メディアグランプリ

マシュマロとライティング

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:高橋久美(ライティング・ゼミNEO)
 
 
どうしよう全然書けない。締め切りがあと2時間後に迫っている。
他人の原稿を見て焦る。みなさん、さすが書き慣れている。
正直、何をかいていいのかわからなくなり、夏休みの宿題バリに放置してしまった。もう8月31日の夜といったところ。まずい。今回は書くことについて自分なりに考えてみようと思ったのに。娘のポケモン図鑑に付き合って添い寝していたら、寝落ちしてしまった。
本気出さないと終わらない!というか終わるかわからない!と思った瞬間。
 
ガチャッ。ガチャガチャッ。パタン。キィ。
 
「あ、お帰り」
玄関のドアが開いて、今年小学6年の息子が塾から帰ってきた。
「パンが食べたい~。パンかマシュマロが食べたい~」あのね。夜の10時だけどね?
「マシュマロ、、、(こんな時間にマシュマロはダメ。という言葉を飲み込みながら)パン焼こうか? イングリッシュマフィンあるよ」
「イングリッシュマフィン! あとこれからトイレ入るから。ちょっとカギ閉めるから」
 
宣言しなくてもどうぞ。
息子がシャワーを浴びに行ったので、少し進めるかと思った瞬間。
 
ガチャッ。ガチャガチャッ。パタン。キィ。
「あ、お帰り」
今度は夫が会社から帰ってきた。
「ごはん食べる?」
うなずく夫。豚肉の炒め物と、みそ汁と、焼き芋のスライスを電子レンジにかける。炊飯ジャーからご飯をよそう。お茶漬け用のお湯を沸かす。
 
ダイニングの大テーブルに座る夫。
いつものアルコール度数7度のレモンサワーを席に置くと、少し飲んで溜息。五十肩が凝り固まっているので、ちょっと肩をマッサージしてあげる。
「手が(ストレスで)ギューッてなっているよ。大丈夫?」
「うん……。あれ、ケイゴはお風呂なの?」
「トイレって言っていたけど、友達とのメールだと思うよ。本当に踏ん張っているかもしれないけど。いつも帰ってからすぐ携帯持ってトイレにこもっているよ。その後、シャワーを浴びて出てくると思うよ」
「ふうん」
 
いつものように夫が食べるそばから食器を片付けていくけれど、頭の中はフル回転。
おととい、深夜につい60話一気読みしてしまった携帯マンガの「15歳、プロ彼女」が、5股がばれて言い訳を考えている時みたい。
 
こうなったら頭の中で考えをまとめて、一気にキーボードに吐き出す作戦で行こう。タイピング頑張れば何とかなるかな。推敲も絶対しないとおかしくなるからその時間も必要。2カ月前に派遣登録した時、タイピングテストでは「サンダー(稲妻)」だったし。何とかしよう! 締め切り厳守! 頑張れ、私!
 
などと考えながら食器を洗っていると息子がシャワーから出てきた。
「パン焼けたよ。はちみつ塗る?」
「はーちーみーつー! そうだ。塾のある日も学校の宿題出るんだった。今日、漢字の腹と、段。あと計算ドリルの3。うわぁ、、今日のドリル何だと思う?」
「え? 何なの?」
「ジャーン。分数の足し引き20問―!」
「いいじゃん、分数」
「ダメだよ! 1個1個、帯分数を仮分数に直して、通分して、足し算とかして、その後また帯分数に直すんだよー!」
「それ、1個1個、線を定規で引かないといけない、というやつね? 出たねー、学校独自ルール。頑張れ~」
「あと新聞記事ひとつ」
「新聞記事……?」
「どうしようかなー。今どれをやろうかなー。ねえ、どれがいいと思う?」
はちみつの乗ったパンを食べながら呟く息子。
 
「うーん。塾帰りで頭が冴えている今と、ボーっとなっている朝と、どう配分するかだね」
もう夜の10時半だ。どれでもいいから早く始めて寝よう! そしてお母さんはパソコンに向かいたい!
夫が赤ペンと青ペンで図面の修正を始めたので、少しだけ肩をもんだあと、
「ちょっと、課題やります」
とつぶやいてノートパソコンを開く。(ライティング講座を受けている、とだけ伝えてある)
 
ベタッ。机に置いた手に何かを感じる。
あっ? はちみつ! パソコンは?! 無事か?!
慌ててパソコンを裏返す。無事を確認して手を拭く。そんな中、夫が炊飯ジャーを開け、放置されたままのごはんを発見。渋い顔。
「あ、後で、ラップでクルクルして冷凍庫に入れるよ……。あとでやります」
 
ケイゴめ。はちみつ、こぼしたなぁ。
いや、人のせいにしてはいけない。すぐテーブルを拭かなかった自分が悪い。
そして、わかっている。課題もここまで放置した自分が悪いのだ。次回こそはちゃんとしたテーマで書きたい。
 
けれど、先延ばしした本当の理由は、書くのがこわくなったから。他の人が書いたものを読んで思った。書くってやっぱりこわい。その人の精神性が出てしまう感じ。自分を晒してしまう感じ。そんなことがこわくなって、結局、本当には書けなかった。
次の課題には向き合わなきゃ。そんなことを考えていた瞬間。
 
「ねー、おかあさーん。マシュマロも食べたいー」
あのね。だから、もう夜の11時だけどね?
 
 
 
 
***
 
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2022-04-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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