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20代からやっておけばと後悔したこと


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記事:飯塚 真由美(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
20代の頃からやっていて良かったと思うことがある。
目尻の保湿だ。
なんだよ、美容の話かと画面を閉じそうになった男性の方も読んでいただきたい。周りの女性に伝えてほしいからだ。成人式の来賓のスピーチで、20代からの目尻ケアの重要性を話せばいいのに、と考えている位重要な問題だ。
 
見た目のどこに老いを感じるのかを考えたことがある。それがたまたま20代の時だった。
話をする時、相手のどこを見て年齢を感じたかを思い浮かべてみる。
首なのか? おでこのシワなのか? それとも鼻の横から口の両脇に伸びる、ほうれい線なのか?
 
私の答えは目元だった。
目を見るとその人の考えている事が分かる。自然と視線は相手の目に注がれることが多かった。そのせいか、笑う時に広がる目尻のシワも意外と印象に残った。
目尻のシワのせいで年齢以上に見えた人も案外いて、勿体ない気持ちだった。
 
一度できたシワを無くすのは、すごく大変なことだと分かった。空港の免税店で高額な保湿クリームを片っ端から試す必死な女性を何度も見た。
「だったら、シワが無い頃からシワができるのを防げばいいんじゃない?」
20代だった私が出した答えだ。
 
かといって何万円もする保湿クリームを買える訳も無く、お金をかけずに目尻ケアをする方法を考えた。
化粧水や乳液を塗る時、手の平に取ってから顔につけることが多いと思う。手の平にできた水溜まりに指を入れ、指先でまず目尻に塗る。こうして塗った一撃目は濃くしっかり付き、その部分はより潤う。その後、両手で広げて顔全体に伸ばす。
この習慣を今までひたすら続けている。とにかく目尻ファースト。
 
50歳になった。目尻のシワは、うっすらあるかも、無いと言えば無いかも、なレベルを保てている。
 
そんなある日、20代からやっておけばと後悔することが起こってしまったのだ。
 
鏡に映った自分を見て愕然とした。これは嘘であってほしい。
もう一度鏡を見る。さっきと変わらぬ姿だ。言葉も出ない位、ショックだった。
顔一面が、象の皮膚のように細かいシワで覆われていた。こんな自分の顔は見たことが無かった。
いつかニュースで見た、地球温暖化で深くひび割れ、トウモロコシが枯れ果てた農地の映像が頭をよぎる。
特に、目の下とまぶたのシワがひどくて気になった。
 
20代からやっておけばと後悔したのはここだ。目尻だけでなく、目の下もまぶたも、目の周り全体を保湿しておくべきだった。
目尻ファーストではなく、目の周りファーストだ。
 
シワの原因を考えた。
天気の良い日に車に乗って、1日中日光を浴びてしまった。
2月の東京は、乾燥した日が続いていた。テーブルに置いた時計の湿度計は26%だった。ここまで低い数字は見たことが無かった。
年齢のせい? しかし、この考えは一瞬で全消去した。もしかしたら最大の原因だったかもしれないが、そうとは認めたく無かった。私は負けず嫌いなのだ。
肌の乾燥を何とかすれば、あの枯れ果てた農地にも再びトウモロコシは実る。そう信じて、笑うとパキッと音を立てそうなひび割れた頬に手をやった。
 
こうして、お肌の緊急事態宣言が発出された。
専門家会議で話し合われた対策を次々に実践することになった。専門家会議メンバーは私しかいないのだが。
 
部屋を乾燥させないようにした。一番効果があったのは洗濯物の部屋干し。毛布や布団カバーといった大物を連日洗濯した。湿度ばかり目が行くようになってしまったテーブルの時計も、湿度50%~60%を示すようになった。
エアコンの風に当たらないようにするため、エアコンで急激に部屋をあたためてオフにし、その後は足元の電気ストーブと厚着で過ごした。
 
肌には何をしたかというと、家じゅうのシートパックを集め、朝晩2回、洗顔の後に顔に貼った。
韓国のお土産達を使い尽くすと、7枚のシートパックがまとめて1袋に入ったタイプを買って続けた。1枚あたり50円程度でシートパックが手に入るのは新たな発見だった。これなら気軽に保湿できる。
 
化粧水と乳液も変えた。免税店の高額なクリームも頭に浮かんだが、お金をかけずに不死鳥のごとく復活するのが今回の目標なので、一旦忘れる。
その代わり、ドラッグストアで「第2類医薬品」の表示のある化粧水と乳液を手に取った。「乾燥」や「治療」という字がパッケージに強調されている。
最短距離はこれかもしれない。箱の裏の、成分・分量欄の先頭に書かれたヘパリン類似物質に望みを託す。
 
肌の水分を奪われそうな気がしたので、パウダーファンデーションも宣言期間中は使わなかった。Zoom会議で私だけおでこがテカっていたのが気になったが、それよりお肌の復活のほうが大事だった。
シワが気になる目の周りは、第2類医薬品の乳液を持ち歩いてトイレに行くたびに塗り足した。ヘパリン類似物質よ、頼む。

1週間ほど過ぎた頃、入浴中に顔を洗っていたら頬の皮がぽろぽろとむけて焦った。
むけた場所を起点に指でこすってみると、皮のむける範囲は徐々に広がっていった。
なんか、いいんじゃない?
肌の新旧交代劇を感じた瞬間だった。
 
20日が経過し、肌は持ち直した。近々、宣言は解除される見通しだ。
大ショックだった目の下のシワも、そこまで気にならなくなった。無数にあった頬のシワも無くなった。20代から保湿していた目尻は、こんな時も頑張っていたのが驚きだった。
 
 
今日から始めたい、目の周りの保湿。続ければ、老化のスピードは遅らせることができる。
いくつになっても諦めてはいけない、肌の再生。手をかければ、肌は期待に応えてくれる。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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