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生きづらさを武器に生きる


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記事:磯貝 歩(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
あなたは、HSPという言葉を聞いたことがあるだろうか?
これはHighly Sensitive Person、つまり、とても敏感な人を示す言葉で、病気や障害ではなく、「気質」を示す心理学の言葉である。1996年にアメリカの心理学者エレイン・アーロン氏が提唱し、現在5人に1人がこれに当てはまると言われている。わたしもその内の1人である。事実、感受性が豊かなせいで、これまでその生きづらさをネガティブに感じながら生きてきた。
 
NHK福祉情報サイトによると、HSPの特徴は大きく4つあると言われている。1つ目は、丁寧で深い情報処理を行うこと。2つ目は、過剰に刺激を受けやすいこと。3つ目は感情の反応が強く、共感性が高いこと。そして4つ目は、些細な刺激にも反応すること。これだけ聞いてもあまり共感できないかもれないけれど、日常にあふれる音、例えば足音や人の笑い声を耐え難い騒音だと感じたり、誰かの悲しい顔を見ると同じように悲しくなったりすることが特徴に挙げられている。
 
わたしは外に出ると、後ろから走ってくる人の足音、特にヒールの音が怖くて立ち止まってしまうことがある。自分に関係ないところで怒鳴っている人を見ると自分の心まで萎縮してしまうし、人に本音を話す時は悲しくないのに涙が止まらなくなる。暴力的な映画はずっと観ることを避けてきたし、忙しい日が続くと静かな場所に引きこもりたくなる。正直、数年前まで、それはわたしの心が弱いせいだと思っていた。人の目を気にして、気を遣い過ぎて、上手く生きていくために自分の気持ちが置いてきぼりになっていたように思う。けれどHSPという言葉を知ってから、これは生まれつきのただの特性だと、安心して受け入れ始めるようになった。
 
敏感という言葉は少しネガティブに感じるかもしれないけれど、「繊細」と言い換えればそれは長所になると思う。HSPの4つの特徴を例に考えてみる。丁寧で深い情報処理ができるということは、他の人にない着眼点で物事を見ることができるので、新しいアイデアを創り出す力があるということになる。過剰に刺激を受けやすいということは、他の人より匂いや音に敏感なため、芸術センスがあるとも言える。そして共感性が高いことに至っては、聞き上手であるというメリットになる。更に、些細な刺激にも反応する点は、観察力があるというように言い換えることができる。HSPは捉えようによっては長所になり、これから生きていくための武器にもなり得るということだ。
 
自分の新たな気質を受け入れて、更に生きやすい環境を整えるためには、安心できるものを側に置いておくことが有効だと思う。生活に刺激がありすぎると心が疲弊してしまうので、わたしはホッとできる音楽、照明、匂いを用意している。ゆったりとしたシティポップの音楽に、オレンジ色の光、そしてお気に入りのキャンドルやハンドソープの香り。月に1回、休みの日には整体に行き身体をほぐしてリラックスをする。自分のことを理解し、自分を労わることに時間とお金を使うことが、気持ちを入れ替えるスイッチになっている。
 
もう1つわたしが心掛けていることがある。友だち付き合いを無理にしないということだ。少し前までのわたしは、誘われた席には参加するように無理に予定を調整していた。それを続けていると、外出してもリフレッシュできず、むしろ疲れが溜まってしまうことが多くなった。プレッシャーが負の連鎖を導き、一時期休みの日は誰とも会わずに1人で自分の時間を過ごすことが続いた。そんな時間が続くとそれはそれで物足りなくなり、その時本当に会いたいと思える人だけに会うようになった。これが、今もわたしが続けている習慣である。その結果、無理せず休日を過ごすことができるし、本当に大切にしたい人が明確になったように思う。
 
自分に素直に生きていくために、繊細さを武器にしたいと思えるようになったのは本当に最近のことだ。接客業をしていると丁寧さよりもスピードを求められることも多く、たくさんのことを同時にこなすのが苦手で混乱してしまうこともある。けれど落ち着いて相手の気持ちを読んで接客をすることで、お客様からお褒めの言葉をいただけることもある。そのお褒めの言葉は少数派の意見かもしれないけれど、それでもわたしは些細なことに気付ける人でいたい。人に寄り添って関われることは武器になるし、自分が目指す理想像に近いなと思う。仕事でもプライベートでもこの特性を無駄にしないでいたい。
 
生きづらさは克服するのではなく、受け入れることが大事なのかもしれない。自分の繊細さを認め、感受性の豊かさに誇りを持つことで、前向きに生活ができるはずである。今はまだHSPについて人に説明し理解してもらうのは難しいけれど、気軽に開示できるような世の中になればいい。そしてわたしは、そんな自分の長所を大切な武器として生きていきたい。
 
 
 
 
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2022-03-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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