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里山、小鳥の来る庭を目指して

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:樋口智香子(ライティングライブ・名古屋会場)
 
 
「いろんな鳥がいるけど、きれいな声で鳴くのは春の鳥よ」
 
娘の卒園文集に載せられたことばだ。
幼稚園卒園のときに先生が園児たちの声を拾ってくれていた。
 
「きれいな声で鳴く春の鳥」とは、おそらく、春のはじまる少し前から自宅の裏山で囀る鶯だと思う。
鶯は囀り方を練習している。はじめは「ケ、ケキョ、ケキョ」と、へたくそで、何日も練習して、次第に熟練の美しく歌うようなさえずりができるようになっていく。
毎年春の初めのまだ寒いころから練習する歌声。次第に完成していく過程を聞くのもうきうきした。
春はそこまで来ている。
 
ところが2年ほど前から春になっても鶯の声が聞かれなくなってしまった。
近くに住宅が建てられるために、裏山の一番大きな欅の木が2本切られてしまったからだと思われる。台風時など強風の時の倒木事故の心配から伐採したのかもしれない。
厳しい冬を抜けて、待ちわびていた春がようやくやって来る素敵な兆し。
鶯のさえずり。
楽しみだった季節の変化、春の訪れを知らせてくれる美しい声が聞こえない。
 
自宅の庭を訪れる鳥は、鳩、ヒヨドリ、百舌鳥、シジュウカラ、雀、といったところだろうか。
もう一度鶯に戻ってきてほしい。そしてもっと多くの小鳥に我が家の庭を訪れてほしい。
そのためには、どうすればよいのだろう。
 
冬場は餌が少なく、雪が降ったりするので、鳥たちにとって大変な季節だろう。
冬に成る赤い実、家の庭の南天と千両の実は、すべてそっくり鳥たちの餌になったようで丸坊主だ。
しかし、丸坊主ということは家の庭にはもう餌がないということだ。
食物連鎖が追い付いていないのかもしれない。
この寒い季節には、当然のことながら虫たちは全く見かけない。
 
何とか小鳥の来る環境を作りたい。
小鳥の来る環境とは、
 
1. 餌があること
2. 水飲み場があること
3. 木々が充実していて、木の実やそこに付く虫をついばんだり、枝葉の陰で休めたりできること
 
とりあえず、できることからやっていこう。
庭には何本か木が植えてあるが、追加で3本ほど木を植えようと思う。
その木が小鳥たちの役に立つのは、まだまだ先だけれど、木の成長を見守ることもできて、2重の楽しみだ。
そして小鳥にとって食糧の不足する冬の時季に援助する意味で、餌台と水飲み場を作ろう。小鳥の好む餌を用意して、大きい鳥に邪魔されないつくりを考えよう。
小鳥は大きい鳥が来ると、逃げてしまうそうだから特別に守ってあげたくなる。
人が近づくと警戒するので、小鳥を見かけたらそっとしておいてあげよう。
 
 
住宅やビルを建てたり、車で移動するための道路を作ったりするため、山を切り開き、人間社会にとっての利便性を優先させてきた地域がある。
一方で、自然性の高い奥山自然地域と、人間活動が集中する都市地域の中間に位置する「里地里山」という地域がある。集落や人里に近く、人間の影響を受けた生態系が存在する山を指す「里山」。長い歴史のなかで人々が自然と寄り添い作り上げてきた自然環境であり、そこには生物多様性がある。私の近づきたい理想郷だ。
 
里山をモデルにして庭づくりを進めていく。
使う資材は極力、自然素材のもの、再生できるものか生分解性のものを意識している。
薬剤、農薬は使わない。
害虫を見つけたら、鳥の目につくところへ連れていき、食していただく。そのためにお庭パトロールをこまめに行う。これは結構大変だけれど。
循環を考えて生ごみは堆肥にして、ごみを減らす。堆肥は土壌の菌、微生物を増やすことにつながり、土中のミミズを増やす。ミミズは枯れ葉や植物の切れ端を食べて優れた堆肥にしたり、空気や水を植物の根に届けたりする。そして餌となって命を繋いでいく。
生態系を守る努力をすることは、同じ居住空間に生活し、その恩恵を授かっているヒトの責任のような気がする。ヒトも生態系を作るメンバーの一員なのだから。
 
菊の枯れ枝を手入れしていたら、カマキリの卵をみつけた。
春にはカエルがたくさん目覚めて、夏には大合唱で季節を進める。
真夏の日照りの続く日に、トカゲが庭石の陰へ避難する様子を見かける。
夏の終わりには、木々のあちこちに蝉の抜け殻を見つける。
去年は、鳩が秋の終わりに金木犀の木のなかに巣を作っていた。これはあまりの強風に耐えきれず引っ越したようだが。
季節の移り変わりを生き物たちと共有している。
 
様々な生物の絶滅危惧種を守る活動がなされて、その活動の成果が出て数を増やしてきている種もあるようだ。
私にはそんな大層なことはできないが、家の庭で生活している生き物、家の庭を訪問してくれる生き物たちが、家族のように愛おしい。守ってあげたい。
庭を、虫、小鳥、トカゲ、カエルたちの生活の場、活動の場として提供したい。
生き物たちが安心して集まってきてくれる場所、小スペースでもそんな場所を維持していきたい。更にはもっと作り上げていきたい。
それは人にとっても、ほっとする住環境に違いない。
小鳥の声が聞きたい。
 
私にできることを考えて、小さな里山環境づくりを生活のベースにしていきたいと思う。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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