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メディアグランプリ

ずっと憧れていた津軽三味線を始めたら、人生がちょっと変わった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:庄子健一(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「趣味は津軽三味線です」
というと、「え?」とか「へえ」とか、ちょっと変わった反応をもらえる。
 
あまり人がやっていないことを趣味にしている。
それはどことなく誇らしいような、一方で「とっつきにくくてすみません」みたいなちょっと一線を画してしまう感覚だったりする。
ただ、この趣味のおかげで少しだけ人生が変わったことは確かだ。
 
津軽三味線、というものに興味を持ち始めたのはかれこれ二十年ほど前。
ボクシングかなにかの格闘技を題材にしたドキュメンタリー番組がきっかけだ。
たまたまその番組を親が見ていて、なんとなく面白そうでぼくも一緒に見ていた。
そしてその番組の最後、エンディングテーマが流れたときに、ぼくの体中に衝撃が走った。
当時はめずらしい和楽器と洋楽器の混成バンドの楽曲で、エレキギターやドラムに交じって鳴り響く津軽三味線の音色にぼくは心を奪われてしまったのだ。
 
津軽三味線というと「じょんがら節」や「あいや節」などの津軽民謡がほとんどだった。
当時20代前半のぼくは、民謡にはまったくもって興味がわかなかったのだけれど、そのころから少しずつ出ていたギターやピアノなどとコラボレーションした「新しい津軽三味線の曲」を探してレコード屋さんを訪ね歩き、そこから津軽三味線の音楽にのめり込んでしまった。
ただ、そのときはそれまでだった。
 
「いつか津軽三味線を弾けるようになりたい!」
なんてことを思ったものの、ぼくが恋焦がれた「洋楽器と一緒にやる津軽三味線」を教えてくれるところなんてなかった。
もちろん、「民謡を教えてくれる津軽三味線の教室」はあっただろうけれど、「ぼくがやりたいのは津軽民謡なんかじゃなくて、ギターとかピアノとかと一緒にやるやつなんだ!」としか思ってなかったので、実際にやる、という行動に出ることはなかった。
 
それから十数年、突然ぼくは津軽三味線を習うことにした。
三十代の半ばを過ぎたくらいのころから、昔はぜんぜん興味がなかった日本の伝統芸能や民謡に歴史や深いもの感じてきたころだ。
ちょうど転職した職場での仕事も落ち着いてきたころで、「なにか新しいことしたい」と思っていた。
その新しいことの候補の一つが楽器をやることだった。
ピアノやギター、サックスなんかもいいな、とは思ったものの、「せっかくだったらあんまり人がやっていないものがいいな」というひねくれ根性が「津軽三味線をやる」という行動に結びつく。
さいわい、「初心者向けの津軽三味線教室」なるものがあって、ぼくはそこに通うことにした。
 
「ああ、ずっとぼくが思い描いていたピアノやギターとばりばりカッコよく合わせた津軽三味線が弾けるようになるんだ」
と、思っていたものの、現実はまったくもって甘くなかった。
 
津軽三味線を含め、伝統楽器というやつは習得する、どころかまともに弾けるようになるまで非常に時間がかかる。
毎日数時間練習できる余裕があれば別なのだろうけれど、普段は仕事やらなんやらがあるので、一週間で練習に費やすのは二、三日がせいぜいだ。
三味線という楽器はフレットがなく、音を出すためにピンポイントで抑える場所感覚をつかむのにも時間がかかる。
弦を叩くバチを正しく扱うのに一苦労。
慣れない姿勢で構えて弾くので腕や肩が痛くなるし、ピンと張った弦を強く抑えたりはじいたりしているとすぐに指が痛くなる。
しかもリズムの取り方や、音遣いも独特だ。
カラオケで曲を覚えて歌えるようになるのとはぜんぜん違う。
そんなこんなで、ほかの楽器と一緒に演奏するなんてことはまだまだ先のことだ、というのをすぐに思い知らされることとなる。
 
けれど、少しずつでも練習をしていれば、少しずつでも前には進む。
習い始めて一年くらい経って、教室の発表会に出ることになった。
人前で演奏するなんて、小学校のとき少しだけやっていたブラスバンド部やら、学生時代の音楽の授業以来だ。
練習のときは弾けていた曲が全然頭に浮かんでこなくて、指がぜんぜん動かなかった。
それがなんだか悔しくて、以前より練習をするようになった。
習い始めてから四年くらい経つと、ごくごくたまにだけど、人前で演奏することも出てきた。
さいわい津軽民謡を知っている人はほとんどいないので、多少間違えたところで誰もわからない。
もちろん、楽器の中ではマイナーな存在ということもあり、「三味線ってちゃんと聞いたことなかったけれど、音が独特でいいね!」とか言ってもらえるのはちょっとうれしい。
三味線の腕はまだまだだけれど、恥ずかしがらずに音を出した方がちゃんと聞こえるとか、そういうこともわかってきた。
音楽に対する感覚も向上したのか、カラオケにいくと「歌、うまいね!」なんて言ってもらえるようになったり。
 
昔は、楽器をやるとか、音楽をやるなんて得意ではなかったけれど、三味線を始めてからはその感覚が変わったみたいだ。
 
音楽というものは、「ちゃんと間違わずにできないとダメ」だと思っていた。
でも、多少間違えていたり、ちょっとくらい音程を外しても、演奏している本人が楽しいと思って弾けば、周りにも楽しんでもらえることがわかった。
今まで縁遠かった音楽家といった人たちと話す機会も増えた。
 
最近は、「せっかく津軽三味線のやっているのだから、昔憧れていたピアノや洋楽器と一緒にやりたい」と音楽理論やセッションの勉強もして、こじんまりした音楽イベントで、知人のピアニストと一緒にコラボして演奏したりもする。
 
初めて「津軽三味線を弾けたらカッコいい!」と思って、それから二十年。
津軽三味線を弾くだけではなく、ただ憧れていた「津軽三味線で洋楽器と一緒にやる」ことがちょっとずつ現実になっている。
習い始めてから五年以上経つけれど、いまだに弾きこなせている感覚はほとんどない。
けれど、音楽をただ聞いていただけのころよりも、演奏する側となった今のほうがはるかに豊かだ。
最近はそれを実感している。
 
 
 
 
***
 
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2021-12-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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