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シンデレラ・エクスプレスの昭和の恋とマッチングアプリの令和の恋


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:高井不二生(ライティング・ライブ大阪教室)
 
 
「この時代に恋をしてみたかった」
クリスマス・イブの夜に、Youtubeで山下達郎の『クリスマス・イブ』の曲を聴きながら、
動画の下に続くコメントを読んでいると、そんな書き込みに目が留まった。
 
この曲がリリースされたのは、1983年(昭和58年)の12月。最初のころは、オリコンチャート44位が最高だったけど、1988年の冬にJR東海のCMに採用されてブレイクした。
それ以来1992年まで、新幹線を舞台にした遠距離恋愛のCMソングとして人気を博した。
シンデレラ・エクスプレスという言葉を定着させ、2021年まで36年連続でオリコンランキング・トップ100入りをしている伝説の曲だ。
 
そんな『クリスマス・イブ』への殆どの感想が、40代以上の人が昔を懐かしんでいるものだったので、その書き込みに新鮮な響きを感じた。もちろん若い人のコメントだ。
(こういう思いがあるんだ)
ちょっと感動しながら、他の人のコメントを読み進めていくと、
 
「今の時代のセンスでは、このCMはつくれないだろうな」
「スマホのない時代のおとぎ話」
「携帯もスマホもない時代が懐かしい」
「この世の中、便利になり過ぎてしまった」
などという興味をそそられる言葉が次々と目に留まった。
 
この曲が大ヒットしたのが、昭和の終わりから平成の始めにかけてだった。
遠距離でなかなか会えない恋人が、週末に新幹線で会いに来るが、すぐに相手を駅で見つけることができないもどかしい様子と逢えた時の感動を、ドラマチックに描いたCMの名作に採用された曲だ。
 
「この時代で恋をしてみたかった」
というのは、他の人のコメントにあるように、スマホのない時代への憧れだろうと思う。便利過ぎる現代では、恋をしていても何かと味気ないことが多いのかも知れない。
 
スマホのない時代に青春を生きた僕からすれば、今の恋愛事情と比べて不便だったと感じる思い出はいっぱいある。例えば、固定電話しかなかったので、好きな女の子の家に電話すると、コール音を聞いているだけで、べつに悪いことをしている訳でもないのに、胸がドキドキしたものだ。どうか彼女が電話に出てくれますようにと。
そんな時に、ドスの効いた男の声で、
「はい〇〇です」
と電話口に出られると、「うちの娘に何の用だ」と言われた昭和らしい経験もあったので、
「あ、すみません、間違えました」
なんて言って、電話を切ったこともあった。
後で、父親じゃなく、声の低い弟だと分かった笑い話だったけど。
 
逢いたくても、すれ違ってなかなか逢えないもどかしさ。
待ち合わせ場所で、相手の状況もわからないまま長く待たされたり、待たせたり。
若い頃、そんなことは何度もあった。
すれ違いや逢えない時間は、時にロマンチックな出来事や切ない思い出を作ることがある。
でも、現代の若い人達が、便利過ぎてそんな経験すら味わうことが殆どないのなら、
「この時代に恋をしてみたかった」という気持ちもわからなくはない。
 
その一方で、現代では婚活をマッチングアプリで行う人も増えている。
全米科学アカデミーの情報(2017年)によれば、現代のアメリカでは、結婚した人の37%がオンラインの出会いがきっかけとなったらしい。
日本でも、ノマドマーケティング株式会社が20~30代の男女100人に実施した調査(2021年8月)では、マッチングアプリで結婚した人が15%いたそうだ。マッチングアプリで付き合う確率が約30%なので、その半分が結婚に至ることになる。
 
マッチングアプリのいいところは、一般的な出会いよりも圧倒的な数の異性を対象とすることができることだ。理論上、数百万人を対象とすることができるらしい。結婚適齢期における一般的な出会いは、多くても数百人が限度と言われているので、この違いは大きい。特に異性との出会いが少ない人にとっては朗報だろう。そうでない人にとっても、生活環境の中に理想とする人が居ない時に、膨大なデータから相手を探せるメリットがある。
 
そして、そのデータの中から、自分の希望や要望を基に相手を選んでいく。よくある年収、身長、家族構成などの他に、仕事、転勤の有無、子供は何人欲しい、どこに住みたいとか、親と同居・別居などなど、様々な細かいデータまで指定できるらしい。なので、一般的な出会いよりも相手とのギャップが小さく、結婚してからも、こんなはずではなかった、ということになりにくいのかも知れない。
 
実際、毎日放送が行った1万人を対象としたアンケートによると、マッチングアプリで結婚した夫婦の離婚率が4.5%だったらしい。日本の直近5年間の離婚率は6.6%とされているので、マッチングアプリで結婚した方が、離婚率が低いことになる。
マッチングアプリ先進国のアメリカでも、オンライン結婚者の離婚率6%は、オフライン結婚者の離婚率7.6%より低い調査結果(シカゴ大学)がある。
 
しかし、幸福度はどうなのだろう?
「離婚率が低い=幸福度が高い」ということも言えるかも知れないが、こればかりは当人同士の気持ちや考え方によるので、なんとも言えない。
確かに言えることは、マッチングアプリによる結婚は、新しい出会いの形だということだ。そして、「この時代に恋をしてみたかった」と、Youtubeにコメントを残した若者は、たぶんマッチングアプリは利用しないとだろう思う。
 
令和の今は、便利なネットワークと大量の情報に溢れた時代だから、欲しいものは殆ど何でも手に入る。これからもAIの発展によって、ますます進化するだろう。
そんな未来にワクワクするが、一方で失って行く何かを感じるのは、僕だけだろうか?
 
最短で最適な結果を出せる可能性が高くなった時代に、失っていくものは何だろう?
あらためて考えてみると、それは、『失敗』という『成功の種』なのかも知れないと思った。
 
失敗なしに辿り着いた理想は、果たして幸せなのだろうか?
失敗があってこそ、そこから立ち上がることによって、人として厚みができるし、他の人のことも思いやれるはずだ。これは恋愛でも何でも同じだと思う。
 
たとえ恋が成就しなくても、それを胸にしまって生きていく人生も、また味があっていい。
人は躓くことでしか、大きく成長できないのだから。
Z世代の若者達を、タイムマシンで昭和の時代へ送って、恋愛させてみたくなった。
その時、彼らにとってファンタジーでしかない世界で、どんな恋愛をするのだろうか。
 
 
 
 
***
 
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2021-12-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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