メディアグランプリ

私が野球に魅了された日


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:飛鳥(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
その日は5月らしく良く晴れた初夏の陽気だった。初めて現地観戦する野球の試合前、観客席のスタンドに上がってグラウンドを見下ろした私は、その見晴らしの良さに感動の声をあげた。鮮やかなブルーの空にグリーンのグラウンドのコントラストが美しい。
 
ずっとプロ野球のとあるチームを応援していた父と弟が、母と私の分のチケットを取ってくれたのが、その初観戦のきっかけだった。最近人気の上がってきているその球団の観戦チケットは、争奪戦が年々激しくなっているらしい。
 
それまでの私の野球観戦履歴といえば、サッカーやバレーをテレビ観戦するのと同様に、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)などの国際試合をテレビで見る程度。だが、人気のチケットとなれば行ってみるしかない。なんとなくのルールと日本代表選手くらいは分かるくらいの浅い知識で、私は初の現地観戦に向かった。
 
心弾ませて試合を見ていた初回、ポーンと良い角度で上がった打球は、軽々と外野席のスタンドへ吸い込まれていった。隣に座っている弟は既に立ち上がって手を叩いている。落下点に座っていた観客のもとにボールが届くと、周りの客も一斉に手を突き上げ、熱く高揚感に満ちた空気が舞った。
 
見事なホームランだった。初めて生で見たホームラン。バットにボールが当たっただけで、こんなに遠くまでボールは飛んで行くものなのかと思った。
ダイアモンドを走者がぐるぐると回っていく。既に走者が塁に出ていたため、初回にして一気に3得点。得点が入ると応援団のラッパに合わせて球団歌を歌い、万歳するらしい。周りにあわせて手拍子をしながら、これほどの爽快感があるだろうかと思った。その後もヒットが続き、この回で更に2点を追加した。
 
応援しているチームの投手は調子が良かったらしく、相手チームのバッターを次々と打ち取っていく。一方の相手チーム投手も次の回からは調子を取り戻したようで、簡単に追加点をもらうことが出来なかった。
 
そんな中でも、初観戦の私には新たな発見もあった。
本拠地での試合では、各選手が打席に入る際に選手ごとに登場曲が流れるらしい。それぞれの選手が集中したり気合いを入れたりするために選曲しているそうで、誰もが知っているヒット曲や、その選手の好きなアイドルの曲など、個性豊かな選曲がされている。私が仕事のモチベーションを上げるために音楽を聞くのと同じように、選手も音楽を流すのだなと思ったら親近感を覚えた。
 
膠着状態のまま後半に差し掛かった試合を表すかのように、次第に日は陰り、雨の降りそうな雲行きになってきた。ポツポツと雨粒が落ち始めると、観客たちは慌ててタオルやレインコートを取り出す。私も持参したレインコートを被り、続行される試合を見つめた。選手は多少の雨程度であれば試合をしなくてはならないから大変だ。
 
こちらのチームのピッチャーが交代となり、次に出てきたピッチャーは雨で投げにくいということもあるのか、調子が悪そうだった。なかなかストライクゾーンに球が入らず、あっさりと走者を出した。ハラハラしながら見ていると、ボールが再び高く上がった。初回で見たのと同じような軌道。今度は相手チームのホームランだ。
 
2点を返されたが、まだこちらが勝っている。気を取り直して試合を見守る。
その後も相手チームの打者が何人か出塁したが、後続のピッチャーがなんとか抑えてピンチを免れた。
 
その後も祈るように試合を見続け、9回が終わり勝利が決まると安堵と喜びが沸き上がる。雨はいつの間にか上がり、夕日の差し込む球場に虹がかかっていた。
 
自分が試合に出場したわけでもないのに、まるで試合を戦っていたかのような達成感だった。
 
その初観戦以降、私はそのプロ野球チームを応援するようになった。もちろんこの時代ではテレビ中継がある日の方が少ないし、毎回の試合の時間帯にテレビの前に座っていられるわけでもない。一球ごとの結果を速報してくれるアプリがあり、仕事帰りにその実況を見ながら一喜一憂する日々が始まった。
 
テレビ中継のある休日に家にいられる場合は、テレビの前で選手の活躍を目に焼き付ける。テレビで観戦していると打順が一人ずつ回ってくるたびに顔がアップになるため、すぐに選手の名前と顔を覚えることができた。
テレビ中継は基本的にグラウンド全体が映るわけではなく、投手の背中側からバッターが正面に映るような画角になっていることが多いため、最初はホームランと外野フライとファールの違いすらよくわからなかったが、それも見続けているうちに次第に慣れてきた。
 
私の応援しているチームは決して強いというわけではない。どちらかと言えば弱く、勝つ試合より負ける試合のほうが多い。現地で見た試合のようにすんなりと勝てる試合となると稀と言ってもよかった。
 
どんなに勝てなくても試合は毎日あり、選手たちは戦い続けなくてはならない。失敗をして落ち込む日があっても続いていく人生のようだ。負け続けていてもいつかは勝てる日もくるし、ホームランを何本打っても負ける日もある。私は選手たちを自分に重ね合わせ、それと同時に、戦う選手たちに勇気を貰いながら応援を続けた。
 
こうしてプロ野球の魅力に気づいてからもう数年になる。その間、私の応援するチームはまだ優勝を果たせていない。
皆が優勝を目指しながらもなかなかそれを果たせないのが人生の現実だと分かってはいるが、応援しているチームには夢を見ていたい。日々努力している選手たちにはいつか優勝を掴みとってほしいと思う。
 
また春がやってきた。プロ野球が開幕し、期待に胸を膨らませる日々が始まる。
今年も選手たちは、どのような活躍を見せてくれるのだろうか。
 
 
 
 
***
 
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2022-04-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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