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日本人には理解し難い、年に一度訪れるアメリカ中が熱狂する日


*この記事は、「実践ライティング特別講座」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

「実践ライティング特別講座」文章を書く前にするべき7つのこと

記事:山田THX将治(実践ライティング特別講座)
 
 
『一年365日の中で、日本人が最も多く誕生日を迎える日は?』
不思議なクイズが出された。答えは『12月25日』だ。
理由は、クリスマスだからではない。年末年始の出産が何かと大変なことと、
日本独特の年末調整によるものだ。世帯主には、扶養者控除制度が有る。家族を養う為として、その分の所得控除が為される制度だ。
例外として、新生児についての項目が有る。それは、例え一日でも生まれ年全体の控除の対象と為るのだ。即ち、元日に生まれた子供も、大晦日に生まれた子供も、同じく一年分の控除対象と為るのだ。
押し詰まった時期に生まれた子供は、それだけで親孝行をしたことに為るのだ。
そしてその為、年末に生まれる子供が多くなっているのだ。
 
 
では、こんな問題は如何だろう。
『アメリカで、最も宅配ピザが注文される日は?』
多くのアメリカ人は即答出来るし、理由を聞けば誰もが納得出来る答えだ。
殆どの日本人は、想像も出来ないと思うのでヒントを。
『その日は、アメリカの多くの街がゴーストタウン化します』
『その前日は、スーパーのビールの棚が空っぽになることがあります』
ここまでは、何となく関連が有りそうだ。では、ヒントをもう一つ。
『その日の夕刻、水道局の局員に緊張が走ります』
もうこうなると、多くのアメリカ人以外は、頭が混乱してしまうことだろう。
 
このクイズの答えは、『毎年2月の第一日曜日』だ。
その日は、NFL(National Football League、アメリカン・フットボールのプロリーグ)の頂上決戦“スーパーボウル(Super Bowl)”が行われる日だからだ。
アメリカ中の家庭で、スーパーボウルがテレビ観戦される。ビールが多く消費されるし、簡単に片手で食べることが出来るピザは最適だ。しかも、試合に夢中になると、いちいちオーブンでピザを焼いている暇はない。当然、宅配ピザ頼りと為るので、一年で最もピザ屋さんが忙しくなるのだ。
今回、英語のスペルを表記したのは、日本人の多くはスーパーボウルという言葉を聞いたことがあっても、‘スーパーボール’と発音するケースが多いからだ。
ボウル(Bowl)は、ボウリングと同じ語源で食器のボウル状に為った競技場で行われるということを意味する。特にアメリカでは、アメリカン・フットボールの試合を“〇〇ボウル”という形で呼んでいる。
NFLの頂上決戦は、よく弾む“ボール(ball)”では無いのだ。
 
 
では何故アメリカ国民は、ここまでアメリカン・フットボールに熱狂するのだろう。
一つの事実として、国の歴史の浅さが考えられる。
アメリカ合衆国は、1776年7月4日に独立宣言をしている。日本では江戸時代だが、その100年後には明治維新が起こっている時代だ。
アメリカ合衆国の歴史は、今年で建国245年でしかない。
4千年の歴史が有る中国を始め、日本や英国と比べて格段に国としての歴史が浅い。
この為か、自国で出来た文化を非常に大事にする。自国文化を大事にするのは、どこの国でも同じだと思うがアメリカの場合、自己主張が強い国民性からか、比較的‘大切さ’を強調しているように感じてならない。
 
スポーツでも同じだ。
しかも、スポーツを芸術や小説と同じ文化として捉える志向は、西洋社会なので当然強い。そしてアメリカでは、ヨーロッパ発祥の文化を、自国なりにオリジナリティを加える傾向もある。
それ等の代表として、アメリカ発祥のスポーツ競技が多く存在する。
中でも、ベイスボール(野球)は、“ナショナル・パスタイム(National pastime、国民的娯楽の意)”と言われる程、全土に広がり国内外への主張と為っている。これだって、英国発祥のクリケットをルールと用具を変更することによってベイスボールにしたのだ。
 
アメリカン・フットボールも同様だ。
これは余談だが、フットボール(蹴球)の代表でもある“サッカー”という呼び名は、日本とアメリカでしか通じない競技名だ。
殆どの国では、サッカーのことは単にフットボールで通じる。
日本の場合、フットボールの和名を“脚球”ではなく“蹴球”としまったことで、サッカーがフットボールの別名と為ってしまった。
アメリカの場合、フットボールといえば自国発祥のアメリカン・フットボールのことを指すのは当然だ。従って、世界中に普及しているボールを脚のみで扱う球技を、フットボールではなくサッカーと呼ぶのだ。
 
