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うっとうしいって、最高だ


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:北見 綾乃(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「ンもう、痛いなぁ。シロ、首を噛まないでよぉっ!」
肩に乗ったペットのセキセイインコ(メス)に怒ってみる。そんなことをしても彼女はきょとんとした目でこちらを見るだけだ。しばらくすればまた遠慮なくかじってくる。正直、ちょっとうっとうしい。
 
彼女の名前はシロ。体が白いからシロ。「安直な名前選手権」があったらそこそこいいセンまで進む自信がある。
 
シロは11歳になる。人間でいうと90歳近いとのこと。平均寿命を超えているので、立派なおばあちゃんインコである。
 
自分から肩に乗ってスリスリしてくるくせに、うっかりこちらの耳などが動くと、怒り狂って噛んだりする。
全く、本当に気難しいばあちゃんだ。
 
 
そもそも家でインコを飼いたい、と言い出したのは当時小学1年生だった次男だ。
 
「ちゃんとオレがお世話するから! ゼッタイ!」
 
そんな“ゼッタイ”の誓いはどこへやら。結局世話をするのは親の仕事になるというお決まりのパターンを通った。
 
シロを家に迎えた当初、彼女はまだ生後3週間くらいのヒナの状態だった。
 
餌は1日に5、6回お湯でふやかした粟玉をスプーンであげる。お腹がすいているときはピロピロと可愛らしい声をあげるが、満腹になると一転ギャギャギャと怪獣のSEにも使えそうな凶悪な叫び声を出す。「もういらないっ!」と、非常に分かりやすい意思表示だ。
 
1週間もすると、毛も大分きれいに生えそろってきて、羽を高速でバタバタするようになった。明らかに飛ぼうとしているが、飛べていない。笑っちゃうほど必死に羽ばたかせる。周りのものを吹き飛ばすほど風は巻き起こるのに、体は1mmたりとも浮いていない。鳥だからって、最初から軽々飛べる訳じゃないのだと初めて知った。
 
何週間かしてようやく一人前に飛べるようになると、好奇心のままにあちこちに行ってしまうようになる。
 
長らく掃除をサボっていたカーテンレールや扉の上。(汚れるし、病気になっちゃうよー! やめて!)
夫の大事なリモコン飛行機。(かじるのやめてー!)
 
カゴから出して放鳥したが最後、なかなかカゴに戻ってくれなくて、出勤時間が迫っているときなどかなり焦ったものだ。
 
家じゅうあちこちかじられたり、フンだらけされて掃除が大変だったり、大変なことも多かったけれど、それ以上に私たち家族を笑顔にしてくれたシロ。
 
 
ちょうど3年前。
そんなシロが突然下血した。
いつもエサくれ、エサくれと催促してばかりのシロが何も食べていない。
カゴの隅で膨れてじぃーっとしている。
おかしいなと思って下を見ると、新聞紙にいつもと違う赤黒いしみがついていた。
 
慌てて家から1時間弱のところにある小鳥専門の病院へ連れていき、急患として診察してもらう。
そして、ただちに入院となった。
相手は弱るのが早い小動物だ。覚悟はしていた。
数日後、出勤中に病院から電話があり、嫌な予感を覚えながら恐る恐る出た。
 
「シロちゃん、もしかしたら回復が難しいかもしれません。このまま治療を続けてもいいのですが、いったん慣れたおうちで過ごさせてあげるという選択肢もあります。どうされますか?」
 
最期を看取れるようにという意味あるのだろう。頭が真っ白だった。後先考えず上司に「インコが危篤なんです、帰ります!」と告げて、会社を後にした。
 
そのときは、もうお別れなんだと覚悟した。
「いつかこんな日が来る」と頭ではわかっていたものの、いざもうすぐいなくなってしまうかもしれないという現実をつきつけられて、胸がギュッと痛んだ。
 
しかし、諦めずに家で病院からもらった栄養剤の投与と保温を続けたことで、シロはその後奇跡的な復活を見せたのだ。生命の偉大な力に感謝……!
 
それから3年がたった今、彼女は涼しい顔で私の肩を占領し、毛づくろいをしている。
 
 
今まで本当色々あったな……。
 
シロの思い出を皮切りに、昔のことを思い返す。そこには振り返れば宝石だったという日々がたくさんあることに気付く。
 
例えば息子たちが小さかった頃。
あんなにチビだった息子たちも今は見上げるように大きくなっている。口の周りには無精ひげもあったりして、ちょっとむさくるしい。
立派に(?)育ったのはうれしいけれど、やっぱり昔の可愛くて甘えてくれていた時代が恋しい。
 
ただ、そんな輝いて見える思い出の数々の中には、チクっと少しトゲがささったような場面もある。
 
後追いが強く、トイレにまでずっとつきまとわれたとき。いい加減一人にして! と思ってしまったこと。
 
一生懸命話しかけてくるのを、「急いでいるんだから早くして!」とかまってあげなかったときのこと。
 
会社に急いでいこうとしているのに、なかなか保育園に向かわずに、遊んでしまう彼らに、とにかくイライラしてしまった日々。
 
今思えば宝石だった瞬間を、邪魔な石ころのように感じてしまっていた。
 
あのときはそれこそ精一杯に生活していた。それは間違いないけれど、もしその瞬間にその価値がわかっていたらと、後悔に似た思いもある。
当たり前だけど、もうあの時には戻れない。
 
そして、多分、今こうしている瞬間も、そうと気づかずに宝石をたくさん抱えているはずだ。
 
こうやって文章を読める目。
キーボードを打てる指。
しゃべることのできる口。
聞くことのできる耳。
そういったものだって、たぶんすごい宝物なのだ。
 
そして、今シロと過ごしている時間。
 
いつかシロの命の火が消えうとき、きっと真剣にこう祈るだろう。シロ、また肩にのって私の首にちょっかい出してきてって。
 
うっとうしいなんて、最高じゃないか。これは石ころなんかじゃない。
 
ちょっとくらい、首が痛くても、赤い噛み跡が点々とできても、シロと一緒にいるこの時間を大事にしたい。
 
まあ、贅沢を言えば、噛むのをやめてくれるとありがたいんだけど……!
あともうしばらく一緒にいてね、シロ。
 
 
 
 
***
 
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