メディアグランプリ

ある日突然あちらの世界に旅立った友人たちが残した課題

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:荒川京子(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
この数年、親しい友人が次々とさよならの挨拶もせずにあちらの世界に旅立った。
 
 
一人目は、職場の後輩の女性で
50代の半ばに長年勤めた研究所を退職して
北関東のとある女子短大の教授として赴任した人だ。
真面目だけど人懐こくてよく笑い、率先して色々な仕事に取り組んでいく人だったので
当時その転職を心から祝福した。
ご主人と二人で神奈川に住んでいたが、単身赴任して毎週末に帰宅していると聞いていた。
 
赴任して数年後の新学期が始まって間もなく、
朝の講義で教壇に立ってしばらくのちに倒れ、病院に救急搬送されたという。
病院到着時にはもう手遅れだったらしい。
 
ご実家に近いキリスト教会での葬儀に参列したとき
彼女の遺族は高齢のご尊父とご主人の、男性二人だけだったが
帰りに出口で参列者一人一人に挨拶をされていた姿に
男だけが取り残され、この先どうしたらという寂寥感を感じて辛かった。
 
 
その翌年の春
私も関わっていたNPOの理事長が亡くなったと、事務局から緊急メールが届いた。
 
その理事長は50代の終わりに、
人を癒すためのセラピー犬を養成するNPOを立ち上げた。
彼は、独自に確立したセラピー犬の調教法を世に広めたいとして
毎月開催していた研修会に全国から多くの人を集め
みるみる組織を大きくして約10年の間に国内に30カ所以上、
海外にも何カ所も支部を作り頻繁に各国へ視察に行っていた。
私は設立当初から評議員として関わらせてもらった。
 
ところが2019年の1月に、ちょっと体調を崩して入院したといい
でも2月には復帰して元気な姿で復帰記念の講演会を行ったのだが
東京オリンピックの選手村にセラピー犬を送り込むのがこれからの目標なんだと
楽しそうに語っていたのが最後に見た彼の姿だった。
 
NPO主催の彼のお別れ会が開かれた時
これまであまり面識のなかった女性が新理事長として挨拶に立ち
新体制でやりたいからと、その場で評議員全員が任を解かれ
その時以来、そのNPOとも縁がなくなった。
1年余り経ったころ、その後どうなったかとネットで検索してみると
新理事長はNPOの会員と何らかのトラブルで書類送検されたとのことで解任され
あれだけ全国にあった支部も数えるほどになってしまっていた。
 
 
そしてまたその翌年の夏。
もう30年以上の付き合いになる女友達にメールした。
彼女は自然派化粧品メーカーの代理店をやっていて
いつも彼女を通して化粧品などを購入していたのだが
いつもすぐに返信があるのに数日経っても応答がなかった。
 
それで携帯に電話をしたが10回ぐらい呼び鈴が鳴っても出ない。
忙しいのかと思って一旦切ったら、すぐ折り返して電話が鳴り
出ると男性の声で「まりえ」の夫です、と言う。
家内は先週心筋梗塞で倒れ、救急搬送されたのだけどその日の夜に亡くなり
コロナ禍なので身内だけで葬儀も済ませました、と言われた。
 
彼女は、実母が脳梗塞で倒れ言葉も発せられない寝たきり状態になって以降
亡くなるまでの約10年近くを自宅で介護しながら仕事もし、
障害を持つ子の母親をサポートする活動を立ち上げたりする
スーパーウーマンだった。
私自身も人生のどん底時代に色々と元気付けてもらい
仕事のサポートもしてもらった恩人だった。
 
彼女は家事も全て一人でこなしていて、
突然の逝去にご主人も長男も何がどこにあるかもわからず途方に暮れているという。
 
 
 
こうして昨日まで元気に第一線で活躍していた友人たちが
別れを言う機会も持てずにあちらの世界に旅立つということが続くと
訃報を知らされた当初の驚きと悲しみが一段落した後に
聞いておきたかったことや、残った私にできることはなかったか
などという思いが次々と湧いてきた。
 
また、残された人たちの悲しみと途方に暮れた様子を見ると
私自身、20年前に癌で死にかけて生還した後は
もういつこの世にお別れをしても悔いはないと思っていたけれど
でも後に残る人のためにもう少し身辺整理をしておくことも大事かなとも
思うようになった。
 
その中で、私自身の色々な体験や
それから得られた様々な人脈などの無形の財産などについて
自分の子供や孫にも何も伝えてこなかったことに気づいた。
 
あるテレビ番組に、番組のゲストである芸能人や著名人の祖先がどこで何をしていたか
探るというものがある。
ゲストはいずれも、その番組でのリサーチで初めて、数代前の先祖や、
自分の両親の生き様について知ったという事が印象に残っている。
そして先祖の生き様を知ったゲストたちの満たされた顔を思い浮かべると
私も将来の子孫たちに自分の人生の記録を残しておこうかなと思うようになった。
 
仕事柄、論文や研究報告書などの文書作成は日常業務だったが
自分のことを継続的に書くということはこれまで機会がなかった。
そんなわけで、描き始めるきっかけもなく月日が過ぎていった。
 
そんな時だった。
最後まで読んでもらえる文章を書けるようになるという
ライティング・ゼミを知ったのは。
 
ゼミに参加して以降、
以前から記憶の隅に押し込めていた様々な出来事を思い返しては文章にしている。
書くのは大変だし、ゼミでは色々ダメ出しもされ続けているけれど
何もなかったところから、今少しずつ文章が溜まってきていて、それが少し嬉しい。
 
いつか自分の子や孫、あるいは友人などが
これらの文を読んで何を思うか想像もつかないが、
多少なりとも記録を残してくれて良かったと思ってもらえたら、
それで充分報われるかなと思っている。
 
 
 
 
***
 
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2022-03-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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