メディアグランプリ

左腕に宿る宇宙


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:島田惇史(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「今年1年頑張ったし、自分へのご褒美だ」
 
6年前の12月の出来事。クリスマス前に賑わっているショッピングモールにて。
ふと目についたものがあった。
 
腕時計である。
自分自身、腕時計はスーツを着る時に身につける程度であったが、今目の前にある腕時計には心惹かれていた。
 
まだ12月の頭だったのでクリスマスには早かったが、いざ欲しい時に完売しては困るし後悔するから今買おうと思い、2つあるうち、安い方を自分は気に入ったのでそちらを購入した。
 
自分はとても満足。時計を着けて帰りますかと言われた、即答で「はい!」と答えた。
そして、会計を済ませている時のことであった。
 
「そういえば、この上のモデル。高校生がこの前買っていましたね」
 
「え?今言う、それ」
 
自分は20代後半。あと少しで30歳になるお年頃。自分より年下の高校生が自分より上のモデルの腕時計を買っていた事実を知り、何とも言えない複雑な気持ちになった。自分の中の心の叫びが思わず、外に漏れ出そうになった。店員さんに言おうかと思ったが、引っ込み思案な性格から勇気がなく、店を去った。
 
「値段じゃないんだよ、値段じゃ」
 
と自分に言い聞かすものの、今でもその時買った腕時計を見ると苦い思い出を思い出す。
 
帰り道、ふと大学の先輩方と居酒屋で飲んでいた時の話を思い出した。
 
「これかっこいいでしょ」
 
その時は、
 
「いやいや、先輩だから買えるんです!」
 
その時計は後から調べてみると60万円もする腕時計であった。自分には到底届かない物であったし、なによりそこまでの良さが分からなかった。
 
しかし、ここに来て自分もここまでの額には手は届かいないが、いわゆる教養的な意味合いで高級時計の世界を知るのも良いのではないかと思った。
 
腕時計を身に付ける理由を聞かれると、
①仕事のため
②時計が好きだし、かっこいいから
③自分のステータスとして
④大人のたしなみとして
 
と考えている人が多いと思う。
 
いざ腕時計を探してみると、これが100万もするのかと驚かされる物もあった。
ロレックスやブルガリなどは自分には、難しい。店員から話しかけられるも、それも高いものばかりであまり話が頭に入って来ない。
 
「この時計の文字盤綺麗ですよね。中が見える構造はハートビートって言いまして、文字盤の一部が空いていて、中の機械が見える構造にしているのはこのブランドから始まったんですよ」
 
その時計はフレデリック・コンスタント。
 
一目惚れした。シンプルなデザインと綺麗な文字盤。なにより時計の持っている歴史に心ひかれる物があった。値段もそこまで高くなく自分でも届く範囲の物。その時は買わなかったものの、ずっと心の中であの時計のことを思っていた。数日後その時計を購入。
初めての高額商品の購入に自分のハートビートも高まっていた。
 
今まで腕時計を身につける習慣のない自分にとって、左腕に光る腕時計を見ると、ついにやけてしまう。決して高額だからではないと思う。今までにないくらい真剣に悩みどうするか考えた結果でもあると感じる。
 
時間や日付の確認という単純な内容であるかも知れないが、とても重要であるし、分からないととても困る。時間の確認はスマホで十分と考え、腕時計を持たない人もいる。ただスマホだと、時間の確認だけするつもりがメールやらネットニュースやら、はたまたゲームやら気になる要素が数多く含まれている。一々バックから取り出す手間もある。その点、腕時計はシンプルに自分の知りたい情報をすぐに正確に伝えてくれる。アップルウォッチの様な、スマホと連動したスマートウォッチは日時以上の情報を必要最小限に伝えてくれる。
 
そして、腕時計には、それぞれがもっている歴史や思い出が詰まっている。
フレデリック・コンスタントには、文字盤が一部開いており中が見える構造を初めて作ったという歴史がある。あるいは誕生日や恋人からでプレゼントしてもらったという思い出もある。私の様に苦い思い出もあるかもしれない。
 
また、時計によって、誰かと話をする際の話題もなるかもしれない。腕時計好きな人からすれば、この時計どこのですか、とか良い時計ですねと言われて喜ばない訳がない。そこから買った経緯やその時計の持っている歴史を教えてもらい話が広がるかもしれない。同じブランドの時計をしている人がいれば更に会話に熱が加わり時間を忘れるくらい話が盛り上がるかも知れない。
 
以前患者さんが自分と同じ時計をしていたことがあった。ひと目見た瞬間に口下手な自分が時計についての話題を振っていた。好きな時計の話題ともなれば話もできるし、それまで世間話をしなかった相手も嬉しそうに話してくれた。
 
私にとって腕時計は宇宙だ。
 
時間を把握するだけでなく、腕時計のもつ歴史や思い出。そして人との出会い、コミュニケーションツールにもなり、今まで話せなかった人とも気さくに話せるといった無限の可能性を秘めている。
 
さあ、腕時計をつけて今日も出かけよう。そして多くの宇宙を発見してみよう。
 
 
 
 
***
 
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2021-10-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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