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私の頭は良い頭


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:蒲生 厚子(ライティング・ライブ名古屋会場)
 
 
「私は頭が良いです」
と言ってのけることができる人がどれだけいるだろう。
 
もちろん私もそんなことは口が裂けても言えないし、もちろん思ってもいない。
どちらかというと、年々、なんて頭が悪いんだろうとがっくりすることばかり。
でも胸を張って言えることがある。
 
「私は良い頭を持っています」
 
え、どういうこと? と思われる方もいるだろう。
でも、本当なのだ。私はすこぶる良い頭を持っている。
 
「頭が良い」というのは、言い換えると博識、聡明、頭の回転が速い、頭が切れる、計算が速い、勉強ができる、利発、さらに言うと天才、秀才……。
残念ながら、どれにもあてはまらない。
だから私は決して頭が良くない。
 
高校を卒業するまでは、それなりに勉強すればテストの点は取れた。それは、学校でテストの点を取るための勉強をして、覚えて、書けば点が取れるようにできているから。
集中力だけはよかったので、ほぼ一夜漬けで頑張れば、一日二日は覚えていることができる。
ただし、一夜漬けの欠点は、一日二日で忘れてしまうことだ。
私も例にもれず、上手に忘れてしまっている。
 
受験科目で世界史を選んだ。おかげで日本史は学校のテスト勉強以外はやっていないので、いまだにさっぱりわからない。受験のころにほぼ完璧に覚えていた世界史はどうかというと、それさえ一向に身についていない。大学に入って、それ以上勉強することがなかったので、すっかり忘れてしまっている。
当時、もっと興味を持って覚えていれば、忘れていないのかは今となってはわからないが、とても残念に思う。
日本や外国へ旅行に行くたびに、歴史をもっと知っていれば、その旅が何倍も興味深いものになり、どんなに楽しいだろうと悔やむ。
 
だから、せめてその時だけでも歴史がわかる本を読んだり、立て看板を読んだりする。でも、すぐに忘れてしまう。所詮そんなもんだ。
そしてこう言い訳をする。「年を取ると、なんでも忘れてしまう。せめて、若いころにちゃんと覚えておけばよかった」と。
だって、子供のころに耳慣れた歌は、いまでもイントロを聴いただけで自然に口ずさむことができるではないか。それが今では、どんなに気に入った歌でも、歌詞はおろか曲名さえ覚えられない。
 
そんな私が、なぜ良い頭を持っているのか?
 
そう、忘れてしまうことができるから「良い頭」なのだ。
 
え? どういうこと?
 
学問に関していえば、ちゃんと覚えていなければ手痛い目にあう。特に資格試験などは大人になっても情けない苦しみを味わうことになる。
 
でも、人間はすべてのことを忘れずに覚えていけば、大変なことになると思う。
人生は学問だけで成り立っているわけではない。
経験したこと、味わった感情、特に悲しみ、苦しみ、寂しさ、焦り、憎しみ、そんなものすべて忘れずため込めばパンクしてしまうこと間違いない。
 
私はすごく良い頭を持っているので、時がたてば薄れてしまうようだ。それについて考えることが面倒くさくなって、忘れてしまうらしい。おかげ様でとても助かっている。
しかも、良いことや楽しかった感情は、頭ではなく心に残っているのか、たまに思い出すことができるという便利な体質らしい。
 
どのくらい良い頭かというと、これが半端ない。しかも年齢とともに拍車がかかっている。
 
例えば、面白いテレビ番組があって「きのう、すごく面白かったよ」と意気込んで伝えると、当然相手は「どんな番組だったの?」と聞いてくる。いざ説明しようと思うと、面白かったことは覚えているが、細かい内容を覚えてなくてちゃんと説明できない。どうやら、見るはしから忘れていくらしい。最近は「なんかよくわからないけど」という言葉が増えているように思う。
テレビ番組や本の内容をしっかり覚えている人たちを「すごい!」と思う。
わかりやすく説明してくれる人たちは「天才!」と思う。
 
夫とウォーキングに行ったとき、「なんかここに来たことがある気がする。これって、デジャブ?」と、不思議な感覚におちいって聞くと「前に一緒に来たことあるからね~」とあきれ顔で言われたことがある。そういわれても、いつのことだったかさえ思い出せない。
その時は、一緒にいる時間を心から大切にしていないのかも、と少し反省はした。
 
家でサスペンス映画を観ていて、「このシーンなぜか見覚えがある。なんでだろう?」とキツネにつままれることがあった。でも、次のシーンは全く初めて見る場面なわけで、きっと
気のせいに違いないとやり過ごす。でも、見ているうちに「いやいや、きっと観たことがある。そんな気がする」もやもやする気持ちを抱えながら、画面を見守る。「これは絶対に観たことがある、でも最後の結末がわからない」
そして衝撃のラストシーンを観て「やっぱり観たことがある!」と納得すると同時に、最後まで思い出せない自分に衝撃を受けるという結末。
 
推理小説を読んだときは、もっとショックを受けた。読みながら「これは初めてじゃない。一度読んだことがある」とわかったものの、ちっとも犯人がわからない。どんどん読んでいってもさっぱり犯人がわからない。最後の最後に「なんてこった、この人だったのか」とわかって、決して探偵になれない自分を思い知った。
この時は、情けないのを通り越して、笑えた。
 
良い頭を持っている私は、いつもなんでも新鮮に受けとることができる。
一度観た映画も、何度でも楽しめる。本は何度よんでも新鮮な発見がある。
知識はわからなければ、スマホで検索すればすぐにわかる時代なので、そんなに問題はない。
嫌なことは覚えているのが面倒くさいので、少しずつ小さくなっていく。
悲しいことは、都合の良い考え方で薄めていって、いつの間にか小さな思い出になっている。
 
今、生きるために必要でないことは忘れてしまっても、暮らしていける。
私の頭は良い頭だから、勝手にスキャンしてくれるらしい。
物覚えが悪くて情けない頭だけど、笑いながら愛してあげようと思う。
 
 
 
 
***
 
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2022-01-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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