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メディアグランプリ

営業マンの悲劇

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:飯髙裕子(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「今、キャンペーンで一枚5000円で羽毛布団を販売しているんです。」
私の耳に飛び込んできた言葉が、即座に脳にインプットされた。
 
もう20年以上前の話である。
息子がまだ小さかったころ、私は子育てで家にいたので、訪問販売の営業マンが訪れることも珍しくはなかった。
若いころの私は、勧誘の電話もはっきりと断ってすぐに切るということができなくて、つい話を聞いてしまい、時間ばかり取られているようなことが多かった。
まして対面の訪問販売に至っては、今のようにドアホンでお断りして開けないというタイプのマンションでもなかったために顔を見て断らなければならないという試練が課されたのである。
 
自分でも嫌になるのだがつい、断られた側の気持ちを考えるとなんか胸がチクリと痛むような罪悪感にかられてしまうのだった。
 
そして一枚5000円の羽毛布団である。
今なら、というよりもそんな格安の布団某有名メーカーの商品では、ありえないのだが当時の私は誠に都合のいいように情報を受け取ってしまったのである。
若い営業マンは、嬉々として部屋の中で見本の羽毛布団を広げ説明を始めた。
 
確かにとてもいい商品であり、とてもお買い得である。それが5000円であればだ。
 
疑いもなく信じている私は、そんなに安いのなら、母にも教えてあげようと思い立った。
営業マンに、実家の母にも連絡して購入するかもというようなことを多分話したような気がするのだが、その場で母に電話をかけ、とても安い羽毛布団があるとしゃべり続けたのだった。
 
どうも様子がおかしいと営業マンも思い始めたのだろう。
説明が終わって、広げていた布団を片付けながら、なにやら月々5000円というようなことを説明していたように思うが、布団を売る意欲が消えうせたかのようにそそくさと帰ってしまった。
 
残された私のほうもとんでもない勘違いにようやく気付き、連絡した母に誤りの電話を入れなければいけない羽目に陥ったのである。
なんでこんなことが起きたかといえば,意思の疎通がうまくいっていなかったからである。
 
人は、とかく自分の都合のいいように物事を解釈する傾向がある。
特に自分の願望がかないそうな場面においては、それが顕著になりがちだ。
普通は、人の言う言葉を受け取ったら、それがどういう意味かを考えるだろう。
そして、相手が言わんとしている意味を考え、自分が思っていることと一致しているかという判断をして言葉を返す。意思の疎通とはそんな言葉のキャッチボールが続くことが必要なはず。
 
この時はどうだっただろうか? 私は安い布団が欲しかったし営業マンの話を全部きちんと聞いていなかったのかもしれない。
営業マンも肝心なところをわかりやすく話さなかったのかもしれない。
監視カメラの画像で検証できないのがとても残念だが、真実は闇の中だ。
 
コミュニケーションは、ジグソーパズルのようだと思う。
ピースがあっているかどうかいつも確かめながらぴったりと合うものを探している。
よく似ていても少しでも違っていればぴったりとははまらないのである。
違っていればまたほかのピースを試してみる。
色や柄や形、あらゆる角度から確かめぴったりとはまったときは思わず微笑んでしまう。
人とのコミュニケーションも、そうだろう。
相手の言うことを聞いて何を伝えたいのか、想像する。そして自分の想像が正しいかどうかを確認する。もしそれが違っていればさらにやり取りを重ねてぴったりと合うまで続けていく。
ただ、人とのコミュニケーションの場合は、ジグソーパズルのように簡単ではない。
感情が先に立ってしまうことが多いからだ。
つい売り言葉に買い言葉というようないさかいが起きたり、自分とは考え方が違うとキャッチボールをやめてしまったりすることもある。
 
本当は自分以外の人と全く同じ考えのことというのはそんなに多くないはずなのだ。同じ部分はあっても全く同じではないから、ピースがぴったりと合うのはほんの一部分なのだ。
 
けれど、形の違うピースがたくさんあるほどジグソーパズルは複雑で面白い。
ぴったりと合うものを見つける楽しさが倍増する。
そんな風に考えると、コミュニケーションは楽しいものになるのかもしれない。
人の数だけ考え方も言葉の伝え方も違うものだからそれをどんな風に受け取るかそれが大切になってくる。
相手に気持ちを想像すること、そして確かめること、これが一番大切なことなんだと気づいたのは、ずいぶん後になってからのことだ。
あの頃今のように考えることができたら、きっと違う対応ができたに違いないし、あの営業マンももっと上手に羽毛布団を売ることができたに違いない。
どちらにしても、営業マンには悲劇だったろうなとおかしくなる。
こんな経験も、私を成長させてくれる通過点だったのだなとふと思い出した出来事に、今でも笑ってしまうのだ。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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