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断るのは礼儀かもしれないという話


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記事:mihana(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
私は、断るのが苦手だ。
 
仕事でもプライベートでも、相手がどう思うかを気にしすぎて、ついイエスと応えたり、返事を先延ばしにしてしまったりすることが多い。
 
先日、私は31歳の誕生日を迎えたのだが、その日、10年来の友人と会う約束をしていた。しかし、約束の3日前に、あろうことか、私は体調を崩してしまった。
 
最初は、「せっかく約束したのに、行かないなんて申し訳ない。多少調子が悪くても、そのまま行こう」と思っていたのだが、その決断を嘲笑うかのように、前日の夜になって、体調は更に悪化した。
 
「このままじゃ行けないな……」
心の中では、「当日の朝には治るかも」と希望も持ったが、望みは薄い。友人に嫌われるかもしれないと心配しながら、私は決死の思いで電話をかけて、明日の約束をキャンセルしたいと伝えた。
 
友人は「大丈夫?お大事にね」と言うだけだった。特に不満を言われることもなく電話は終わり、私は安堵したが、同時に「直前にキャンセルなんて、失礼なことしちゃったかな?」とか、「約束したのに、本当に申し訳ないな……」とか、いろいろ考えて、不安になってしまった。
 
そして迎えた、誕生日当日。彼女から連絡が来て、びっくりした。私が好きなキャラクターがケーキを持っている絵を描いて、画像を送ってくれたのだ。絵の下には、「はやくよくなってね」と、メッセージも書いてある。とても嬉しくて、思わず涙ぐんでしまった。友人は誕生日を祝ってくれたし、私の体調も心配してくれていた。
 
危惧していたことは、何一つ起こらなかった。一人で勝手に妄想を膨らませて、自分を悪者のように責めていた。考えてみれば、体調が悪いならば、行かない方がいいのは、当たり前のことだ。相手だって、体調が悪い人と遊びに行っても、心配だし楽しめないだろう。
 
実は私は、その友人から、2度ほど当日に、予定を断られたことがある。1度目は、体調が悪いと言う理由だったが、2度目は、大雨が降っているから、という理由だった(その後、雨はすぐに止み、雲一つない快晴になったが、結局その日は会わなかった)。
 
さすがに、2回目の雨の時には、「雨でキャンセルなんて!」と思い、私も驚いた。しかし友人には、確固たるポリシーがあるように感じられる。それは、「自分を大切する」ということだ。友人は、「雨だから行きたくない」という思いに、忠実に行動している。怒りどころか、私は尊敬の念すら覚えた。
 
「自分を大切にする」ということは、簡単なようで、なかなか難しい。それは、「人によく思われたい」という思いと、心の中で格闘しなければならないからだ。
 
日本人はよく、「ノーと言えないイエスマン」であると言われる。それはきっと、自分の発言を相手がどう受け取るかを、過剰に気にするからだ。
 
「断ったら、嫌われるのではないか」
「断ったら、次は誘われなくなるんじゃないか」
 
確かに、断ったら嫌われるかもしれないし、次はないかもしれない。ただ、一番大事なはずの、「自分を犠牲にしていないか?」という視点が、そこには欠けている。
 
断ったときにどう思われるかは、自分が関与できる問題ではない。それは相手の問題だ。最低限、波風を立てないように、できるだけ相手に配慮をして断ることしか、自分にはできない。相手がどう思うかに関して、自分は無力だ。
 
私は以前、友人に雨で予定をキャンセルされた時、驚きはしたし、確かに残念だとも思った。しかし、「もう二度と会わない!」と思ったわけではなかったし、実現しなかったが、今回の誕生日だって、その友人と過ごすつもりだったのだ。
 
そもそも相手だって、「行きたくない」と思っている人と出かけたくないだろうし、自分が「行きたくない」と思っているのに出かけるのは、自分に失礼だ。つまり、断ることは、相手への礼儀でもあり、自分への礼儀でもある。
 
人と人との関係は、縁があれば、繋がっていくものだし、なければ、それっきりということもある。過度に印象を気にしすぎて、自分を押し殺してはならない。
 
自分を押し殺すと、相手への不満が貯まり、きっといつか態度に出る。そして、相手との不和に繋がる。その悪循環を断ち切る意味でも、もちろん言い方には配慮しながらも、自分の気持ちを正直に伝えることは大切だ。
 
31歳は、悲しくも体調不良からのスタートとなったが、相手だけでなく、自分への礼儀も大切に、良い1年を過ごしたいと、私は思いを新たにしている。
 
 
 
 
***
 
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2021-11-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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