時期はずれに「茄子愛」を叫ぶ
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:早川実花(ライティング・ライブ福岡会場)
「帰ってくるなら、茄子の天ぷらば用意してやらんね」
101歳で昨年亡くなった祖母は、私が実家に帰ることが分かるとすぐに、母にこう命じていた。
私は茄子が大好きだ。
茄子料理の中でも、茄子の天ぷらがたまらなく好きだ。
更に言えば、揚げた次の日のちょっとしなっとした茄子の天ぷらが好きなのだが、これについては公言したこともなく、家族以外に打ち明けたのは初めてだ。
茄子は栄養が無いと思われがちだが、そんなことはない。
食物繊維が豊富で、カリウムも含まれ、皮にはポリフェノールの一種のナスニンが含まれている。
ただ、夏野菜なので、身体を冷やす。
いくら好きでも冬には極力食べないようにしている。
そろそろ私的茄子不足に陥りつつあるので、このテーマが頭をチラついて仕方なくなった。
生でもよし、焼いてもよし、揚げても煮てもよし。
茄子は言わば、「八方美人」である。
気配りが上手で、協調性がある。誰とでも仲良くなれるし、人の良いところを理解しつつ、引き立たせられる。その上で、自分自身の魅せ方も知っている。
八方美人というとマイナスイメージで捉える人もいるかもしれないが、私は八方美人は素晴らしい特性で、能力だと考えている。
茄子の話から逸れかけたが、茄子は大抵の料理や食材には馴染むことが出来る。
メインにはなりにくいが、至る所に身を潜ませて存在している。
学校で例えるなら、クラスに居てくれると雰囲気が良くなり、まとまりが良くなる感じの生徒だし、会社で例えるなら、表立った仕事はしないが、みんなの仕事を裏で支えているベテランの事務員さんのような人だと思う。
茄子で好きな料理は数えきれないほどあるが、夏になると自分でよく作るのは、「茄子南蛮」だ。茄子を乱切りにし、薄く小麦粉をはたく。そして多めの油でこんがり焼く。あとは弱火にして、砂糖、酢、醤油を同比率で合わせた調味液を入れて絡める。
このなんともシンプルな料理がここ数年の「ベストオブ夏レシピ」である。
なんでこんなに茄子が好きなのだろう。
意味なんて無い、と言い切ればそれまでなのだが、私には何かがある気がしてならなかった。
そこで、今回「茄子×私」で、考察してみた。
茄子の味が単純に好きなのか。
それとも、茄子の食感が好きなのか。
はたまた、茄子のような、みんなに馴染める人になりたかったのか。
……
全部だ。
味も食感も全部好きだし、茄子みたいになりたかった。
なんとも言えないジューシーな茄子の味も、時にふわふわで、時に滑らかな優しい食感も好きだ。
また、幼少期から人と考えていることが違うと感じること、出来事がたくさんあって、自分の本当に考えていること、本音はなかなか言えなかった。
紙だけが私の本音を全て受け入れてくれたので、紙とペンをずっと側に携えていたような子供だった。
無意識下で、(茄子みたいに)みんなと馴染めたらいいのにと思っていた。
もちろん(茄子みたいに)は後付けだが。
そう考えると、茄子が好きなだけではなく、密かに茄子に感情を投影していたのではとさえ思える。
そして私は今、事務局代行の仕事をしている。良く考えたら、このお仕事と茄子には共通点がたくさんある。
表立って、人前で自分を出すことはしないが、お仕事をいただいている先生や認定コーチの皆さん、受講生とも幅広く関わる。あくまでサポートに徹する。まだまだそのゾーンにはいけていないのだが、「縁の下の力持ち」になれるポジションである。茄子と事務局代行。こんなところに共通点を見出した。私にとってやりがいのあるお仕事だ。
やっぱり茄子は私の生涯のパートナーだ。
小さい頃から畑で茄子をたくさん作ってくれた父、その茄子を美味しく調理してくれた母、私を“茄子好き認定“し、たくさん食べるように勧めてくれた祖母、そして、茄子などあまり興味もなく妹の私の取り分をたくさん残してくれた兄も含め、家族みんなに感謝である。
夫は天ぷら屋さんに行くと、必ず自分の茄子の天ぷらを私のお皿にさりげなく入れてくれるし、なんとも「茄子バカ」は甘やかされている。
ここまでで約30回、茄子という文字を打った。
それだけでも幸せだ。やっぱり茄子バカだ。
たとえ茄子に嫌われても、茄子のことが私はずっと大好きだ。
ああ、夏が待ち遠しくて仕方ない。
茄子を思いっきり食べられる夏。
秋も秋茄子が美味しい季節。
いつまでも茄子愛を語れそうでキリがないので、最後に、
「茄子のことが、好きだ、好きだ、大好きだーーー!!」
昭和の恋愛ドラマの中の告白シーンみたく茄子愛を文字通り叫んで、締めくくろうと思う。
***
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