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パワハラ、だけど愛してた。


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:関根夏歩(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
「俺はそいつが本気かそうじゃないかなんて見ればわかる。また同じことしたらわかるよな。やり直し」
 
これが最初の会話だった。
 
 
午後1時の学校のグラウンド、体育の授業中、
その日は大嫌いな長距離走だった。
 
私は、体を動かすことが苦手でも嫌いなわけでもない。むしろ大好きである。
バスケットボール部に所属し、走り込みをしていたので周りの子に比べても体力はある方だった。
それでも長距離走が大嫌いだった。
 
バスケットボールは相手が存在して、攻守の切り分けが早くてスピード感もある。さらに周りを見てどう動くかなど絶えず考えて行動する必要があり、頭を使うので楽しい。
しかし走ると言う行為そのものは、楽しい、という感情が一切なく、向き合うのは自分自身の心の中だけ。
「きつい、辛い、はやく終われ」
と言う負の感情がゴールするまで頭の中をエンドレスリピート。全く楽しくなかった。
 
だから、変わらずにあの日も友達と話をしながらゆっくり走っていた。
 
グラウンドを5周と言うノルマをダラダラと走って、最後尾にいた子と一緒にゴールした。
すると目の前にやってきて冒頭の言葉で怒られ、走り直し。
天邪鬼な私は、
「そんな大して私たちのことも知らないくせに本気出しているかなんてわかるかよ」
 
と思って2回目は少しだけ真面目なふりをして取り組むも、変わらずにダラダラと走っていた。
 
 
今でも忘れられないのが、2回目のゴールの瞬間。
ツカツカと大股でやってきたかと思うと、
 
「大人を舐めてんのか?」
 
そう言って頭を殴られた。
 
そして、ひとこと。
 
「もう一回、走ってこい」
 
最後の5周は殴られたことが衝撃すぎて頭の中が真っ白で気づけば走り終わっていた。
そうして計15周でやっと終わった私の長距離走。
 
とんでもない先生がやってきたと思った。
 
中学2年生、新学期と共にやってきた先生は私たちの学年の主任と、さらには私の所属する部活動の顧問になった。
これから地獄の時間が続いていく絶望に襲われた。
 
しかし先生のことが大嫌いだったのはたったの数日で、気がつけば学校中のどの先生よりも大好きになっていた。
部活動で長い時間を過ごす中で先生への印象が変わっていった。
 
私がたったの14年で出会ってきた大人は周りの目ばかりを気にして、自分の感情で人を振り回し、毎日楽しそうには見えなかった。
 
しかし、先生は違った。
 
何事にも全力で取り組んでいて、好きなものがたくさんあり人生が楽しそうだった。
おしゃれが大好きで自分の好きなものやこだわりの持ち物を満面の笑みでいっつも楽しそうに話していた。
人に無意味にあたることはなく、怒る時はちゃんと理由があった。行為に対して怒り、人に対して否定的な発言を一切言わない人だった。
 
誰よりも、真っ直ぐな人であんなに裏表がない大人は初めてだった。
大人って捨てたもんじゃないと思わせてくれた大切な人だった。
 
 
 
当時、連日ニュースで問題になっていたのは学校や部活動での体罰についてだった。
確かに詳細をみると、執拗に暴力をふるっていたり、生徒の人格を否定するような暴言を吐いていたり、目も耳も塞ぎたくなるような事実ばかりだった。
 
それじゃあ先生が私を殴ったことは体罰なのか、と言われたら
周りがなんと言おうと、私は体罰ではないと思っている。
 
 
人に危害を加えることがいいことではないのはわかっている。手を出さずに解決する方法なんていくらでもあると言うことも。
しかし、私が先生から受けたいくつかの鉄拳は全てに自分の態度に非があり、理由があった。
 
実を言うと先生は他の生徒にも同じ態度をとる人だったので、素行が悪い生徒に同じ指導をしたら、その保護者には教育委員会に訴えられたこともある。
 
受け取る側の捉え方で事実は変わることを知った。
 
事実は1つでもそれを見る角度が変われば捉え方も変わる。
 
1番重要なのは当事者がどう感じているか、何を思ったか。なんだと思った。
 
 
だから最近、思うことがある。
芸能人のスキャンダルや、不祥事がニュースで報道されるや否や、
当事者よりも関係のない人たちががうるさいのはなんだろう。
 
昔よりネットが発達し、SNSなどを通じて誰でも自分の意見を発信することができるようになってきた。
 
当事者でない限り、それは雑音でしかない。夏に鬱陶しく感じる蝉の鳴き声みたいだ。
 
問題は当事者同士でしか解決できない。
 
そう言いなから、私も友達から何かを相談された時に真っ先に自分の意見を伝えてしまう。私よ、当事者の意見が1番だと言うことを肝に銘じよ。
 
 
 
***
 
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2021-11-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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