出会う人は必然である
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:若林麻由(ライティング・ライブ福岡会場)
サッカーに明け暮れる小学5年生の息子。
その日も、河川敷のサッカーコートで、チームの仲間たちとパスを繋いで、いい試合をした。
帰ろうと、車のエンジンをかけた時、私は息子にしみじみ言った。
「ほんっとにいい仲間に出会えたよね! あなたは運がいいんよ。いいご縁に恵まれてる!」
すると息子は、間髪入れずに言った。
「世の中の人、全員、そうだと思う! 出会った仲間がサイコー!! って、みんなそう感じるに決まってる!」
息を呑んだ。
すぐ言葉が出なかった。
そっか。
そう考えたらいいのか。
ハンドルを握る手に、ギュッと力が入った。
「ほんっっっとに、そうだね!!!」
息子の言葉にハッとしながら、
私は、19年前の社会人1年目の、仕事に慣れるのに必死だった場面を何故か思い出していた。
当時、ブライダル写真のオリジナルアルバムを作成する、というなかなかレアな仕事をしていた。
とても幸せな仕事内容だったが、私は仕事がそんなに早いわけでもなく、仕事がデキるわけでもない。
一つの仕事を与えてもらって、それがクリアできたら、次の仕事をまた一つする。
目の前のやるべきことに必死だった。
私の部署の上司は、その道の大ベテランの50代の男性で、仕事がデキる彼からしたら、私のできなさ具合に、もどかしさやら、やるせなさを感じていたようだった。
そうこうしているうちに、役職ある社員の給料が20%カットされる、という一大事が起きた。それを機に、会社内に一気に、不穏な空気が流れるようになった。
私が入社して、4ヶ月後くらいのことだ。
家に帰りテレビをつけると、お家で綺麗にプリントアウトしちゃお! と綺麗な女優さんがかわいらしく煽っている。
家庭用プリンターがどんどん進化している時代だった。
会社の愚痴を言う上司の言葉を、BGMのように聞きながら、
手元は必死に仕事した。
上司の気持ちも確かに分かる。
彼にも、守る家族がいる。
突如、給料が大幅にカットされてはたまらない。
私が入社して半年くらい経った時、その上司が、私に爆発した。
「お前の長所は、どこやーーー!!!?」
大きい声で怒鳴られたこの質問に対して、冷静に返した自分がいた。
「イライラしないことです」
いつもイライラしている上司に対する、私なりの最大の反抗心から出た言葉だった。
そして、この私の言葉をすぐに拾ってくれたのが、同じ部署の、仕事のデキる女性の先輩だった。
「それは素敵なことだね!」
上司も一目置いているこの先輩が、私の言葉を肯定してくれたことで、一気に空気が変わった。
「おぉ、ほんと、それはすげーわ」
上司が歩み寄ってくれた瞬間だった。
それまでは、怖い、苦手、としか思ってなかったその上司に、この日を境に、分からないことは聞けるようになった。聞くととても端的に分かりやすく教えてくれた。
分からないことは聞く、という、新入社員としてやるべき基本的なことができていないだけだったのだ。
苦手という私の意識が、大きな溝を作っていただけで、
そもそも、あの大声で怒鳴られた場面も、私の長所を知ろうとしてくれたんだ、と思ったら、なんて優しい上司なんだ、と気づくことができた。
部署の空気を濁していた源は、実は私、だったのだ。
その後はガラリと空気は良くなり、その上司と冗談を言い合いながら仕事ができるまでになった。
私が現在の仕事に転職したくて、その職場を辞めるときにも、一番引き止めてくれたのが、その上司だった。
その職場に勤めた期間は実質2年弱だったけれど、私にとって、とても有意義な時間だったと言える。
当時のその職場の横にも、河川敷があり川があった。
その一級河川の川をどれくらいだろうか、ずっとずっと下ったところのあるのが、今日の息子たちの試合会場だ。
川の向こうにオレンジ色の夕日が落ちようとしている。
川と、河川敷と、子供達の勇姿と。
今日、全てがキラキラ眩しく見えたのは、ただ、夕日が明るかったから、という理由だけではないようだ。
未来が明るい、ということを表していたように思う。
出会うべくして出会った上司や先輩。
気づきや反省を糧に、私なりに成長していたつもりだったが、いい大人になった今も、こうやって息子の言葉にハッとさせられるとは。
私はまだまだ伸び代があるということのようだ。
出会った人、仲間、に対して、全員が“サイコー!“と思える世の中は、誰が作るのか。
一人ひとりの心の持ち方次第で、それは可能だということを、息子の言葉によって、改めて考えさせられた気がする。
この堂々と流れる川のように、大きな心を持ちたい。
この穏やかに流れる川のように、素直で柔軟な姿勢でいたい。
ずっとずっと昔から変わらないこの川のように、ブレない私でいたい。
なりたい自分と今の自分にはまだまだ大きなギャップがあるのだが、
家族や友達や職場の仲間たちとの関わりによって、もしかしたら、その差を少しずつ縮めることができるのかもしれない。
***
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