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アニキは、何刀流?


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:水野 敬(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
いくつもの才能に秀でた人がいる。
その人の名は、「アニキ」
 
「ドッカ―――――ン!! カランカランカラン……」
 
突然、空から机が降ってきた。
恐る恐る、空を見上げる。
 
「入学おめでとう! 俺らからの入学祝いだ! ギャハハハハー」
 
高校入学式当日、上級生からの手荒い歓迎だった。
入学した高校は、「ある特別な制度」で、ガラが悪かった。
 
ある特別な制度とは? それは、「グループ合格制度」なるもの。
 
一般的に、公立高校と私立高校の両方を受験する。
経済的な事情で、公立高校しか受験できない家庭もある。
が、受験に失敗したら浪人生になる。
それを回避するために、グループ合格制度という、セーフティーネットがある。
 
この制度対象になる高校の基準は、「定員割れを起こしている」こと。
僕の入学した高校は、まさにこの基準を満たしていた。
つまり、「人気のない高校」。受験すれば、ほぼ合格となる。
 
ただし、制度の弊害ある。
公立しか受験しない場合、学区内で偏差値最下位の高校が不合格でも、中堅レベルのうちの高校に入れてしまう。
結果、入学時12あるクラスが、卒業時は9クラスに減る。中退、退学者が異常に多い。
ちなみに、大学進学率は1%未満……。
 
そんな中、特異なケースで入学したクラスメートがいた。
彼は、学区内の1番賢い高校(毎年東京大学合格実績あり)を受験するも失敗。
グループ合格制度で、うちの高校に回された人物だった。
 
彼の初自己紹介の立ち回りは、圧巻だった。
「俺は、高校受験失敗のかりを大学合格って形で返そうと思っている! みんな、よろしくな!」
 
クスクスと笑い声が聞こえる。
彼に向けられた視線も、あきらかに悪意がある。が、彼はひるまない。
 
「お前ら、何を笑ってんだ? 応援するのが筋ってもんだろ。とりあえず笑った奴、いますぐ表に出ろ!!」
 
静まり返る教室。誰一人として立ち上がらない。
無法地帯の中で、彼が治外法権を獲得した瞬間だった。
 
頭も良い。度胸もある。喧嘩も強い。そして、自分の意見をはっきり相手に伝えることができる。同じ年なのに、世の中にはすごい人がいるもんだなーと感心した。
 
その日を境に、彼についたあだ名は、「アニキ」だ。
 
そんな彼と仲良くなったのは、1学期の中間テスト終了後のこと。
学年成績順位1位だった彼に、僕が英語のテストで勝っていたのだ。
 
「お前すごいな! どんな勉強方法しているの?」
 
突然、彼から声をかけられた。その日から何年も前から親友だったかのような付き合いが始まった。家にお邪魔して一緒に勉強をし、夕飯までご馳走になる関係になった。
 
アニキの家は1LDK。そこに家族5人で暮らしていた。
家の窓は割れたままで、夏は蚊が自由に出入りし、冬は冷気が入る。炬燵なんてない。
でも、家族みんなの笑顔は幸せそうだ。ハングリー精神も持ち合わせていた。
 
放課後になると生徒を集め、自主的に補講を開き、学校でも一目置かれる存在だった。
そのアニキのおかげで、クラスから赤点をとって留年する者はいなかった。
 
月日は流れ、いよいよ大学受験を迎える最終学年となった。
僕は、大学受験をアニキから勧められ、1校だけ受験するも不合格。
予備校や塾にも通っていなかったので当然の結果だった。
一方のアニキは、東京大学合格こそ逃したものの、国立大学への進学が決まった!
この年、大学進学者はアニキ1名。大学進学率1%の人になった。
 
「アニキの銅像が、中庭に立つらしい!」
「いやいや、俺は校章がアニキの顔に変わるって聞いたぞ!」
「ちがう! ちがう! アニキは市内の飲食店、全部タダになるって話だったぞ!」
 
噂話は、なぜか大きくなる。こんな現実離れした話が、まことしやかに語られるほどの出来事だった。そういえば、初自己紹介で話したことをアニキは実現させたんだな……。
 
卒業式の一ヵ月前、いつもとおりアニキの家にお邪魔していた。
 
「敬は、勉強の仕方を知らないだけ。浪人してでも来年受験したほうが絶対にいい。一足先に大学で待っているよ」
 
進学の予定はなかったが、このアニキの一言で、大学に進学する! と約束をした。
 
次の日から卒業式の日まで、毎日20時~翌8時まで運送屋でアルバイトしてから登校した。
予備校代を貯めるためだ。
 
高校卒業後、貯金で予備校に通えたのは、前期のみだった。
アルバイトしながら予備校に通う生徒もいた。が、自分の実力はわかっている。
毎日19時間勉強しているが足りない。どうしても勉強時間を削るわけにはいかなかった。
 
後期は独学か……。アニキとの約束は果たせないかも知れない……。
途方に暮れていると、父親から呼ばれて100万円を手渡された。
 
「これで、予備校代も受験料も全て払いなさい。よくよく考えて使うように」
 
初めて見た大金を両手でしっかりと受け取り、父にお礼を伝えようとした。
が、泣いて声にならなかった。孤独感と不安から解放された安堵の気持ちと感謝の気持で涙が止まらなかった。きっと裏で、母親が交渉もしてくれていたんだ。
 
翌年、大学合格発表の日。
アニキから受験日に届いた手紙をお守りに、掲示板の中から自分の番号を探した。
僕の番号が掲示板にあった!!
おやじ、おふくろ、アニキ! やった俺、合格だ!!
 
アニキからもらった手紙には、こう記されていた。
「敬に出会えて、俺は大学に進学できた! 敬もやればできる!」
 
アニキと同じ大学ではなかったものの、大学時代も交流が続いた。
大学に進学していなかったら、世界を旅することも妻にも出会うことはなかったと思う。
 
昨今、スポーツ界で二刀流の日本人が大活躍し、人々に夢と希望と勇気を与えている。
そんなニュースを見るたびに、いく刀流もこなした彼を思いだし、いつも僕は胸を熱くしている。
 
そう、「アニキ」のことを思い返しながら。
 
 
 
 
***
 
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