メディアグランプリ

掃除と試験勉強


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記事:秋野ゆみこ(ライティングゼミ・特講)
 
 
「大掃除って試験勉強みたいだね」
昨年の大晦日、リビングの窓を拭き終えて呟いた一言です。
12月に入るとそろそろ大掃除をしなくちゃと気になりだします。しかし、なかなか手をつける気になれません。そのまま、ずるずるとクリスマスを迎えました。そこまで来るととても一人ではできそうにありません。
「大掃除はどこを手伝いたい?」
息子になかば命令調に聞いて、換気扇とお風呂場という言葉を引き出しました。
大学生の息子は大掃除なんて楽しいはずがありません。私はできるだけ早く楽に終るように段取りを考えました。
「最初に換気扇を外して洗剤につけておいて、その間にお風呂のカビを落としてね」
手袋と洗剤を渡しながら声を掛けました。
私は仏壇や食器棚など私にしかできない所を引き受けて、それぞれの持ち分を掃除しました。
 
少ししてお風呂の前を通ると、息子がぶつぶつと文句を言っているのが聞こえました。普段の手抜きが仇となって、かなり大変な事になっているのは私も承知しています。
「お昼ごはんは美味しい物をご馳走するよ」
と、言うと刺身が好きな息子はすかさず、
「海鮮丼」
と、答えました。そこで、お昼は手をとめて近所の定食屋さんに海鮮丼を食べに行きました。それが良い気分転換となって息子のやる気は増したように見えました。
 
そして、最後に残ったのがリビングの窓です。割と大きなガラスで4枚あります。お正月には来客もあるので特別きれいにしておかなければなりません。この窓掃除が大変で、いつも最後に残ってしまうのです。
上の方は脚立を立てても私では届かないので、息子に頼みました。外は寒くて嬉しい作業ではないけれど、二人で窓掃除をするのは悪くありませんでした。下に新聞を敷いたり、雑巾を絞ったり、脚立をあっちこっちに動かしたり、連携がかなり重要です。息子との共同作業でピカピカになった窓を眺めるのはとてもすがすがしい気持ちでした。これが今年最後の大掃除だと思うと、やり切った満足感が私の中に広がりました。
 
これは本当に試験勉強と似ています。
懐かしい中学生の頃の事です。試験前になると必ずあたふたしていました。学生ですからコツコツと勉強していれば良いはずなのですがそれができません。あっという間に1週間前になってしまい、焦って友達に「一緒にやろう」と声を掛けていました。
 
私は数学が苦手で赤点を取ってしまった事がありました。
追試までに何とかしなければいけません。仲良くしていた学級委員の恵美子に相談すると、
「じゃあ、うちにおいでよ」
と、即答してくれて日曜日に彼女の家へ行く事になりました。
「テスト見せて」
彼女は私の赤点のテストを確認しました。
「3番からやるのが良いかな」
と、言って彼女は3番の説明を始めました。私は1番からやると思っていたのでそう言うと、
「3番の方が簡単だから、簡単なのから片付けて行こうよ」
と、理由を教えてくれました。その方が早く前に進むからとも言っていました。勉強が苦手な私は全体を俯瞰して、段取り良くやる事が大切なのだという事をこの時知りました。
 
しかし、2~3時間もすると、だんだん飽きてきます。
「昨日のドラマ見た?」
私は無駄なお喋りを始めていました。
「●●が恰好良かったよね」
二人とも大好きな俳優の事を彼女は褒めました。
「そう言えば英語の宿題やった?」
急に聞かれて勿論やっていない私は首を横に振りました。
「今やっちゃおうよ」
と、言いながら彼女は英語の教科書を持って来ました。
「だって数学は?」
まだ全部終っていないのに、急に英語の宿題を持ち出した彼女に不満をぶつけました。
「あのね、数学疲れちゃったでしょ。そういう時は別の勉強をして気分転換すると良いんだよ」
恵美子は小さな子に諭すようにそう言って英語の宿題を始めました。なんとも無駄のない勉強法です。なるほどと思って私も一緒にやりました。英語の宿題は30分ほどで終わり、また数学に戻りました。すると確かにまた新鮮な気持ちで数学にも取り組めたのでした。
彼女は自分がわかるだけではなく、教えるのもとても上手でした。
全部やり切った時は、二人とも満足感でかなり高揚していました。追試も見事に合格して二人でお祝いしたのは良い思い出です。
 
「段取り」と「気分転換」の大切さを彼女に教えて貰いました。大人になって試験勉強はもうないけれど、いつの間にか他の事に応用しているようです。
大晦日の日、ぴかぴかに磨き上がった窓ガラス眺めながらあの時と同じような高揚感と満足感を味わっていました。
 
 
 
 
***
 
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2022-02-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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