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18年乗り続けた車と今日お別れした


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記事:垣尾成利(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
18年乗り続けた車と今日お別れした。
 
2003年12月から今日まで、18年にわたって我が家の思い出を乗せて走ってくれたパートナーはトヨタVOXYだ。
 
数年で次々に車を乗り換えていく人も多いけれど、私は気に入った車に長く乗り続けたいと思っていて、これまでもライフスタイルが大きく変わる時に車を乗り換えてきて、この車は3台目の車だ。
 
社会人になり、初めて買った車は中古のスポーツカー。トヨタカローラレビンGT-APEX、1600ccのマニュアル車だった。
独身時代の遊びの足として活躍してくれ、存分に楽しませてもらった。
この車には5年近く乗った。
 
結婚を機に、妻が運転できるようにと次に選んだのはホンダS-MX ローダウン、2000ccの4人乗りのオートマ車だ。
夫婦ふたりであちこち移動するにはとても乗りやすく使い勝手が良かったけれど、子どもができてチャイルドシートを取り付けたら荷物が全く乗らなくて、我が家のライフスタイルの変化に合わなくなり7年で手放した。
 
その時やってきたのがVOXYだった。
 
3列シートのミニバンで、チャイルドシートを取り付けても問題なく荷物も人も満載できた上にエンジンもしっかりしていて力強く走る車だ。
 
私たち家族と、両親、弟の6人を乗せて移動するのにとても重宝したし、職場の行事などで大人数を積んで移動するのにも大活躍してくれた。
 
この車に買い換える時、決め手になったのは些細なことだったけれど、最後の最後までそのお気に入りのポイントは変わらなかった。
 
今となっては珍しい機能ではないが、上手に走るとメーターのパネルの左端に「eco」と書かれたランプが緑色に点灯するようになっていて、これが点灯するように運転していれば環境にやさしいエコな運転ができている、というものだ。
試乗した時にこのランプが灯った時に、とても運転が上手いと褒められたような気がして嬉しくなり、その一点でこの車に惚れて購入を決めたのだった。
この「eco」ランプのお陰で丁寧で安全な運転をいつも心掛けることができた。
今日、最後のお別れの時にも、このランプが少しでも長く点灯しているようにと思いながら、丁寧に運転をした。
 
ずっとお世話になっている車屋さんも、「この車のエンジンは歴代VOXYの中でもとてもよくできているエンジンなので、大事に乗れば長く乗れますよ」と、いつもそう言ってくれていて、実際なんのトラブルもなく走ってくれていたので、まだまだずっと乗り続けよう、と思っていた。
 
一年前に車検を受けた時にも、まだまだ乗るつもりでいたのだが、家族のあり方を思うと、この車でなくて良いのかもしれないな、と思うようになってきた。
 
「そろそろ車を乗り換えようかな。もう、この車でなくて良くなったような気がするなぁ」
 
そう感じるようになったのは去年、車検を受けたあと、父が亡くなり二年が経とうとする頃だった。
 
墓参りの時にだけ家族全員で出掛けるのだが、それ以外で大人数が乗ることはなくなり、高校三年生になった息子とも一緒に出掛ける機会が減り、妻とふたりで乗ることがほとんどになってきた。
 
そうなると、3列シートの利便性を活かす場面は激減し、大きいことがマイナスに感じることが増えてきた。
 
ネックになるのは維持費だ。
自動車税は13年を超えると15%割増となる。
VOXYの場合だと39500円から45400円に増額となる。
 
また、燃費も今の車に比べると悪くて、リッター10キロ程度しか走らない。
 
そんな現実も考えると、そろそろ買い替え時かなと思うようになったのだ。
 
まだまだ乗れるし愛着もある。
手放す理由は無いけれど、もっと小さな車で十分だね、と妻とも相談し、今度は軽自動車にしようと言うことになったのが2021年9月のことだった。
 
乗り換える車は決まったけれど、コロナ禍と半導体不足の影響でいつになったら手に入るかわからないという状況だった。
急いでいないし、VOXYに乗れる時間がまだしばらくあると思えたのもありがたかった。
 
年内には納車できるだろう、そんな目論見も大きく外れて半年近くかかってしまった。
今年に入り、2月にようやく生産が動き出したと連絡を受けた。
 
いよいよお別れの時が近付いてきたな、と思うと、毎回乗る度にこれまで以上に丁寧に乗って「eco」ランプが点灯する運転を意識するようになった。
 
残された時間、妻と出掛ける時間はこの車との思い出話をする時間となった。
この車に乗り換えた初日、車庫入れが大変でいきなり右のミラーをぶつけてしまったこと、チャイルドシートを装着しても狭くなく、ウォークスルーで2列目に移動できるから息子の顔を覗き込むのが楽にできたこと、父が病に倒れ、慌てて病院に搬送する時にも大活躍してくれたこと、幾度となく息子の送迎で自転車ごと載せて帰ってきたこと、旅行に行きフルフラットにしてごろ寝をしたことなど、いろんなことを思い出しながら運転した。
 
最後、荷物を片付けていたら、一番後ろの席のドリンクホルダーから息子が4歳の頃に拾ってきた小石や蝉の抜け殻が出てきた。
その時の光景が思い出された。
 
息子が生まれた時にやってきたこの車と過ごした18年の時間。
それがもう終わろうとしている。
 
父も他界し、息子も高校を卒業する。
家族のかたちが大きく変わっていったことがこの車とのお別れを決意する理由となった。
 
ライフスタイルに合った車に乗る、それが車にとっても家族にとっても幸せなことだと思う。
 
翌日、いよいよお別れの時が来た。
最後に妻と一緒にVOXYと写真を撮った。
 
そして引き渡しのためのラストドライブ。
息子も一緒に来てくれ、家族三人でVOXYに乗った。
 
車庫から出す時、エンジンをかける時、ひとつひとつが最後だと思うと感慨深いものがあった。
 
18年もの長きにわたり、我が家の思い出を載せて走り続けてくれたVOXY。
 
本当に良い車だった。
 
心からありがとう。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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