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手段と目的のあいまいさ

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:赤尾航 (ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
これは都内勤務田舎暮らしの社会人一年目が実家を出て出来た趣味の話である。
毎朝渋谷近くの都心へ通勤する一方で、暮らしているのはコンビニとスーパーと昔ながらの居酒屋以外何もない県外れの田舎だ。もともと実家は都心にあったが、社会人になるこのタイミングで家を出て、今の生活をし始めて1年ほど経つ。
 
住む場所が変わることで生活スタイルや趣味が変わることはよくある。
僕も例外なくその一人で、これまでは持っていないかった趣味がひとつできた。それは自転車に乗ること。田舎に暮らし始めてから、父のおさがりのマウンテンバイクを引っさげ、休日は河原をよくサイクリングするようになった。
 
なんてことない話なのだが、サイクリングをする時、いつも心に引っかかることがある。
それは何か目的がないと自転車に乗ってはいけないと思っていることだ。そしてその目的はサイクリングではいけないというややこしいものだ。つまり、どこかに行く手段としてなら自転車に乗ってもいいが、目的地もないままに自転車に乗ることを自分には許せないのである。
本当はただ、河原を走ることが好きなだけなのに、わざわざ途中の経路に河原を通りそうなカフェを見つけては、そこで仕事をし自転車で行き、帰る。仕事をする必要がない日は、なんとか買うものを見つけだしては、徒歩1分にあるスーパーで買える商品であっても、わざわざ自転車で30分かけて大型ショッピングモールで買い物をする。そうでもして目的を作らないと、自転車に乗っていいという許可を自分に出せないのだ。
 
思い返してみると、車に乗ることが好きだった時もそうだった。新幹線や飛行機で行く方が効率もいいし、安いのに、わざわざ徹夜で時間をかけて車で目的地まで行ったり、または、車で行くような場所に行きたいという友達を見つけては率先して車を出すと誘い、目的地には全く興味がなくても、ドライブし満足していた自分がいた。
 
多分この文章を読んでいる方の中にはいるではないだろうか。旅行よりも旅行途中のドライブが本当は好きなんだよなぁという方も。多分その感覚に近しいとも思いつつ、僕の中では、絶対ドライブを目的としてはいけないという強固な信念があるように感じる。
 
ただ、その信念のおかげで出来た趣味もある。つまりはわざわざ目的を作らなければいけないがゆえに出来た趣味だ。
例えば、サウナだ。きっかけは友達にサウナに連れて行ってもらったことだが、それ以降、家から20分ほどのサイクリングにはちょうどいい距離にサウナがあることに気づいてから、毎週行くようになった。なんなら、サウナに行くまでには河原もあり、平坦な道も多く、サイクリングコースとしてもとても良いコースでつい通ってしまう。
そして今や、サウナが好きなのか、サイクリングが好きなのかわからないが、毎週のようにサウナに通うようになった。(多分どっちも好きなんだろう。。)
大学時代に旅行好きだったのもそのたぐいだ。本当は旅行が好きなのではなく、旅行に行くまでのドライブをしたかっただけだ。ただ、傍から見たら毎週のように車でどっかに行く僕は旅行好きに見えたのだろう。
 
いつかの誰かが「手段を目的化してはいけない」と言っていた気がする。
その教えを忠実に守っていると思っていた僕は一方で、手段のために目的を作り、もはや目的が手段化しているようにも感じる。自転車に乗りたいがためにサウナ好きになったり、ドライブに行きたいがために旅行好きになった。いずれも、目的はサウナや旅行で、手段はサイクリングやドライブだと思っていた。だが、違ったようだ。僕にとっての目的はサイクリングであり、ドライブなのであるならば、手段であるサウナや旅行を目的のように語るのはもはや手段を目的化している。
ああ、なんだかややこしくなってしまった。
こうやって書いていると、手段も目的もその境界線は曖昧なものなんだと思う。サウナも好きだし、自転車に乗ることも好き。どちらが手段でどちらが目的かという優劣はない。両方組み合わさっているから、機能しているだけだ。よくお金が目的になってはいけないという話があるが、組み合わせによってはお金を稼ぐこと自体が楽しいことだってある。そんな壮大話しをしたいわけじゃないが、こんがらがってきたのでまとめると、手段も目的も組み合わせによっては両方目的になるのではということだ。
そろそろこの記事を書くことを目的に来たサウナにはいるとするか。あれ、サウナが目的だったんだっけ、自転車に乗ることが目的だったんだっけ。。
 
 
 
 
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2022-03-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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