私たちはいい子ちゃんだから、悪口を言う
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:ねこぱすた(ライティング・ライブ東京会場)
「大変申し訳ございませんでした」
本当は申し訳ないなんて1ミリも思っていないんだけどね、私もいい大人だから頭を下げたんだよ。全然私のミスではないけど、とりあえず、頭を下げたの!
私は絶対に悪くないのに、なんで、謝らなきゃいけないの?
でもね、我慢したの。だって私は、社会人だから。
確かに私が、上司があの書類を取引先に提出する前に奪い取って確認しておけばよかったの。そうすれば、今回のミスは起きなかったの。だから、確かに私のせいなのかもしれないよ。いや、もちろん、上司の書類をわざわざ確認する部下なんていないんだけどさ。
それから、謝る場にその「上司」がいないのが一番ムカつくよね。あの上司、たぶん休憩室でコーヒーでも飲みながらスマホゲームをしてたに決まってる。
あ〜ほんと、イライラする。
どうして私が、アイツの代わりに謝って、アイツのミスをカバーしなきゃならないの?これも、社会人の仕事なの?まじムカつく!!
これは、とある金曜の夜、久しぶりに集まった友人とお酒を飲みながら交わした「悪口」の一部始終である。
この日の私は、「悪口」が止まらなかった。
というのも、自分のミスではない上司のミスのために怒られ、たくさん頭を下げさせられたのだ。悪口くらい言わないとやっていけない。
上司の悪口、彼氏の悪口、旦那の悪口…私たち(特に女性)は、昼はカフェで、夜は居酒屋で、「悪口」が止まらない特性を持っている。
このスキルは、全ての人類(特に女性)が持ち合わせているのではないかと私は思っている。
悪口は、いい酒の肴にもなる。
たぶん、私たちは他人の「私はこんないいことがあった」なんていう幸せ話には全く興味がなくて、人の不幸話がとにかく大好きなんだろう。悪口はすなわち自分の不幸話でもある。だから、悪口兼不幸話は、話している側も聞いている側も心地よいのだ。
ある意味、WIn -WInとも言える。
しかし、私たちは小さいころから「悪口を言ってはいけません」と言われて育ってきた。
たしか、小学生の時の交換ノートに、「最近あった嫌なこと」として「〇〇くんに嫌なことをされた」と書いただけで校長室に呼び出されたこともある。悪口は、絶対に「文書」に残してはいけないとそのとき学んだ気がする。
悪口は良くないと、これほど言われてきたのに、どうして私たちは悪口が止められないのだろうか?
この疑問を解決してくれたのは、私の大学時代の友人だ。彼女は、私の悪口を聞いた後、一切の嫌味なく、こう返した。
「あんたは本当にいい子ちゃんだね。いい子ちゃんだから、上司の悪口がたくさん出てくるんだね。」
どういうこと?
と思ったが、どうやら、わたしは「いい子ちゃん」らしい。
というのも、私たちは悪口を言いたい対象(ここでは、「アイツ」と呼ぶことにする)のことを、心の底から嫌ってはいるわけではない場合が多いらしい。
心のどこかでは相手を尊敬している部分があったり、羨ましいと思う部分、本当はもっと仲良くなりたい気持ちがあったりするという。
だから私たちは、そんな「アイツ」に対するネガティブな感情は、ずっと持ち合わせていたくはないのだ。
小さい頃から「悪口はよくない」と言われてきたが、私たちはそれをちゃんと覚えていて、「アイツに対してイライラしてちゃいけない、どこかに発散しなければ」と思っているようだ。
言われてみれば、確かに私もそうだ。
冒頭で、散々「アイツ」の悪口を述べたが、尊敬している部分もある。上司としてたくさん教わってきたことがあって、感謝もしている。もちろん、治して欲しいところもたくさんあるが、まだしばらくは私の上司でいてくれないとたぶん、困る。
嫌いな「アイツ」に関して、本当は心のどこかで尊敬しているなんて、にわかに信じがたいかもしれない。しかし、私たちは本当に相手に興味がなかったら、イライラすらしないのである。
イライラも大事な感情で、エネルギーを使う。
何の興味もない「アイツ」に対して大切なエネルギーを使うほど、人間も暇ではない。
私たちは、いい子ちゃんだから悪口を言ってしまう。
「相手への「イライラ」をどうにかして手放したいからこそ、悪口は仕方のないものなんだよ」
友人は、続けてこんな話をしてくれた。
「でもね、イライラも大事なエネルギーだから、たまには取っておかないともったいないよ」
「どういうこと?」
「上司へのイライラは仕事の大事なエネルギー源になるの。アイツなんか超えてやる、アイツなんかぎゃふんと言わせてやる。こういう負のエネルギー以上に、私たちをモチベートしてくれるものって、意外と少ないんだよ」
なるほど、と思った。
私たちは、いい子ちゃんだから悪口を言う。悪口はいい酒の肴になるし、今さら「悪口を言ってはいけません」と伝えたところで、誰も聞く耳を持たないだろう。
けど、イライラした感情は大事な原動力で、ただ飲みの場のネタとして消費してしまってはもったいない節もあるということを、私は覚えておきたい。
***
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