折り紙とハッピーターンは言語の壁を超える
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記事:あやこ(ライティング・ライブ名古屋会場)
「外国人の喜ぶ日本のものってなに?」
そう聞かれたら私は迷わず
折り紙とハッピーターンと答える
折り紙の紙自体が薄くて丈夫で発色が良いと驚くし、それで鶴を折ると大人も子どももとにかく喜んだ。
そして、ハッピーターンの中毒性は日本人だけでない。
あのサクサクとした軽い食感とハッピーパウダーは「これで最後」と思ってもやめられない。あれの虜になった外国人を何人も見た。言語が苦手でも折り紙とハッピーターンのおかげでなんとか海外生活を乗り切ったと言っても過言ではない。
最初も折り紙とハッピーターンがきっかけだった
三十路を過ぎた頃、仕事の視察で初めて北欧に行った。
15人ほどのグループで1週間、あちこち視察してまわり、私は日本語以外全く話せなかったが、ガイドさんもいたので聞きたいことはガイドさんが通訳してくれた。
ツアーの後半になると貸切バスではなく電車で移動することになり、初めて海外の電車に乗った。目的地までの移動の間、一緒に視察に行っていた仲間がお菓子を配ってくれた。
ハッピーターンだ!
大好きなお菓子だったが、その頃の私は歯科矯正をしていたため何かを食べたらすぐに歯を磨かなければいけなかった。目的の駅に着いたらすぐに視察先に向かう予定だったので、いつ歯を磨けるかもわからない。いつもなら後で食べようと、カバンの中に閉まっていただろう。でもその時の私は非日常にハイになっていたのか普段なら絶対にしない行動をした。
隣に座っていた金髪碧眼の現地ティーンの女の子にあげたのだ
今までの貸切バスとは違い、普通に生活している人たちが使う電車に私たちも乗っていたので隣に現地の人が座っていたが日本語でわいわい話をしている団体のところにわざわざ座るということは何か興味があるのではないか
たったそれだけの理由で英語もできないのに話しかけてみることにした
「これ食べますか? えーと、ギブ ユー」
そう言ってお菓子を差し出すと、スマホを見ていた彼女はパッと驚いた顔をして自分を指差しながら英語で何かを喋っていた
近くに座っていた視察仲間は驚いていた。まさか急に現地の人に話しかけるとは思っていなかったのだろう。今、思えば人にもらったお菓子をその場で他人にあげるなよという驚きかもしれないが……
「もし嫌でなければ……ってなんて英語で言ったらいいんだろうね?」
堂々と日本語で相手に話す
とりあえず手のひらを上に向けて
どうぞ どうぞ のジェスチャーをする
このジェスチャーは通じるのか?
すると「Thank you!」と言って受け取ってくれた!
おそらく迷惑そうな顔もしていない!
これが異文化コミュニケーションというものだろうか?
受け取ってもらえたことにちょっと感動した
すると彼女は前のめりになってめちゃくちゃ英語で話しかけてきた
全然わからない!
自分で話しかけたくせに!
助けて!
視察仲間を見てもみんなも英語がわからないのか見守るのみ
だめだ! 自分でなんとかしなければ
ハッピーターンを指差しながら何か喋っている
このお菓子はなんですか? 的なことを聞いているのだろう
クラッカー? は聞き取れた
んー。
なんと言えばいい?
ハッピーターンって直訳すると怪しくないか?
そもそもハッピーターンは何に分類されるのだろう?
クラッカー? あられ? せんべい??
もう全然わからん!
「ジャパニーズ スナック!」
「Oh! Are you Japanese? 」
「いえーす!」
「flijfo;aiu;rogihjblo; :fpo」
わ、わからん
とりあえず彼女が日本に興味がある的なことを言っているのはわかった
会話は無理だ
日本ぽいものは何かないだろうか……
慌てて脳をフル回転させる
そうだ!
もしかしたら使うかもと思ってカバンの中に入れてあった折り紙で鶴を折ることにした
それなら会話もあまり必要ではない
すると彼女は マ ジ で ー!? 的な言葉を言って
目をキラキラさせて驚いたような顔をした
私も作りたい! そしてあなたの鶴と交換したい!
なぜかそう言っていることがわかった
言葉も通じない彼女に鶴の折り方を教える
自分が降りるまであとどれくらいあるかもわからない
いつ彼女が降りるかわからない
でも、北欧のローカルな電車の中で
私は言葉も通じない彼女と折り紙をした
完成した2羽の折り鶴
彼女のちょっとふっくらとした鶴と私の鶴を交換して
一緒に写真を撮った
ありがとう、私は次の駅で降りるの
本当に楽しかった
いつか日本に遊びに行くわ
最後に彼女がこう言ったのがわかった
普段から人見知りで自分から初対面の人に話しかけるのが苦手な私がなぜあの時彼女に声をかけたのかは今でもわからない
でも、英語はできないと思っていたが私は彼女が何を言っているのか理解したいと思ったし彼女もきっと伝わるように喋ってくれていたのだろう
そんなお互いの気持ちがあれば伝わることを実感した
帰国後、私はすぐに英会話教室に入会した。いつかまたあの国に行ってリベンジしたい。今度は会話ができるようになりたい
それを目標にした
そしてその3年後、私は1人で北欧のローカル電車に乗った
ガイドさんはいない
もちろん彼女もいない
お供には折り紙とハッピーターン
そして少しふっくらした折り鶴 1羽
***
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