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結婚記念日にすべきこと


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記事:寺野 智和(ライティング・ゼミ12月コース)
 
 
「お父さん、今日は結婚記念日って表示されているよ?」
 
頭痛がするという小3の息子を病院に連れていく道すがら、病院の場所を探すスマホに表示されたスケジュールアプリのリマインダーを見て息子が言った。
 
一瞬、何を言っているのかわからなかったのだが……
 
あーーーーーーー!
 
確かに結婚記念日、というか入籍記念日だった……
 
今の今まで忘れていたよ。
 
病院に到着して呼び出されるまでの待ち時間、息子と「結婚して何回目なの?」「何かしなくて大丈夫なの?」などとやりとりしながら、
 
なんで忘れていたのだろうか?
 
と自問自答していた。
 
妻もきっと忘れている、と自信を持って言えるぐらい記念日的なものに無頓着な人なので、忘れていたことについては怒ったり喧嘩したりすることはないので、その点については安心している。
 
それでも、夫の義務とばかりに、会社の福利厚生制度を利用して、メッセージ付きのお花のギフトを毎年送っていたのだけど、その制度が廃止されたことにより、記念日に気づくトリガーがなくなってしまったということが忘れた原因の一つにある。
 
それもあるのだけど、結婚して14年立つ中で、自分たちの中で「結婚」ということの意味合いが変わってしまったのだろうか?
 
という問いも湧いてきた。
 
どうだろうか?
 
少し、考えてみたい。
 
“結婚とは、水が出るかわからない井戸を共に掘ることである”
 
結婚するという人生の決断に踏ん切りがつかなった当時、たまたま読んでいた河合隼雄さんと村上春樹さんの対談本でのやりとりから、ふと降ってきた定義だった。
 
経済的なメリットだとか、種の保存だとか、好きなんだから理由なんてないという理由とか、そういった世間の結婚観がどうにも納得いかなかった中で、「井戸掘り」という言葉が自分の中で深く刺さった。
 
ここでいう井戸とはなにか?
自分であり、自分と社会を知ることだろう。
 
出るかどうかわからない、つまり、何が起きるか、何が出てくるかわからない、保証なんてない人生の井戸掘りを、二人ですることを決める、ということに結婚の意義を感じたのだった。
 
その言葉を見つけて、結婚することを決めて、現在に至る。
 
その意味合いは、今も変わっていない。
子供二人も増えて、より盛大に井戸掘りしている感じもあるし、それに幸せも感じている。
 
でも、それだけでもなくなっている感じもある。
 
なんだろうか?何か引っ掛かる。
 
結婚の意味は、変化するのかもしれない。
 
結婚とは、誰に聞いても知っている言葉であるけども、今の社会を眺めてみると、その指し示す意味は変わっているのではないだろうか。
 
これまでであれば、異性の成人男女が両者の合意によって届け出て法的に成立するものであった。
 
だけど、最近では同性婚であったり、法的に届出はせずにお互い合意だけを拠りどころにした事実婚なども広がり始めている。
 
なにげに、結婚という言葉の意味が大きく揺れている。
 
ふと思い出したのが、先日、本で読んだスイスの哲学者 ソシュールの考え方だ。
 
『言葉の意味は、他の言葉との差異によって決まる』
 
この考え方から、結婚の意味を考えてみるとどうなるだろう。
 
結婚と反対の意味は何だろうか?
 
離婚だろう。
 
結婚がなければ、離婚もなく、離婚がなければ、結婚もない。
右がなければ、左がなく、上がなければ、下がないように。
 
また、同性婚、事実婚など最近起きていることも加えて考えてみると、一つのシンプルなことが見えてくる。
 
結婚と離婚、そして同性婚などを通して、共通しているのは、“お互いの合意の上で成り立ち、そして立場を選ぶ”ことではないだろうか。
シンプルに見れば、“共にいる”か“共にいない”か、どちらを選ぶか、その違いだけかもしれない。
そして、その違いが、結婚に意味をもたらしている。
 
“結婚とは、共にいること”
 
結婚は井戸掘り、という意味を見つけて、結婚に踏み切った当時の自分と比較すると、この定義は、えらくシンプルに見える。
でも、それだけでも良かったのかもしれないとも思えてくる。
 
そこには家柄とか、経済状況とか、年齢とか、性別とかは関係ない。
ただ、共にいることを選ぶかどうか、それが結婚だ。
 
そんな考え方からすると、“結婚記念日は、共にいるかどうかを確認する日”になるだろう。
今、“共にいること”を考え、そして“これからもいることを確認する日”と思えば、何を贈るかとかではなく、お互いの意思確認をすることが大事なことだと思えてきた。
 
ピンポーン
 
「寺野さん、診察室にお入りくださ〜い」

チャイムと共にスピーカーから聞こえてくる看護師さんの優しい声に、ふと現実に戻ってきた。
 
「はい!」
 
慌てて、マンガに夢中になっていた息子に声をかけ、手を取り診察室に向かいながら、心にあるフレーズが湧いてきた。
 
“来年も、共にいてくれますか?”
 
後から妻に会う際に、息子の診察の結果や診察までの間に病結婚記念日について考えたことを伝えた後、シンプルにこのフレーズを聞いてみようと思った。
 
ちょっぴりその反応を聞くのは怖くもあるのだけど。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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