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美味しさの秘密、この違いってなんだろう


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:大塚 久(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「妻が淹れるコーヒーは美味しい」
「僕の淹れたコーヒーは苦い」
 
この違いはなんだろうか?
 
僕はコーヒーを飲むのが好きだ。それこそ幼稚園に行く前に母親の仕事の朝の会議に同席して出されるコーヒーを飲んでいたくらいだ。でもその時に飲んでいたのはインスタントのコーヒーだし、今でもコンビニのコーヒーでもお店のコーヒーでも正直そこまでの味の違いはわからない。
でも、これだけはわかる。
妻の淹れたコーヒーは間違いなく美味しい。
この理由がわかったのは本当に偶然だった。
 
それはあるコーヒー豆の焙煎士との出会いだった。たまたま立ち寄った書店のコーヒー関連の本棚にあった本が妙に気になった。それがその焙煎士さんが書いた本だった。
それまで自分で美味しいコーヒーを淹れてみようと本を買ったり、動画を見たりしていたが、その本はそれまでとは全く違う本だった。コーヒーの教本というと豆の種類や焙煎の仕方から始まって、用具の説明、豆の挽き方、豆の量、お湯は最初に何cc注いで、何秒蒸らして、次に何cc注いでみたいな調子でとにかく一様に「こう淹れなさい」って方法が書かれている。
 
でもその焙煎士さんの本ではお湯をどのくらい淹れてといったことはそこまで書かれておらず、
 
「コーヒーを淹れるのって調理なんだよ。要はどうやったら美味しくなるかを考える。そういう視点で見るといろんな情報が読み取れるんだよ」
 
と書かれていた。
正直何を言っているのか理解が出来なかった。
でも、きっと妻が淹れるコーヒが美味しい理由ってこれで、妻の淹れるコーヒは調理で、僕が淹れるコーヒはレシピをなぞってるだけの実験みたいなものなのだろう。
 
感覚的に「この人が淹れるコーヒを飲んでみたい」と思った。こういう時、偶然って重なるもので、たまたまSNSを見ていたらその焙煎士さんのコーヒー教室の告知が飛び込んできた。しかもたまたま仕事に入っていない日曜日。妻からも「行ってみたらいいじゃん」の言葉をいただき、参加してみることにした。
 
教室に参加してみて本で読んでいただけの知識が体験に変わった。教室では全部で4回、自分でコーヒーを淹れてみる。最初の2回は自分で思う通りに、最後の2回は実際に焙煎士さんのアドバイスを受けて淹れる。焙煎士さんのお手本は最初のと3回目の前の2回だ。
そして始まると早速本に書いてあったあのセリフ
 
「コーヒー淹れるって調理なんだよ。どうやったら美味しくなるかを考える、そういう視点で見るといろんな情報をコーヒーが教えてくれるわけ」
 
実際豆の量やお湯の量、タイミングなどは全く教えてくれない。教えてくれないというかコーヒーが教えてくれている。確かに調理する時もレシピでは肉何g、野菜何gとか書かれているかそうそうピッタリにならないし、食材の切り方も全く同じになるわけがない、火の通り具合や調味料の量などそれこそ食材から教えてもらうしかないのだ。
 
そうやってコーヒーからいろんな情報を得て淹れてくれた焙煎士さんのコーヒーは味の違いがよくわからない僕が飲んでも確かに美味しいのがわかった。苦味だけでなく、甘みもあり、余計な酸味は一切無く、飲んだ後の喉に残るえぐみも全くない。これが美味しいコーヒーなのかと初めて分かった瞬間だった。
 
もちろんその後自分が淹れたコーヒーも飲んだが同じ豆、同じ機材を使ってここまで差が出るのか? と思うぐらい薄くて、酸味が強く、後味が残るイマイチのコーヒーだった。きっと今までだったら「この豆は酸味が強いやつなんだな」と思っていたに違いない。これが調理とレシピをなぞっただけの実験の差なのだ。
 
そして調理が最高でも材料である豆がイマイチだったらどんなにうまく淹れても美味しくないらしい。以前、焙煎士さんが世界で10本の指に入る焙煎士の焙煎したコーヒーを淹れた時、まともに淹れられたのは3つぐらいだたらしい。調理もどんなに腕が良くても食材が腐っていたらうまくいかない。
 
きっと豆を作る時から
「どうやったら美味しくなるかを考える」
なんだろう。
 
野菜だって美味しくなるために土や肥料、栽培方法を考えて、より美味しい品種まで作り出している。その野菜を「どうやったら美味しくなるか」を考えている料理人が調理をしたら美味しくなる。
 
美味しくなるように考えて育てた豆を使って
美味しくなるように考えて焙煎して
美味しくなるように考えてコーヒーを淹れる
 
考えてみれば当たり前なのだが、美味しくなる秘密ってシンプルに「どうやったら美味しくなるかを考える」かどうかの違いなんだと思う。
 
そもそもだが、妻はコーヒーより紅茶派だ、たまたま僕がコーヒーを飲むからコーヒーを飲んでいるだけで、コーヒーが好きではない。好きじゃないからこそどうせ飲むなら「少しでも美味しく飲みたい」そう考えて淹れる。
僕はコーヒーを「美味しく」ではなく、「うまく」淹れようとしていた。教わった通りにできたらおいしいと思い込んでいたのだ。
そりゃ妻が淹れてくれたコーヒーの方がおいしいはずだ。
 
僕の1番好きなコーヒーは妻の淹れてくれたコーヒーなのかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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