メディアグランプリ

これ以上に刺激的な初デートをすることは、もうないだろう。


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記事:北江りな(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
定番のデートと言えば、なにを想像するだろうか?
遊園地、水族館、そして、映画など。
 
私と彼が最初にいったデートは、映画だった。
「行きたい映画があるんだけど、一緒にどう?」
 
「映画、いいね!」
二つ返事でオーケーした。
 
後から、ちゃんと映画の内容を聞いておけばよかった、と思った。
彼が行きたい映画は、普通の映画ではなかったのだ。
 
「無声映画」だ。
しかも、ホラー映画だった。
ドラキュラが主役……?
ツッコミどころ満載な初デートじゃないか。
 
 
無声映画とは、その名の通り、声が無い。
サイレント映画とも言う。
その代わりに、活弁士と呼ばれる人が、その場で声を入れるのだ。
 
声優の人が、生でアフレコをするようなイメージだ。
だが、活弁士が声優と違うのは、活弁士は、全ての登場人物の声を1人で演じ分けると言うこと。
1時間から2時間ぐらいは喋りっぱなしと言う、なんとも驚くべき職業だ。
 
私が、無声映画を知ったのは、そのデートが初めてである。
映画に誘われたときは、ポップコーン片手に見る楽しいファンタジーやドキドキするアクションを想像していた。
ところが、だ。
連れていかれたのは、映画館ではなく、小さなホールだった。
 
ん、どういうこと?
クエスチョンを頭に浮かばせたまま、中へ入る。
ポップコーンはない。コカ・コーラもない。
 
渡されたパンフレットは、映画でよくあるカラーなものではなく、モノクロで昔の新聞のような風貌だ。
 
ホールには、スクリーンが掛かっている。
そして、映画館には、ないもの。
舞台上の端っこに、小さなデスクが置いてある。
どうやらそこが活弁士の舞台のようだ。
反対側には、ピアノも置いてある。
映画館、というよりは、コンサートのようだった。
 
周りを見渡すと、客層は、ほとんど60代以上。20代の私たちは、少し浮いていた。
ねぇ、ほんとに、初デート、ここで合ってるの?
 
「ねぇ、どういうこと? 映画って、これ?」
思わず小声で聞く。
 
「まぁまぁ、見ててよ。きっと面白いから」
と自信たっぷりに言われる。
 
サイレントでホラー映画ってどういうこと?
 
不安と期待が、入り交じる。
もし面白くなかったら、この後は食事せずに帰ろう。
まあ、何の映画に行くか聞かなかった私も悪いけど。
 
 
無機質なブザーの音と共に、ホールが暗くなる。
始まりの合図だ。
そして、舞台上に2人の人が現われた。
1人は、マイクが付いたデスクへ。
1人は、ピアノへ。
空気が少し、スッと緊張感を持つ。
映画とは全然違う空気だ。
 
スクリーンにモノクロの映画が映し出される。
フィルムだろうか?
ピントが合うまでに時間がかかる。
 
映画でよく見る、予告編などは無い。
よくある、NO MORE 映画泥棒のCMも無い。
ただ、厳かに、モノクロのフィルムが映し出される。
音はない。
代わりに、活弁士が語り始める。
そして、ピアノがBGMとして演奏を始める。
 
活弁士の語りは、それは驚くべきものだった。
登場人物は、3人ほどいるのだが、全員を同じ活弁士が語り分ける。
ナレーションは、フラットな語り口で、耳なじみが良い。
ドラキュラの声、愛する妻の声、他の人の声。
全ての人物を語り分けている。
 
ピアノ演奏も、怖いとき、幸せなとき、色々な場面を音で表現する。
 
ホラー映画っていうのは、突然大きな音がしたりするから、
怖いんだろうと思っていた。
だが、サイレント映画でも、ちゃんと、怖かった。
それは、この映画上映に関わる全ての人の努力の賜物だった。
 
正直、最初はドキドキした。
この人は、1時間以上も、話し続けるのか?
噛んだりしないだろうか?
途中で咳き込んだら?
色々なことが心配になり、ストーリーに集中できる自信が無かった。
 
でも、そんなのは杞憂だった。
物語が進むにつれ、活弁士が喋っていることも、ピアノが演奏されていることも、全てを忘れ、ストーリーに集中している自分がいた。
隣にデートしている人がいることさえ、忘れていた。
 
無声映画には、長々としたエンドクレジットは無い。
終わりはあっけない。
でも、映画が終わり、舞台が明るくなったとき、
少しほっとした自分がいた。
舞台やミュージカルを見終わったあとのように、生の臨場感を感じながら映画を見たのは、初めてだった。
 
最後に、活弁士の方が、
「この映画は、ジャンルとしてはホラー映画に分類されます。でも、私は、この映画を人間ドラマだと思います」
と述べた。
 
確かに、ドラキュラが出てきたり、人が錯乱状態に陥ったり、
ジャンルとしてはホラー映画であった。
ただ、苦境の中でも問題解決へと立ち上がる人間ドラマでもあった。
 
それを感じられたのは、丁寧に演じ分けられた活弁士の方の力と、
その場に合ったBGMを的確に表現するピアノの力だろうと思った。
 
もうその時の彼とは別れてしまったが、とても印象に残るデートだった。
これ以上に刺激的な初デートをすることは、もうないだろう。
ただ、無声映画という新しいジャンルを教えてくれた彼には、とても感謝をしている。
個人的に、他のジャンルの無声映画も見てみたいなと思っている。
 
デートの行き先に悩んでいる方は、ぜひ試してみてはいかがだろうか。
(ただし、初デートは除く)
 
 
 
 
***
 
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2022-03-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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