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階段から落ちてわかったこと

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:荒川京子(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
1年前の早春、階段から転がり落ちた。
 
1ー2段、踏み外したなんてものじゃない。
手すりもない階段だったからどこにもつかまれず、2階から1階までほぼ一直線に落ちて、後頭部を強く打って止まった。
頭にはあっという間にタンコブができて、両足首も強く打ったようで痛みで動かすこともできない。
 
場所は郊外の山小屋風レストラン。
初めて行ったところだったから勝手がわからず、見晴らしがいいという2階に上がって様子を見て、ちょっと薄暗い階段を降りようとしたら、そんなことになってしまったのだ。
 
お店のオーナーが呼んだ救急車で近くの救急病院に搬送され、レントゲンやら頭部のMRIなどを撮られ、「骨折はないけど、右足のかかとの骨膜が剥がれかけているので、剥がれないよう保護するためにギブスをしましょう」と言われた。
 
昔は、ギブスといえば石膏で固めたものだけど、今は特殊な包帯を水に浸け、厚手のガーゼで覆った右足首から膝の下までを、その包帯で巻いていく。まき終わると、だんだん包帯自体が硬くなり、しばらくすると、叩いても全く中に響かないくらいカチカチに固まってしまった。軽くて、厚みもないので、体に負担がなくていいと思った。
 
完全に固まったのを確認すると、車椅子に乗ってリハビリ室に連れていかれ、その場で松葉杖を渡されて歩行や階段の上り下りの練習をさせられた。
 
それから1ヶ月。
ようやくギブスを外してもらえた。
固定されていた足首も、ほとんど痛みなく動かせる。
 
これで元どおり動けると思っていたら……
 
実は、松葉杖はすぐに肩が凝るので使う気になれず、家の中だったら杖なしで動けるので、ほとんど外出せずに屋内で過ごしていたので、びっくりするくらい体力が落ちていたのだ。
 
ちょっと近所に買い物に出て、戻ってくるとぐったりと疲れを感じる。
1週間ぐらい経過して、もう大丈夫かと思って所用で半日出かけると、翌日は気分が悪くて起きられない。
以前、腸閉塞で約1ヶ月入院したときでさえ、退院1週間後には仕事に出て大丈夫だったのに、この体力のなさは何?と、かなりうろたえてしまった。
 
そんな時に、今ならカウンセリング付き無料でフィットネスの体験できます、という女性専用のフィットネスジムのDMが届いた。調べると自宅から徒歩10分ぐらいのところにある。
 
この年の春に70歳の大台に乗ったし、若い頃と違って自助努力だけで元の体力まで回復するのはかなり大変かも、と思っていたので、まずは様子を見に行ってみよう。そして、良さそうなら通ってみようと、電話で日時を予約し、体験に出かけて行った。
 
当日、フィットネスジムの屋内に入ると、20人近い女性、それもかなりお年を召した方々が目につくのだが、目の前のフィットネスマシンに座ってあるいは立ったまま、腕を上下に動かしたり、体を捻ったり、かなり軽やかに動いていた。
 
プリーズ、チェンジ、ネクスト!
という録音された女性の声のアナウンスで、全員がパッと次の場所に移っていく。
 
そんな動きを横目で見ながら、部屋の隅にあるテーブルについて若い女性スタッフからジムでの流れについて説明を受けた。
 
全部で12種類、部屋の壁に沿って並べてあるマシンを順番に使って、それぞれ30秒ずつ、マシンごとに決められた所定の動きを行う。次のマシンに移る前に、各マシンの間に置いてある四角いボードに移り、30秒間ボードの上で足踏みなどしてクールダウンする。
それを2周こなしたあと、8種類のストレッチを順番通りにこなすと、合計30分のトレーニングになるという。
 
説明を聞きながらも、目の前で実際にマシンを操作している人たちの動作に目を奪われていた。
 
室内に入ってくる姿は、白髪で背中も腰も曲がって小柄な本当に絵に描いたような老女と言ってもいいような人も、いざ上腕やら大腿筋を鍛えるというマシンを操作し始めると実にキビキビと動くのだから。
 
これなら私でも続けられるかも、と思って、その場で入会手続きをしてしまった。
 
家に帰って念のため調べてみたら、このジムではノー3Mなのだそうで、三つのMとは、マン、ミラー、メイク。これがないことで、周りを気にせずにトレーニングができるという。
 
確かに、みんな着ているものは動きやすいパンツに普段着風のTシャツやオーバーオールだ。
体型も、かなりの肥満型の人、ガリガリに痩せた人、背中が丸い人、足が不自由で歩く時に体が大きく左右に揺れる人、など様々だ。
 
でも、皆淡々と30分のワークをこなしている。ボード上でのクールダウンは足踏みだけでもいいのだが、日本舞踊やアロハの手振りで踊っている人もいるし、その場でランニングの人もいる。みんな人目を気にせず自分のやりたいように動いていて、見ていて気持ちいい。
 
初めの数回は、行って帰ってくると、ぐったり疲れて横になっていた。
マシンは全て油圧で動きが重いので、特に足を後ろに蹴り上げるマシンと、90度に肘を曲げた上腕を顔の高さまで上げて開閉するマシンは、普段使っていない筋肉を使うので、30秒が本当につらかった。
 
 
でも、通い始めて一月経つ頃には、あまり疲れていないことに気づいた。
ジムへの行き帰りの坂道でも息切れしない。
 
ジムに通い始めた当初は、体力が回復したらやめようかと思っていた。
でもあと10年20年を元気で過ごすために、1回30分、往復の時間も入れて1時間弱の所要時間で、全ての筋肉を満遍なくトレーニングできるというのは、なかなか得難いものだと思うようになった。
 
人生100年時代といわれて久しいが、有意義に過ごすにはまずは健康であることが大前提だと実感している。でも、どうすれば良いかと具体的に考えることもなくここまで来ていた。
 
聞けば、このジムはアメリカ発祥とのことだが、アメリカでは衰退しているけれど、日本では高齢社会の需要とマッチして、各地に開設され会員も急増しているようだ。
 
でも、階段から落ちて体力がなくなるようなことがなければ、多分このフィットネスジムのDMにも注意を引かれず、ましてや行ってみようという発想はなかったのではと思う。
 
 
これがほんとの、怪我の功名かも。
 
 
 
 
***
 
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2022-02-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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