アメリカン・フットボールは、御多聞に漏れず英国発祥のラグビー校式蹴球を基にして作られ競技だ。
或る大学同士のラグビー対校試合で、独走する自チームの選手を相手チームの選手が止めようと追っていた。興奮した観客の一人が、追っていた相手チームの選手を、客席から飛び降りタックルして止めた。常識的に考えれば、御法度な行為だったが英国の仕来りを変化させたがるアメリカ人は、『これは面白いかも』と考えたのだ。
ラグビーではアメリカン・フットボールと違って、前にボールを投げることとボールを持っていない選手をタックルすることも反則となる。しかし時には、フロントパスもノーボールタックルも“出来たら面白いのになぁ”という状況に為る。
そこで、‘それならやってしまおう’と、ラグビー校式蹴球をルール変更して作られたのがアメリカン・フットボールだ。
なので、後々のルール変更だって、どうしたら観客が面白がるか、どう変更したらみんなが楽しめるかという観点に重きを置いている。
従って、アメリカ人の多くが、アメリカン・フットボール観戦に為ると異常な程の盛り上がりを見せるのだ。何といっても、アメリカン・フットボールを観ない・関心が無いアメリカ人は、二種類の反応しかされないのだ。
それは、無視されるかバカにされるかのどちらかだ。
大袈裟にいえば、ベイスボールが国人的娯楽なら、アメリカン・フットボールは国の存亡を掛けたゲームなのだ。
 
 
先程、アメリカン・フットボールは、観客視点に重きを置いていると書いたが、その例として考えられるのは、試合前の予想や試合後の感想でも、観客は長時間思いを共有出来ることも特徴だ。
『もし~だったら』
『あのシーンで、こうしていれば』
『あと5秒、時間が使えたら』
と、話題が尽きることは無い。
他の競技でよくいわれる、“れば・たら”の無意味さが、アメリカン・フットボールに限って言えば、全て盛り上がりの要素となる。
その為、テレビ等の中継では、膨大なデータをファン・視聴者に提供する。“れば・たら”での盛り上がりを助ける為だ。
何といっても、アメリカ人程データ好きな国民はいない。また、やたらと細かいデータを収集するコアなファンもいまい。
 
その上、観ている者が、普段感じていない大切な要素が有る。
それは、全てのスポーツ競技が、3次元(縦・横・高さ)の数値をもって競われていることだ。勿論、アメリカン・フットボールも同じだ。
ところが、アメリカン・フットボールに限っては、もう一次元が加わっているのだ。それは、時間だ。
どの競技でも、時間は重要な要素だ。だが、時間をコントロール出来る、言い換えれば、時間のコントロールが重要な戦術と為っているのがアメリカン・フットボールの特徴なのだ。詳しくは、試合の終盤間際でよくみられる。残り時間を観ながらの攻防が、息を呑むプレイに繋がったりもするのだ。
この、四次元で争われる要素が、アメリカン・フットボールにより“れば・たら”の論戦を増やす一因になっている。ファンにしてみれば、より面白い“れば・たら”論戦が繰り広げられるのだ。
 
アメリカン・フットボールは、テレビ観戦者も多いことを前提としたルールもある。
それは、4次元スポーツならではのことでもあるが、試合の残り時間が2分に為ると、自動的に『2ミニッツウォーニング』というタイムアウトが施行される。どんな状況でもだ。
これはこの先の2分間、タイムアウト等が有るので実質的には約10~15分間、中継を切りませんというテレビ局側の意志表示でも有るのだ。
必然的に、『2ミニッツウォーニング』中のCM放映権料は、他の料金と比べて数段高く設定されている。何せ、スーパーボウルならその視聴率は毎回60%を超えるからだ。単純計算で、アメリカ全土で約2億人がスーパーボウルをテレビ観戦していることに為るのだ。
CM料金が高くなるのももっともだ。
 
そしてここで、先程のクイズのヒントが関わってくる。
緊張の一戦の観戦中、ここから10分強のクライマックスが訪れると為ると当然、テレビ観戦していた人達が一斉にトイレに走ることに為る。何といっても、大量のビールを呑みながらの観戦なので当たり前のことだ。
そこで緊張するのが、水道局の局員と為るのだ。何せ、2億人近くが一斉にトイレを流すのだ。ダムの一つや二つじゃ足りないかもしれない水量だ。
 
 
どうしてここまで、アメリカ人はアメリカン・フットボールに熱狂するのだろう。
ここは一つ、騙されたと思って本場のアメリカン・フットボールを観るしかない。
NFLなら本物なので、どれだけのものかは初めて観る者でも感じることが出来ると思う。
 
肝心なのは、全てを理解しようとしないことだ。感じるだけでいい。
丁度、『スターウォーズ』に登場するヨーダのフォース(理力)に関する教えと同じだ。
 
そして、アメリカン・フットボールの魅力を感じたならば、少しだけでもアメリカという国を理解したことに為る。
アメリカン・フットボールには、アメリカの志向が全て詰まっているのだから。
 
 
そしてもし、もう少しアメリカン・フットボールを理解したいと思ったなら、是非、私に御声掛け頂きたい。
 
格安で、アメリカン・フットボールのルールと戦術を解説させて頂きますから。
 
 
 
 
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2021-11-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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