぜひどうぞ。
 
 
 
 
***
 
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2021-10-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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