一兎を逃して、二兎を得た話
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:山本のぞみ(ライティング・ゼミ2月コース)
「合格ラインは37点……やっぱりそうか」
2018年12月、私はとある試験の不合格を知り、深く落ち込んでいた。
それは、人生で3度目の宅建士試験だった。
宅地建物取引士(宅建士)という資格をご存知だろうか。不動産売買に関わる資格で、平成27年に国家資格になった。毎年3万人ほどが受験し合格率は概ね15%程度、難関とまではいかないが独学ではハードルが高く、資格スクールに通えば20万円以上の費用がかかる。
現在の法律では、不動産屋の従業員5人のうち1人は宅建士を置かなければならないと決められており、不動産屋にしてみればその資格保有者の存在が会社の行く先を左右するほどだ。
住宅建築に関わる仕事に就いている私は、会社の「取得推奨資格」となっているこの資格を以前から狙っていた。取得後は資格手当として、なんと月額12000円もらえるのだ。
過去の挑戦では「受かったらいいな」程度の気持ちだった。“名刺に書ければハクがつく”そんな程度の動機で試験に合格できるほど、私は要領も頭もよくなかった。
結果として2回試験に落ちた。(申し込みをして試験会場に行かなかったこともあるので、正確には3回)
過去の失敗経験から、やっと「この資格は独学では無理なのだ」と悟った私は、社会人10年目の節目に何とか合格してやろうと、20万円を資格スクールに注ぎ込んだ。
2018年3月のことだった。試験は10月、あと7か月ある。
当時は長女の育児休暇中で幸い時間の融通がつけやすかった。ちょうど私の母親が定年退職して時間を持て余していたこともあり、私がスクーリングする際は子どもを見てくれることになった。
「お母さんも応援してくれるし、時短社員で復帰したらあんまり稼げないし、頑張らないと!」
こうして意気揚々と資格の勉強に臨んだ。
育休中はどうしても家の中に閉じこもりがちになるので、勉強の為に外出できること自体息抜きのひとつだった。
母親の後押しや息抜きの楽しみもあり、勉強は順調に進んだ。試験2か月前の過去問模試では50点満点中48点と、自分でもびっくりするほどの高得点をたたき出した。
「私、結構イケてんじゃな?」
資格取得に向けてワクワクが募っていった。
宅建士試験に合格するには「500時間の勉強が必要」「10年分の過去問を5回通り解けば合格できる」と言われている。
私は、これらの言葉を信じて、勉強時間は何とか450時間、過去問も5回通りひたすら繰り返し行った。
特に育休終了した9月からが大変で、朝起き抜けに1時間、昼休憩に30分、仕事が終わってからお迎えまでの30分、毎日勉強時間を捻出することに注力した。
そして、満を持して試験当日。自己採点の結果は35点だった。
宅建士試験の合格ラインは50点満点中7割程度が通例。
私の点数は7割ぴったりの35点。うう、これは雲行きが怪しい……
すぐさまネットで「合格ライン予想」を確認する。手が震えている。
資格スクールごとに、その年の「合格ライン」が予想が発表されるのだ。試験日はSNSでも「合格ライン」が検索上位に来るほど、資格関係者には注目されている。
37、35,36、37、38、36、37……
各社の予想を見ると、私の点数では微妙に足りない。
試験のプロが見るには、この年の試験はどうやら「簡単な方」だったようだ。
……あれ? これ不合格じゃない? うそでしょ!
あんなに頑張ったのに!?
やりきれない、本当にやりきれない。応援してくれた母親に申し訳ない。
早朝から起きて勉強したのに!昼休みも毎日勉強したのに!
ここ2週間は、とにかく勉強に時間をつぎ込んで、家の中はメチャクチャになっている。
それでも私は受かることができなかった。あぁ、なけなしの20万円が……私の450時間も、全部ムダになってしまった。
試験のその日は、何度も過去の自分を悔やみ、涙を浮かべながら家事をして、子どもを寝かしつけてそのまま自分も寝た。
いや、眠れない。どうしよう?
手持ち無沙汰に見たSNSで、同じ様に不合格を嘆いている人達が居ることを見つけた。
あ、私だけじゃないのか。
忘れていたがこの資格、85%が不合格になるような代物だ。勉強したら受かるというような、甘いものではない。私はどこではき違えていたんだろう。
そう思いながら、気づいたときには資格取得の為の新しい SNSアカウントを作っていた。
よし、もうこれは次に進むしかないから! ここで止めたら今までの努力が本当にムダになる!
次の晩、私はFP(ファイナンシャルプランニング技能士) 2級のテキストを購入して家に帰った。
次の宅建士試験が2019年10月。12か月ずっと頑張るのはさすがに辛いし、モチベーションを高く保てない。一旦、難易度の低いFP試験に合わせて勉強し、その後また宅建士の勉強を再開しようと決めた。
不合格にはなったものの、2018年の頑張りは無駄ではなかった。
一番大きかった功績は「朝の勉強時間を習慣化」していたことだった。
朝は必ず5時半に起きて、朝食を食べながら動画講義を流して聞いた。今の時代、無料で学べる動画がたくさん上がっており、購入したテキストと併せて聞くことで各段に理解度が上がった。
毎日コツコツと積み重ねた結果、1月のFP2級は無事合格した。(実は、FP2級の受験も今回が3回目だった)
この合格は、追い風になった。それからも私は継続して朝の勉強を続けた。
同時に SNSでは勉強時間の投稿を続け、同じく宅建士取得に向けて頑張っている人と情報交換しながら、切磋琢磨を続けた。
資格スクールでは出会えない情報がそこにはあった。
以前の勉強法と大きく違ったのは、「与えられた内容をこなす」ことから「自分から情報を取りに行く」ようになったことだった。
以前とは違い、今回は自分の弱点は自分で見つけなければならない。
模試の情報も勝手には入ってこないので、自分自身で調べて申し込んだ。ネット上では無料で受けられるような模試が存在することも、この時初めて知った。
そして迎えた、2019年10月試験当日。
この時、私は2人目の妊娠中だった。翌年2月に出産を控え、お腹もかなり目立っていた。
「お母さん頑張るで、ちゃんと応援してよ!」
お腹をさすりながら、試験会場へ向かった。
そして2021年4月、私は2度目の育児休業を追えて仕事に復帰した。
新しく作った名刺には「2級ファイナンシャル・プランニング技能士」「宅地建物取引士」の言葉が加わった。
諦めなかった自分自身を誇れる名刺だ。自然と口元がにやけた。
***
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